2024年4月30日
社会資本研究所
南 洋史郎
東京15区補選の立憲民主の勝因は組織票だが空中戦だけの日本保守党は侮れない
東京15区の江東区の衆院補選の結果は、意外に投票率6割、得票数25万の予想が外れ、 投票率4割に激減、得票数17.5万で1位の立憲民主5万、2位の無所属須藤候補の3万、3位の維新2万8千、4位の日本保守党が2万4千、5位の無所属乙武候補が2万であり、
上位5人の候補者で9割、15万票を分け合う結果となった。 日本保守党以外は組織票をもつ政党候 補や有名人であり、地場の基礎票も政党の組織票も無く、
わずか1カ月半前にネット以外は無名で新人の政治の世界で知名度ゼロの日本保守党の飯山候補が上位に食い込むとは、選挙分析プロ からみれば、想定外の快挙であった。
さらに今回の選挙は、日本保守党にとって初陣(ういじ ん)だが、大きな戦果を残すことになった。
一つ目は、ネットを通じて多くの日本人に日本を取り戻し、日本を守り、日本を豊かに強くする保守本来の精神を植え付けたことである。
飯山先生が淡々と街宣(がいせん)で訴える数々 の主張がネット動画で拡散され、賛同する全国の視聴者が増え続けている。
「日本人なら日本を愛し日本を好きになるのは当たり前、国を愛せる日本人でないと外国人の国を思う気持ちも理 解できない」など飯山語録と言える数々の訴えに感銘する人たちが増え、
ついにプロ仕様の数曲 の飯山あかりや日本保守党を応援するアニメ動画ソングまでネットに登場、そのフィーバーぶりは驚くばかりであった。 選挙を通じ一般の日本人に「保守の魂」が確実に伝わり始めている。
二つ目は、NHKや読売など日本の主要マスコミがこの社会現象を扱わず、日本保守党の候補 名すら報道しないメディアの偏向ぶりが暴露されたことである。
さらに選挙期間中に悪質で露骨な選挙妨害が頻繁にあったが、警察は指をくわえて何もできず、日本がすでに民主主義の砦 (とりで)である選挙活動ですら治安を守れない駄目国家に成り下がっていることがわかったことである。
この原因は警視庁トップの逮捕を決断できない優柔不断さに起因するという噂だが、 普通なら職務怠慢で即刻解雇となる話である。 ネット上では、岸田政権の警視庁は、中国への対応と同様にベロベロに甘いという厳しい批判もでている。
三つ目は、今まで投票率6割前後で推移した江東区で、なぜ今回の選挙だけ急に投票率2割、
8万の票が消えたのかという疑問である。 もともと自民と公明が強い選挙区で、過去2回の自
民党議員の不祥事で、自民党と公明党の地元での集票活動が無くなったのが原因とみられている。
ネットでの空中戦だけでなく、地元の人々と顔と顔とが見えるきめの細かな小集会などの交流、
地上戦も必要なのであろう。 ただ、新参者(しんざんもの)が全く戦えないとされてきた小選
挙区で、しかも9人もの曰く因縁(いわくいんねん)だらけの個性の強い候補者がひしめき合い、
映画のドラマのような選挙バトルを繰り広げた激戦区東京15区で、日本保守党が、組織票もな
く、空中戦だけで15%弱も得票できたという事実は、従来の常識破りの快挙であり、街宣カー
と辻立ちの街頭演説、それをSNSで報道していくネット選挙の威力が相当なものであったこと
が立証されたことになった。
立憲民主党の衆院補選3連勝から岸田首相による解散総選挙の可能性が高まった
自民党は、もともと選挙についてプロでシビアな判断をおこなうので、今回の補欠選挙で立憲
民主党に3連敗した後、大波乱の政局となり、首相自ら退陣、総裁選を前倒しにして新しい総裁
を選び、次の選挙に備えるのが常識であった。 ところが、岸田首相に限って言えば、そんな様
子や素振りは全く見られない。 それどころか、政敵を次々と倒し、派閥を潰し、小渕選挙対策
委員長を従え、頼まれもしない選挙応援に平気で出向く図太い神経をお持ちなのである。 一見
優柔不断で弱々しく見えるが、何を言われても耐え抜く強靭な精神力を維持し、首相を辞める気
など微塵(みじん)もないようにお見受けするのである。
つまり、何を言われても、反発されても、淡々と首相の職務を続けられるド根性をお持ちなのである。 そんなタフな首相でも、9月におこなわれる総裁選で再任されなければ、
首相を降りざるを得ない訳で、首相の専権事項である衆議院の6月解散は不可避というのが、一部の政治評論家の見通しとなっている。 この見方は正しいが、果たしてそれで自民党が選挙に勝てるのかが疑問であり、
立憲民主の衆議院補選3連勝をどう分析するかが重要になっている。 マスコミ論調は、自民は解散総選挙で大敗北となるので解散は無いという見方をしている。 確かにその見方もあるが、
別の角度から考えると綿密な事前調査で自民と公明の過半数の維持がギリギリでも見込めれば、解散総選挙は実施されるという見通しとなる。
その判断の鍵となる選挙区が東京15区ではなかったかとみている。 自民党と公明党の地方議員や党員が動かなければ、投票率そのものが激減、もともと組織票のある立憲民主は勝利できるが、他の野党は勝利できず、
どんなにネットの空中戦で善戦しても、保守政治への空気の大転換は起こらないと確信したのであろう。 それゆえ、日本保守党や参政党という新興の保守系政 党は、良くて数議席か10数議席にとどまり、まだまだ自民党の議席を脅かす存在ではなく、
自民党が底力を発揮すれば、過半数を維持できると判断したのではないかとみている。 また、全 国くまなく大量の議員を選挙に担(かつ)ぎ出せる資金力と組織力は温存しており、どんなに立憲民主党が議席を伸ばしても、
自民党を脅かす力はないと読んだのではないだろうか。
もし東京15区の投票率が6割前後と変わらず、ネット空中戦だけで日本保守党が勝利していたら、こ れは手ごわい相手となり、解散総選挙も躊躇(ちゅうちょ)せざるを得なくなったとみている。
解散総選挙で公明党も加え過半数を維持すれば総裁選も再任されて岸田体制が続く
6月の解散総選挙で公明党も加えて自民党が過半数を維持できれば、すでに政敵はことごとく
排除したので、9月の総裁選も再任されて、岸田首相によるリベラル自民の体制が来年も再来年
も長期で続く可能性が強まる。 ただ、そのような長期政権になるとは、なかなか考えにくいの
ではないかとみている。 理由は、自民党内にくすぶる岸田首相では勝てないと不安に感じている地元の基礎票、組織票に弱い若手議員や冷遇され続けてきた古参議員の動きであり、
特に煮え 湯を飲まされ続けてきた党内保守系の政治家が、これ以上失うものは何も無いという気持ちとなり、自民党から数十名規模で大量にスピンオフする可能性が強まったとみている。
そのタイミングは、国会議員の資格が残っている6月解散総選挙の数週間前あたりではないだ
ろうか。 この自民党から一旦離党して無所属となったスピンオフ議員の中に、保守の考えを大
事にする気概のある議員もいて、日本保守党と合流するのではないかとみている。 5名以上の
国会議員が日本保守党に加われば、一気にビッグな国政政党となり、解散総選挙で善戦するので
はないだろうか。 場合によって、一気に数十名規模のビッグな政党に変身する可能性も残って
いる。 その鍵は、ユニークな党首の百田先生や事務総長の有本先生による保守系の元自民党議
員を受け入れるかどうかの判断にかかっているのであろう。
一方、宏池会という派閥を解散した後の求心力は、麻生派の志公会という派閥が担っており、 6月の解散総選挙で過半数を維持できれば、9月総裁選前に大宏池会が形成され、安倍首相時代
の清和会の保守色が完全消滅したリベラル路線を推進する岸田首相をリーダーとする自民党体制が強化されるであろう。 ただ、6月の解散総選挙の前に若手や古参の有力議員が離党してスピンオフする数によっては、
自民党そのものが選挙前に瓦解(がかい)する可能性も残っており、 5月、6月の2か月間は波乱含みの政局となっていくのであろう。
ドロドロした近未来の政治分析をしてきたが、知れば知るほど魑魅魍魎(ちみもうりょう)が 跋扈(ばっこ)する心が殺伐(さつばつ)とする庶民の生活とかけ離れた特殊な世界であることがわかってくる。
何かとても虚(むな)しい気持ちになって、その傷ついた心を癒(いや)す ため久しぶりに家内と尼崎の映画館で「あまろっく」という人情味あふれるコメディ映画をみてきた。
佐川満男の遺作になったが、最初ゴジラで有名になった安藤サクラの関西弁がナチュラ ルで驚いたが、よくよく見ると江口のりこであった。
この映画のお陰で、ほのぼのとした日常 感覚が戻ってほっとしている。 政治の世界は本当にたいへんなところである。

