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50年先を予想する未来研究から日本は百寿現役社会となる

2024年2月2日

社会資本研究所

南 洋史郎

50年先の未来を予想する未来シナリオの研究がなぜ必要となっているのだろうか

当研究所は50年先の未来を分析して予測する未来学という新しいテーマに取り組んでいる。 従来の常識では、人が予想する未来は刻々と変化するものであり、予期せぬ大災害すら予想できず、 1年先の国家間の争いすら予見できないのに未来学という学問など何の役にも立たない、無駄なものだという考え方が強かった。 ところが、日本のように高齢者が増加し、過去の人生を振り返り、20歳過ぎで働き始め、 50年以上を現役で活躍する人たちが増えてくると50年という時間の経過が思いのほか短く感じられ、 世の中が急激に変化した分野とほとんど変化していない分野にわかれることが、実体験から理解できる人たちが増えている。

これは、昔のおぼろげな記憶をスマホでウイキペディアなどのネット情報で記憶を鮮明にして、 半世紀の変化ギャップを容易に認知できるようになったことも50年先の未来を漠然と夢想する中高年、 高齢者の人たちが増えている要因ではないかとみている。 半世紀後を明るく感じる人が多ければ、社会も明るくなるのだが、 逆に自民党の政治と金をめぐるスキャンダルや LGBT法案を可決する信じがたい醜態政治を目(ま)の当たりにすると日本の未来はこのままで大丈夫だろうかと暗く感じる人が増えるのも仕方ないのであろう。

米国ではCIAの中央情報局やNSAの国家安全保障局に限らず、民間シンクタンクでも  様々な数十年先の未来シミュレーションによる予測がおこなわれ、経済、外交、軍事などの政策へ大きな影響を及ぼしている。  彼らの未来分析の予測技術は卓越しており、緻密な調査に基づき数十年先の未来を予測して、先手必勝の政治判断を促(うなが)す資料が準備される。  大統領によっては、そうした資料を軽視して独自の判断で采配をふるうこともあるが、 民主党から共和党へ体制が変わっても、緻密な調査に基づく未来予測を背景とした政策分析の資料は極秘に扱われることが多いが、常に準備されているとみている。  例えば、中国の体制崩壊を想定した経済政策や第三次世界大戦を回避するための外交、 軍事政策まで様々なケースを事前に想定して危機管理の対策シナリオが準備されるのである。  そうした未来シナリオも刻々と変化する国際情勢にあわせて逐次(ちくじ)更新されている。

日本も政策研究大学院大学でこれからの政策の方向性に関する研究や各省庁から仕事をもらって 政策の未来予測をおこなうシンクタンクなどの研究機関は存在するが、 組織的にAIスパコンなどを駆使し未来予測のシミュレーションから先手必勝の危機管理の政策資料が準備できているとは言い難い。  つまり今の日本の政治は、50年先の明るい未来を創造するための国防や財政、外交、福祉、インフラなどの重要な政策を議論し、 策定する能力はなく、自民党に限らず今の政治家には、50年先に輝く日本の社会経済の未来を構築できる能力があるとは到底思えないのである。  逆に言えば、今の日本にこそ、50年後の明るい未来を創造する政策の研究が必要となっており、 今回、当研究所が考える明るい未来の予測シナリオを参考事例として紹介してみたい。

50年先の未来シナリオをどう描くかは専門家や研究機関によって千差万別となる

まず、未来シナリオを描くには、演繹(えんえき)法と帰納(きのう)法の2つの方法がある。  演繹法とは、過去50年間の変化から漠然と50年後の未来はこうなるというシナリオを先に設定し、 その方向へ世の中が進む理由を後付けで解説する方法であり、「後付け勘先(かんさき)」と揶揄(やゆ)されることもある。  未来シナリオを練る場合に重要な視点は、常に明るい希望のもてる未来を創造する脳力、洞察的な思考力を磨くことであり、一方で安全保障や防災の分野は、 危機管理の視点から、どうすればより安心できる状況をつくりだせるのかというシナリオを考えていく必要がある。  当然ながら、専門家や研究機関の見方によってその予測内容は千差万別となる。  当研究所の未来予測も演繹的なものが多く、資金的、時間的な制約からネット調査が中心にならざるを得ないので、 示唆(しさ)的な参考情報の一つになることを目指している。

一方、帰納法とは、AIなどシミュレーション技術を駆使し、 過去50年の出来事などから未来に影響を及ぼす様々な因子(ファクター/Factor)を抽出して、 今後50年間の未来に起こる変化を予測する手法であり、予測精度は格段に高くなる。  研究機関を中心に専門家は、様々なAIやスパコンを駆使したシミュレーション技術の開発に余念がない。  シミュレーション技術では、刻々と未来に影響を及ぼす因子が変化するたびに50年先に予想される未来社会の様相も変化する。  社会や技術の大きなトレンドで俯瞰(ふかん)するとその流れを変えることは稀である。  ところが、大災害や大戦争、革新的技術の登場などの変革因子(トランスフォーメーション/Transformation)により、 そのトレンドが閾値(いきち/Threshold・Border Line)を超えて変化すると従来の予想とは異なる未来社会が出現する可能性も高まるのである。

過去50年を振り返ると急激に変化した分野は、 ITコンピュータと通信の融合技術の領域であり、携帯電話からスマホ、パソコン、テレビなどの身近な家電製品にデジタル革命が進展して、 50年先もAIにより生活や仕事の大きな変化が予見されている。  一方、過去半世紀であまり大きな変化がなかった分野が、学校や都市近郊の街中の風景、 神社仏閣などの観光地であり、東京や大阪、名古屋などの都心部の景観はかなり変化したが、 50年先の都市景観を予想しようと思えば、自治体の都市計画をみれば一目瞭然であり、電気、ガス、 鉄道などのインフラが今後どうなるかもある程度の方向性が予測できる。

例えば、電柱の地下埋設のインフラ工事は、地震対策もあって首都圏など都市部を中心に工事が進み、 50年後には人口密集の都市部の電柱は完全消滅することは容易に予測できる。 交通インフラの核となるリニア新幹線は、 50年先は東京から名古屋、大阪だけでなく、北海道の札幌から九州の福岡まで1400kmをつなぐ大動脈として新たに敷設(ふせつ)工事が進められ、 利用客も急増することが予測できる。  国内3時間以内のリニアの乗り換えにより、大方の地方都市を時間距離5時間以内で移動できるようになれば、首都圏への経済集中、 地域格差という問題は解消し、各地域の中核都市に首都機能が分散されて、その地域が大きく発展するとみている。

経営リーダーには未来を意識しながら現実的な判断で具現化する能力が求められる

事業経営など特定領域の狭い範囲のミクロ視点の予測では、AIシミュレーションによる50年先のマクロ予測はある程度は参考になるが、 日々の実業に関係した将来の変化につながる50年先の技術や市場の変化を先取りした事業を開発することは難しい。  むしろ、50年先のマクロトレンドを念頭に置き、経営者や管理者などのリーダーが自分たちの身近な技術変化(Change of Seeds) や市場変化(Change of Needs)から独自の経験と勘で、 自分たちが考えるせいぜい十数年先の未来を予測し、自社マーケティング体制の革新への挑戦(Challenge of New Marketing) に取り組まないと生き残れない厳しい時代がやってきている。 彼らリーダーたちは、楽観的に前向きに明るい未来を描き、 うまくいかない未来のリスクも考えて先手必勝で対策をとる2つの相反(あいはん)する未来を先取りしながら、 「最悪に備えて最善を尽くす」考えで開発に取り組むことが求められるのであろう。

例えば、50年先の交通インフラの未来を考えた時に、山間部や島の集落、過疎地と地方の町や都市、 地方空港、島嶼(とうしょ)間を短時間で移動できる交通手段として、 航空法の最低高度150メートル前後の数十から数百メートルの超低空を時速百キロメートル前後で飛行する空飛ぶ車、 特に熱気球、飛行船の浮遊原理も活用した安全性の高いドローンエアバスといったものが開発されて、実用化されると予想している。  つまり、日本全国どこに住んでも移動のための時間距離が大幅に短縮され、地方の生活者の利便性が劇的に高まることが期待されている。

この未来トレンドを意識しながら、事業経営を営む経営者、 リーダーは、現時点で夢物語のようなドローンエアバスといった新しいコンセプトの交通手段が、 技術的に可能かどうか、どこに難解なボトルネックがあり、 それをブレークスルーできる勝算はあるのかといった現実的な問題に挑戦し続ける根気と勇気が必要になってくる。  さらに投資資金の調達や人材の育成など様々な障害を乗り越え、 プロトタイプの試作設計、製作にとりかかり、 開発後の試験飛行の後に潜在顧客となる住民へのアンケート調査を通じて利用可能な料金を設定、 それでも採算がとれるかどうかといった実現可能性の評価による新分野のマーケティングに挑戦せざるを得ないのである。  このような様々な障壁を乗り越え、事業として飛躍的に成長できる可能性のある新しい乗り物を開発、製造、販売にまでもっていけるかどうかは、 経営リーダーの先見性と新しいことへ挑戦し続ける企業文化に根ざしていることが多い。  このような企業こそが、百年以上の事業の成長と繁栄を謳歌(おうか)できる「世紀繁昌(せいきはんじょう)」を実現するのであろう。

がんが完治し遺伝子治療で知的障害区分が軽度となる時代の到来が期待されている

25年後の2050年には、現在の死亡原因の25%のトップを占める「がん」が克服されて完治する病気となり、 二位の15%を占有する心疾患が未病リスク対策の徹底で数%まで激減、三位の老衰もなぜ寿命が来るのかという研究が進み、 希望すれば延命治療が施され、四位以下の5%の肺炎や敗血症の病気も早期の対策が講じられれば、 平均寿命は85歳から95歳まで一気に引き上がると言われている。  平均なので百歳まで元気に現役で働く百寿現役の人口も激増、百歳以上の人口が百万人という時代が到来すると予測している。  25年後に百寿現役の人たちも増え、高齢者の定義が65歳から75歳へ引き上がり、年金が70歳支給になるのであろう。  つまり大方の企業の定年が70歳へ引き上がり、企業の福祉雇用の職場環境が充実する中、百寿現役の考え方が一般的な常識になるとみている。

コロナ禍におけるメッセンジャーRNAによるワクチンの開発は、人類に多大な医学的な進歩をもたらした。  実はメッセンジャーRNAはもともと遺伝子治療の分野で、 神経障害やアルツハイマー病など難易度の高い神経障害を治療する有望な方法として注目されていたものであり、 脳ジストロフィンに作用して重度の自閉スペクトラムの治療にも役立つと見られている。  あくまで想像的で希望的な予測になるが、25年先にはこのメッセンジャーRNAを活用した脳治療が飛躍的に進歩するのではないかと予想している。  もし神経障害や脳障害の治療が可能となれば、メッセンジャーRNAを活用した知的障害や発達障害への遺伝子治療が格段に進歩して、 IQ(知能指数)71以上85未満の境界知能や70以下の知的障害の領域の方々のIQが20~30以上引き上がり、 多少の認知機能などのハンディは残るが、普通の状態に近づくとみられている。  また、遺伝子治療の研究が進むと様々な難病治療にも応用できるので、重度、中度の障害レベルから軽度の障害、あるいは正常範囲へ治療改善できる可能性も高まる。 遺伝子治療や薬物療法などの医療の発達で、 アルツハイマー病や認知症など高齢になってからの認知機能の低下も防げるようになり、 80歳を過ぎて百歳まで現役で働く人々の脳機能も若さを保ち続けることができるようになるのであろう。  20歳から80歳までの60年間のキャリアパスをどううまく構築するかというテーマの議論が活発となり、 80歳、百歳まで勤務できる雇用の場として企業の役割が重視されるようになる。  中小企業でも百年以上事業として継続して栄える「世紀繁昌」の目標を定め、 数十年先をAIで予測して経営計画を練る「未来経営」や「未来戦略」の考え方が普及するのであろう。

平均寿命が百歳を超え現役で働き続ける百寿現役が社会常識となる時代が到来する

今後50年間に人々のライフスタイルや人生の考え方、職業観に大きく影響を与える医学や福祉分野における人間工学 (エルゴノミクス/Ergonomics)や長寿科学(Longevity Science)、 さらにロボットも含むヒューマノイド技術(Humanoid Engineering)が急速に発展するといわれている。  わかりやすく言えば、50年後には医療の発達で、人間の寿命が飛躍的に延び、平均寿命が百歳以上となり、 百歳になっても元気に現役で働いている人たち、いわゆる「百寿現役」の人口が百万人を超え、百歳以上の人口が数百万人の時代が到来しようとしているのである。  厚労官僚や財務官僚の大好きテーマの一つであり、毎年、長寿科学政策研究事業に予算が割り当てられ、 愛知県に国立長寿医療研究センターがつくられ、公益の長寿科学振興財団まで設立されている。  百寿現役が増加すれば、厚生年金の加入期間を長くし、年金の支給年齢を65歳から70歳、 75歳へと段階的に引き上げることが可能となり、財政的なバックアップも得られやすいのであろう。

今の常識では、百寿現役が当たり前となり、百歳でも現役で働く人が増えると予想しても信じ難いであろう。  現役を引退せず、社会や組織への貢献という目的意識をもって働き続けることが心身ともに若さを保ち、 長寿となる有効な方法であることもわかってきている。  この長寿の秘訣を知る企業経営者が、80歳や90歳を過ぎて、顧問などの肩書で経営のご意見番として、 老害と言われない配慮をしながら、現役で関与し続けるケースも増えると予想している。  逆に早くあの世に召されても自分は一切困らず、この世に嘆き悲しみ、困る人もほとんどおらず、 「はいサイナラ」と啖呵(たんか)が切れる、この世に未練のない人の寿命は短いともいわれており、 寿命については、高齢者の人生観や心理も色濃く反映するといわれている。  一方、企業側も慢性的な人手不足の影響もあり、高齢者が無理なくやりがいや生きがいをもって、 現役で働き続けられるように福祉の考え方とやさしい職場づくりが合体した福祉雇用のための職場も急増するとみている。  介護分野でも、要介護の高齢者に対して、施設近接の職場で簡単な組み立て作業による商品づくりが推奨されて、 人の役に立つ仕事に生きがいをみつけ、心身共に元気に余生を過ごす介護スタイルも広がっていくのであろう。

50年後には平均寿命が百歳を超え、105から110歳となり、大方の高齢者が百歳までピンピンとした丈夫な体になる理由は、 長寿のための医療技術の発達や人工臓器の移植が普及するという予測が根拠となっている。  人々が肝臓や腎臓などの人工臓器へ臓器交換してサイボーグ化する中、ギネスの長寿記録を150歳以上で次々と塗り替える人たちがあらわれ、 中には2百歳を目指すと公言する人たちもでてくるのであろう。  長寿遺伝子の研究が飛躍的に進み、遺伝子治療で人間の体そのものが若返る時代もやってくると主張する専門家もいる。  今の常識で考えれば、怪奇SF小説や映画グリーンマイルのような世界が到来、男性は百歳でも見た目が60歳、夜の生活が現役の元気な百寿も登場、 女性は閉経年齢が引き上がり、60歳で見た目40歳にみえる人が増え、60歳で子供を生む女性もあらわれる時代がやってくるのであろう。

百寿現役の人口が百万人以上、百歳を超える人口が数百万人の社会がやってきた時、社会や経済の状況が今より改善されなければ、 日本人の多くが悩んで自問自答するのではないだろうか。 「長い、長い間、奴隷のように一所懸命に働いたが生活は貧しいままで苦しい。 果たして百寿現役の社会となり、日本は幸せな国になったのだろうか」、 こんな悲壮的な嘆(なげ)きのセリフだけは聞きたくないし、そんな夢も希望もない暗い日本にだけは絶対にしてはいけない。

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