2026年8月13日
社会資本研究所
南 洋史郎
物質文明から精神文明への変化の中で米国は新しい覇権を握れないと自覚している
軍事力や経済力、貿易・金融・外交・文化への影響力を総合的に判断し、その時代の国際秩序を主導した国を人類史における覇権国と定義すると紀元前1世紀から5世紀のローマ帝国に始まり、
7世紀から10世紀のユーラシアやアフリカ地域のイスラム世界、13世紀のモンゴル帝国の時代を経て、15世紀以降は海洋覇権が主流となり、16世紀のポルトガルやスペイン帝国、17世紀のオランダ共和国、
18世紀前半のフランス王国、18世紀後半から20世紀初めまでの大英帝国が覇権を握ってきた。 そして、20世紀前半から現在に至る1世紀あまりにおいてアメリカ合衆国が覇権国であり続けている。
その流れの中で米国から次の覇権国として、中国やインドの名前が挙がっているがその可能性は低い。 中国は巨額の不動産の不良債権を生んだ共産党独裁による国家資本主義体制に問題があり、
インドはヒンドゥー教のカースト制度の社会階層の分断がネックになっているからである。 米国の覇権力は強固であり、2050年以降も米国が精神文明という新しい覇権スタイルを取り込み物心両面で世界をリードするとみている。
この新しい覇権モデルは、GDPや技術開発、新産業、金融など物質文明的な指標だけで国力が決まるのではなく、国民皆保険や最低生活保障、高等教育支援、犯罪が少なく紛争がない安全な生活、
限られた労働時間で高所得を確保、趣味や家族との時間を大事にできるゆとりといった精神文明的な指標も加えた国家と国民の両方から評価される覇権を意味する。
21世紀の半ば以降、AIロボットが世界中の人間生活のあらゆるところで活躍、全ての国で進化の度合いに違いはあるが、それほど働かなくても最低生活が保障され、
優れた製品サービスに囲まれて、豊かな人生が送れる高度な物質文明(Material Civilization)の時代がやってくる。
あらゆる生活サービスの過酷な労働がロボットで代替(だいたい)される中、人間として生まれた時点で労働時間が短く、
生涯安全で安心な余裕のある生活が保障され、余暇を楽しく過ごすことが人生の大事な目的となり、スポーツや音楽、
絵画などの文化活動が人生の中心となる精神的なゆとりのある精神文明(Spiritual Civilization)という新たな人類文明の歴史が始まる。
過去の人類の歴史は貧困や差別との戦いや権力争いの連続であり、物質的な豊かさを求め、一般大衆が支配層や権力者、富裕層の裕福な生活にあこがれ、豊かさの覇権を目指し様々な国や民族の争いが繰り広げられてきた。
米国のように、軍事力や金融力、経済力で世界に大きな影響力を持つ国が覇権国となり、世界中の国が米国の決めるルールを守り従うのである。 ところが欧州、日本、カナダなど先進国や中国、
インドなどアジア、中南米の国々が経済力をつけ、豊かになるにつれ、米国の影響力が弱まってきている。 21世紀半ばでも、米国は軍事や経済、金融、情報の強さで覇権を維持するであろうが、貧富の差の拡大、
健康保険もない悲惨な貧困生活、銃社会の危険な住環境、物価高など生活の豊かさのレベルは低下し続け、米国人自身が精神文明の時代に覇権国にはなれないと自覚している。
精神文明時代は世界が学びたい国が覇権を握り日本はその方向に着実に進んでいる
21世紀半ばから22世紀にかけて、新たに到来する精神文明の時代は覇権をもつ国は、他国を軍事力や経済力によって従わせる発想はなく、
世界の人々が「この国のような社会、この国のような生き方をしたい」と自発的に願い、その国の制度や文化、価値観などを模倣したいと憧(あこが)れ、
覇権国に住む国民の多くも自分たちの気高き精神に誇りをもち、困っている人がいれば、損得抜きで助けにいける度量や才能、精神をもつのである。
AIとロボットによって物質的な生産能力が飛躍的に高まり、豊かで優れた社会支援や経済の仕組みを構築できた国では、多くの人々の人生の関心事が「いかに豊かになるか」から「豊かになった時間を何のために使うのか」へ移行する。
そこで、安全、健康、教育、余暇、文化、人間関係、自己実現などを重視する社会モデルが評価指標となり、民主政治の関心事もその方向へ移る。
極論すれば、物質的な欲望の競争や生活不安から解放されて、人々が「何のために生きるのか」という人生の目的を重視できる心穏やかな文明、これが2050年以降におとずれる精神文明なのである。
貧しい物質文明社会の中で野蛮で好戦的な国から侵略を防ぐ防衛力は日本に必要だが、多くの日本人は世界を力で支配する軍事力や経済力の覇権を持ちたいと思わず、ひたすら豊かな生活が営める社会経済システムの発展だけに関心をもってきた。
その方向性は正しく、意識せずに精神文明時代の覇権の道を歩んできたのである。
日本が今まで培(つちか)ってきた高度な産業技術や生活支援の力を進化させ、無人省人ロボットと違和感のない共存共栄の日常を実現でき、
最高水準の豊かな生活を過ごし、世界から憧れられ、模倣される国になるなら、日本は「世界を支配する国」でなく「世界が学ぶ国」として精神文明的な覇権力を持つのである。
精神文明時代の覇者は、様々な国の強い要望により相互繁栄に必要な国際組織の組成を求められ、権威主義のロシアや中国が常任理事国の国際連合は消滅、新たに国際平和を追求する有益な国際組織が生まれるとみている。
当然、米国や欧州も精神文明時代の新たな覇権を目指すので、
複数の国が競い合い、互いの社会経済システムの良いところを連携・共有し、特に米国は21世紀半ば以降もドル基軸の物質文明と精神文明とが融合した新しい形の覇権国であり続けようとするであろう。
精神文明へ移行するためには、高度に発達した産業技術により経済を成長させるパワーをもった豊かな物質文明生活は必要となる。
日本は、未来に花開く産業技術の投資力や開発力に課題が多く、労働時間も長く、まだまだ個々の人々の生活水準は豊かと言えず、精神文明へシフトできるとは言い難い。
ところが不思議なことに必ずしも豊かと言えない一般庶民でも精神文明時代に注目される精神世界や生活スタイルを先取りしている人が多く、実際、世界の人々から日本人のおもてなしや他人を思いやる精神性の高さ、
快適な生活を維持しようと自ら掃除しゴミが落ちていない街並み、その集合体の美しい都市や田舎の景観がネット上で世界に配信され、そうした日本独特の世界を実体験するため海外から大勢の観光客が押し寄せている。
2025年の訪日外国人は約4300万人でその8割は韓国や中国、台湾などアジア勢だが、欧米からの訪日客も2割弱を占め、特に物質文明の勝ち組である富裕層が日本文化の精神性を求め来日するケースが多い。
日本人は余裕が無くてもボランティアに熱心で人助けが好きな人が多く、長年の緊縮財政の弊害で何も挑戦しない無気力な人も増えたが、
積極財政の高市政権となり、ビジネスチャンスが増え、純粋に豊かになることを目指し努力する人が増えるので、高度な物質文明の構築に向けて頑張れると期待している。
トランプは貧富の差の拡大と精神文明の覇者となるため日本と組む方法を画策する
米国では独特の精神的な世界観をもつ日本人や日本文化が注目されている。 MLBプロ野球の大谷選手の二刀流の活躍は米国の野球人気に再び火をつけ、野球少年たちのあこがれの的(まと)となり、
大谷選手が人生の目標設定につかってきた9マス9つの組み合わせのマンダラチャートの解説本が売れ、球場でごみを拾う姿まで学校の教材となり賞賛されるのである。
マリオやジブリ、ポケモン、ゴジラなど日本のコンテンツや食文化はすでに米国人の日常生活に深く浸透している。 米国では、日本との親密な経済や文化交流の中で、精神文明を先取りする日本そのものを米国社会へ取り込む動きも一部にでている。
これを日本化プロセス(Japanization)と呼ぶが、一昔前は米国より先駆けて少子高齢化で経済衰退する意味に使われたが、
今は逆に米国より一歩進んだ異世界の都市文明や国民皆保険の充実した医療制度など豊かな生活を日本が先に実現しているという良い意味に使われるようになった。
日本が英国に続いて女性首相を誕生させたことで、米国では主要な民主主義国の中で女性大統領が誕生していないことを認識し初の女性大統領を嘱望する人たちもいる。
日本企業や技術を米国内へ取り込むだけでなく、文化、生活スタイルまで日本をまねることを日本風(Japanized)と呼び、流行り始めている。
こうした日本ブームの背景に深刻な米国内の貧富の生活格差が影響していると分析している。 米国のジニ係数は0.5で、日本の0.3と比べ貧富の生活格差は絶望的である。
1億3500万総世帯数のうち国民総資産の所有率は、上位0.1%の13.5万世帯で13%、1%の135万世帯で30%、上位1割の1350万世帯まで拡大すると60%を保有、中間4割が35%、
下位5割の約7千万世帯はわずか5%弱しか所有していない。 つまり、米国の半数の世帯が日々の生活に追われ、資産を蓄える余裕がなく、上位1割の世帯が国富の6割を所有、中産階級の没落で貧富の差が広がり続けている。
クレジットカードの債務を抱える世帯が全世帯の半数の6200万世帯あり、そのうち高利子で借り続ける世帯が4300万世帯、そのカード債務の13%が90日以上の延滞を記録、家計セクターの債務総額は19兆ドル(3千兆円)で、
住宅ローン13兆ドル(2千兆円)、自動車ローンと学生ローンが1.7兆ドル(270兆円)ずつとなっている。 学生ローンの債務不履行の人口も一千万人近くに及んでいる。
要は米国人の二人に一人は金がなく、厳しい生活を過ごしており、もはや先進国の生活と言えない状況にまで追い込まれているのである。
トランプ政権になった2025年頃からAIへの産業シフトによるホワイトカラーの就職難が顕著となり、こうした厳しい生活背景から国民皆保険や大企業の国有化などを主張する極左の民主社会主義の勢力が台頭、
若者や中低所得層の強い支持を受けており、民主党内でも強い力を持ち始めたのである。 マムダニはニューヨーク市長に選出され、
民主党内で民主社会主義の政策を主張する若いヒスパニック系の女性大統領候補といわれるオカシオ・コルテス下院議員は中間選挙で再選されるとみられ、その他の民主社会主義系の有力候補も数十人レベルで当選すると予想されている。
米国内でも未来の精神文明の流れを先読みする国民生活の向上が、政治闘争の勝敗を決める大事な肝(きも)になり始めている。 この流れを食い止めるために共和党のトランプは米国の産業再興と安全保障に沿う形で、日本の資本や技術を米国内へ引き込む政策を推進し始めた。
具体的には日本による総額5,500億ドル規模の米国への投資コミットメントを軸に、原油・天然ガス、小型モジュール炉(SMR)、重要鉱物、造船などの分野で日米協力が進められている。
2026年11月3日に米国の中間選挙が行われ、下院435議席の全議席と、上院100議席のうち35議席が改選される予定である。 2028年の大統領選の趨勢(すうせい)を占うものとして注目されている。
中間選挙前のガソリン価格の影響が大きく、前回2022年の6月から10月では、原油価格が123ドルから90ドル、ガソリン価格もガロン(3.8リットル)あたり5ドルから3.7ドルへ下がり、
民主党は当初の大敗予想を覆(くつがえ)して下院で213議席、上院で51議席を確保、下院で9議席の僅差の負けでもちこたえた。
問題は今回の中間選挙前の2026年3月から7月のガソリン価格の推移では、イラン情勢という特殊要因もあったが、原油価格は100ドル強から77ドルへ大きく下がったにもかかわらず、
ガソリン価格は1月、2月の3ドル前後から3月以降4ドル超えで上昇しその後も下がっていない。 おそらく8月から10月にかけて3ドル、場合によって2ドル台まで下がり、下院上院ともに僅差で共和党が勝利すると予想している。
共和党を応援してきた大手石油メジャーが規制緩和で業界に多大な恩恵をもたらしたトランプへの恩返しに思い切った値下げを断行、その背後に日本の存在もあると憶測している。
大手石油メジャーは日本企業の共同出資・長期契約を歓迎する傾向が強く、特にシェブロンは過去75年以上も日本との関係を重視してきた。
日本の保守層には原爆投下や日系人差別の黒歴史を持つ米国の民主党を警戒し、共和党を応援する人が多く、米国の石油メジャーも保守化を強める日本と仲の良い共和党を密かに応援し続けるとみている。
米国では6割白人、2割ヒスパニック、1割強黒人、1割弱アジアやその他という人種構成の中でヒスパニック系マイノリティの有権者の動向が注目されており、
女性でヒスパニック系の若いオカシオ・コルテス下院議員が2028年の大統領選に出馬すれば、共和党候補がヴァンス副大統領でも僅差で共和党が負けるという偏(かたよ)った予想も出ている。
策略家のトランプなら2年後の大統領選を見据え日本で絶大な人気を誇る高市首相と共和党政権やヴァンス副大統領との関係強化をはかる動きもでてくるとみている。
例えば、中間選挙前の10月に米国で注目されている高市首相を国賓として招待、その前に中国の習近平主席と会談するなど手の込んだ外交を仕掛ける可能性も考えられる。
その際、日本側から民主社会主義の主張の対抗策として、米国の貧困層や若者が注目する日本の国民皆保険の医療制度や生活保護制度の長所や問題点を解説、
米国風にどうアレンジしたら米国民が受け入れ、喜ぶ政策になるかというAIや外部機関が作成した参考情報としての提言書も共和党の関係者に喜ばれるかもしれない。
要は米国の日本風の生活支援政策が大統領選挙で大きな争点になる可能性があり、これからの精神文明的な政治を志向する中で米国も日本化プロセスの導入が必要不可欠と感じるのではないかと推察している。
2050年も米国は覇権国を維持し社会支援システムを考案し新たな覇権を目指す
2026年7月4日に米国は建国250年を迎え、1776年に米国が独立し世界中から移民を受け入れ、現在の人口は3.4億人、うち外国生まれの移民は5千万人である。
日本の人口1.2億人の3倍弱で国土は26倍、人口密度は日本の10分の1で農作物もエネルギーも完全自給できる豊かな国である。 米国のGDPは30兆ドル(4800兆円)で世界全体115兆ドル(1.8京円)の4分の1を占め圧倒的な1位である。
日本のGDPは4.5兆ドル(670兆円)なので、一人当たりGDPは日本の3.7万ドルに対し米国は8.8万ドルで2.4倍大きい。 円安が影響し、購買力平価だと日本の平均物価は米国の6割程度で庶民感覚の為替レートは1ドル100円程度であろう。
1ドル160円の円安が続くが、積極財政の高市政権のお陰で日本のGDPが仮に年率3.5%で伸びると2030年にGDP750兆円を達成でき、
日本経済の強さが好感されるが、日本から米国へ再投資するドル需要が大きいので1ドル150円程度の円安は続くとみている。
1ドル160円換算で2024年の日本から米国への輸出は1400億ドル(22兆円)、米国からの輸入は800億ドル(13兆円)で9兆円の黒字だが、
1ドル108円の2000年の米国への輸出は1465億ドル(16兆円)、輸入が650億ドル(7兆円)で同じ9兆円の黒字となっている。
2025年の日本全体の経常黒字32兆円のうち、貿易黒字や投資リターンを含めた対米取引による黒字がその6割、20兆円を占めている。
米国で日本企業は百万人の直接雇用、2百万人以上の間接雇用を生み出し、外国企業で英国と並ぶトップクラスの雇用国である。 その多くは製造業関連で、米国の製造業1300万人の就業人口の1割を占めるといわれる。
米国の総就業者数1.6億人のうち、医療・福祉、専門サービス、政府部門の3大就業エリアに2千万人強ずつの7千万人、小売・宿泊・飲食分野に3千万人の計1億人が就業している。
米国の2025年度の外国への総輸出は2.1兆ドル(340兆円)、外国からの総輸入は3.3兆ドル(530兆円)で1.2兆ドル(190兆円)の赤字だが、サービスなど黒字収支3千億ドル(50兆円)を加えても9千億ドル(140兆円)の経常赤字であった。
その補填のための金融資金が金融市場から流入し続けるので資本流入によって、経常赤字を金融面から支える構造が続いている。
企業でいえば、本業の事業収支は赤字、営業外収支は若干黒字、経常収支で赤字だが、莫大(ばくだい)な株、債券、不動産などの資産運用による金融資金が流入、他人資本の財務収支は黒字で常に帳尻が合い資金繰りが心配のない状況と言える。
米国の事業や金融への投資には人気があり、今後も資金が流入し続けドル高を支える構造となっている。
それだけ日本や欧州など世界の国々の米ドルに対する信認は厚く、ドルへの資金需要が大きいため、ドル高が今後も続く根拠となっている。 要はウォールストリートの金融が米国経済の競争力を支える大きな柱になっている。
米国金融市場は株式市場75兆ドル(1.2京円)、債券市場60兆ドル(1京円)、銀行資産30兆ドル(5千兆円)、投資信託23兆ドル(3700兆円)と世界最大でどれも世界の半分以上を占有、金融システムの取引額は100兆ドル(1.6京円)を記録している。
米国の株式市場の時価総額は、中国市場を除く世界全体145兆ドル(2.3京円)の半分を占め、欧州は10%の15兆ドル、日本は5%の8兆ドルなので米国の金融市場の規模の大きさに圧倒される。
ちなみに日本の債券市場は主に国債の10兆ドル(1600兆円)、銀行資産10兆ドル、投資信託2兆ドル(320兆円)で株式市場と投資信託とは10倍の開きがある。
金融分析で統計が信用できず、政府管理の中国市場の数字は除外したが、巨額の不良債権処理が始まるとドル決済の貿易取引への影響はあるが、中国国内だけで金融処理を完結できれば、世界の金融市場への影響は軽微と考えている。
例えば、中国の銀行資産60兆ドル(1京円)は米国の2倍あり、それは不動産の不良債権が未処理と推計されるからで、将来、焦げ付いた負債の処理が始まっても中国の国内問題にとどまる可能性が大きい。
むしろ、中国経済の信用力が大きく落ち込み、元とドルの為替取引が成立せず、人民元が急落する可能性があり、
それを懸念して中国の中央銀行は大量の金を保有しているが、その時は中国保有の金の取引価格も下がるので、その時点で共産党が支配する中国経済は機能不全となるのであろう。
貿易取引のドル決済比率は、中南米がほぼ100%、アジア・オセアニアが75%、欧州のみ25%弱でEU域内のユーロ決済が7割弱を占める。
要は経常収支で得られた日本の黒字は、米国の金融市場へ還流され、米国の赤字は、米国の金融市場から資金が供給されて常に相殺され、
世界の資金が金融覇権を牛耳る米国のドル基軸の金融市場で循環しているだけの話となる。 つまり、ドル基軸の世界に参加している国が米国との黒字、赤字を云々すること自体ナンセンスであり、
国際収支は世界全体でみれば事後的に一致するため、ドル基軸の国際金融システムでは、米国の経常赤字が海外へのドル供給となり、そのドルが米国の金融市場へ還流する構造が形成されている。
例えば、日本の米国に対する経常収支の黒字20兆円は投資で再び米国の金融市場へ還流され、それがドル資金の新たな需要を生み、ドル高円安を生んでいる。
米国はドル基軸の金融市場という強みを持ち、貿易赤字は累計で23兆ドル(4千兆円弱)となるが、米国の対外純債務は 経常赤字17兆ドル(3千兆円弱)であり、
政府債務の財政赤字38兆ドル(6千兆円)を加えても55兆ドル(9千兆円弱)の債務累計となっている。
米国全体のマクロバランスシートでみると家計セクターと非金融法人、非金融非法人の純資産は各々174兆ドル(2.8京円)、
38兆ドル(6千兆円)、16兆ドル(3千兆円弱)の合計228兆ドル(3.6京円)で双子の赤字と騒がれた債務の4倍もあり、米国全体でみた時の財務状況は健全で、経常赤字や財政赤字より4倍の巨額の余剰資金が有益な投資機会を探っているのである。
この米国の巨額の余剰資金力が米国経済の潤滑油となって循環してGDP30兆ドル(4800兆円)へ経済規模を拡大し続ける成長エンジンとなっており、信用創造の資金循環プロセスにおいて法人や個人の能力格差から所得格差が生じやすくなっている。
要するに米国はドル決済の国々を巻き込んで常に旺盛な消費と積極財政の投資、金融取引の信用創造で世界をけん引しており、これからも巨額の金融資金を運用し続けるのである。
事業で失敗して免責後も個人の信用力が高ければ1年以内でクレジットカードを取得、ローンを組むことも可能で、再挑戦がし易い環境にあり、トライアル・アンド・エラーの試行錯誤の連続で事業に挑戦し続ける起業家も多い。
米国が21世紀半ば以降に到来する精神文明的な覇権を目指そうとすると日本の仕組み、制度はある程度参考にはなるが、米国は米国で独自の貧困者向けの医療保険制度や社会支援のためのプログラムを開発できる力があり、
むしろ日本が逆にその新システムを学び、障害者や高齢者、母子家庭を含む貧困層のための生活や医療、福祉の新しい社会支援システムを構築する時代が到来するのであろう。
例えば、障害者手帳の名称を社会支援手帳と改め、生活困窮者や母子家庭、国民年金だけの高齢者、長期間再就職が困難な失業者なども対象に生活が豊かになる生活支援を制度設計する時代も到来すると予想している。
生活保護の方に作業所工賃の上限を月1.5万円に抑制する規制も倍の3万円まで緩和すれば、その資金は世の中に循環し経済を上昇させるので、新たな経済効果が期待できるとみている。
まずは日本でも自治体が過去30年以上続いた緊縮財政時代の規制を見直し、積極財政時代に合う新しい支援や考え方を推進すれば、経済が底辺から良くなっていくような気がしている。
以 上
〔注〕本記事の著作権は非営利運営の(社)社会資本研究所に帰属します。 本記事の引用、転 載、転記などは自由にご利用いただいて大丈夫です。 複写は、本データのままであれ ば、大丈夫ですが、別データなどへ加工しての複写はご遠慮願います。
〔編集後記〕
1979年は民主党ジミー・カーター大統領の時代で、米国経済が落ち込み、自動車業界はGMやフォードの大手自動車メーカーが苦戦、数万人の大量のレイオフがでて意気消沈していた。
米自動車メーカーを解雇された米国人労働者が、悪いのは不当に車を安く売った日本の自動車メーカーで日本車をハンマーでつぶして墓穴に放り込む様子をテレビが映し出していた。
ショックだったのはレイオフされた若い女性の工員さんが、テレビ画面の前で米国は日本に戦争で勝ったけどパールハーバーのようなだまし討ち(surprise attack)
で経済では日本に負けたとわんわん泣きながら訴える姿を見た時は正直参ってしまった。
当時はテレビで平気で差別用語や偏見コメントを放映していたが、アメリカで勉強しながら、このままでは日本の自動車メーカーは米国から一方的に悪者にされ、日米間で深刻な経済摩擦が起こることを懸念したのである。
当時、ホンダのCVCCエンジンやトヨタ生産方式など日本の自動車メーカーが開発した先進技術は技術系学生の関心事で新聞を読んで常識として知っていたが、
特にジャスト・イン・タイムは在庫を極限まで少なく、現場改善を繰り返し組み立てる独創的な生産技術で、
大野耐一先生の著書を日本から取り寄せ、無駄な資源を少なく環境負荷の低減まで考慮した画期的な生産物流の仕組みで、これだけでなくトヨタは心血注いで様々な車づくりの新しい試みに挑戦し改善を続けてきた。
だから売れる車をつくれたのであり、米国も本腰を入れて日本と組んで頑張らないと取り残されるといった論文を書いたことが思い出される。
学生を集め、「日本ができて、なぜ米国ができない?( If Japan Can, Why Can't We?)」(https://www.youtube.com/watch?v=vcG_Pmt_Ny4)というNBCの番組を再放映した時の、学生たちの真剣な眼差しが今でも思い起こされる。
若い時から誰からも頼まれもしないのに損を覚悟で世の中に役立つこと、人に喜ばれることが好きで、振り返ると、人生の正常な軌道から外れることが多く、
サラリーマンや経営者として失格人生だったと自認している。 今もよせばいいのに誰が読むのか、読んでくれるのかもわからず、南洋史郎や今田元喜のペンネームで仲間から激励を受けながら配信を続けている。
世の中の雰囲気が良い方向へ変わってきたかな、ちょっと役に立ったかも知れないとうぬぼれ、それが長生きして喜んで頂ける記事を書く頑張りエネルギーにつながっているのであろう。
長生きしたいと思えば、暴飲暴食を慎み、お医者さんの指示に従って摂生する。 私の場合は、マンジャロの用量変更もあり、7.5mgへの増量が効いたのか、
急に食欲がなくなり、梅田の飲食店の徘徊(はいかい)も無く、7月から8月の1か月半で体重が105キロから97キロへ8キロも減って驚いている。
家内にこのまま痩せて85キロになったら、男前すぎて中高年女性から誘われたらどうしようかと冗談を言って笑われているが、内心イメチェン欲はまだ残っている。
得手勝手な貢献欲といううぬぼれや生きがい、そこから生まれる長生きエネルギーの生存欲、さらに若く格好良くなりたいイメチェン欲、
こうしたたわいもない自己愛欲が生きる励みになり、それが続けば神様もあきれて百寿現役の夢も実現するかも知れないと勝手に思う今日この頃である。
以 上

