2024年10月8日
社会資本研究所
南 洋史郎
リベラル政治が終わり保守政治の時代となり政治家の能力が問われる時代になった
2005年を境に本格的な日本の政治の保守化が始まった。 保守の政治とは、縄文時代から数千年以上の長きにわたり、
先祖が営々と築き上げた日本の誇るべき伝統や文化、科学技術を進化させ、日本人がより豊かに強くなるための社会や経済を目指し、次世代の日本人へそれを継承、発展させる政治を意味する。 外交は日本の国益を追求、防衛は他国から侵略されない国守りの仕組みを構築、安全な生活や防災のインフラを整備、水や食糧、エネルギーは最悪の事態でも国民が困らない供給体制を目指すのである。 つまり本格的な保守政治を指向するためには、理想論の前に現実主義の考えで国民生活の実態を把握し、
あるべき論でなく、是々非(ぜぜひ)で物事を的確に判断、改善できる実務能力が求められるのである。
保守の政治家には、常に国民生活の実情を理解する能力が求められ、官僚任(まか)せでなく、細部まで把握し時に指導する能力も必要になってくる。
例えば、法案なら小文字で書かれた附則まで読み込み、矛盾点を探し出す理解力が必要となる。 規制対象に「など」と記載されていれば、全てを包含するのか、例外が存在するのかといった問題も即座に指摘できないと駄目であり、
官僚の書かれた原稿を読み上げるのではなく、むしろ自分の言葉で説明できる政策の理解力が無いと務まらない。 そのため政治家には、国民目線で政策を理解する相当な知識や経験、勉強量が求められる。
政治家同士の人間的な付き合い、交流も大事だが、それだけでは政治家が務まらない実力主義の厳しい時代へ突入しているのである。
終戦から10年目の1955年に自民党が結党して50年、高度経済成長で豊かになった日本が1990年代のバブル崩壊や消費税5%導入による経済の長期低迷を経験し、
小泉政権でも景気は一向に良くならず、そのような環境の中、2006年から第一次安倍政権にて様々な保守的な政策が始まった。
小中高生の教育分野の憲法的存在である教育基本法を戦後初めて改正し公共や愛国の精神を明示、防衛庁を防衛省へ昇格、日本版NSC設立法案や弾道ミサイル防衛システム運用を閣議決定するなど次々と従来タブー視された保守的な政策を推し進めた。
この2006年が日本における保守政治の始まりと考えている。
終戦から2005年までの60年間は、ある意味で左派的な平和主義、人道主義を振りかざす理想主義の政治でも日本経済を成長でき、
バブル崩壊では挫折を味わい、経済が低迷したものの、それでも国力を何とか維持できたリベラル政治の時代であった。
2006年からは保守政治の時代が始まり、2020年までの15年間は様々な保守的な政策が展開された試行錯誤の時代であったと言える。
麻生政権の2008年9月にリーマンショックが起こり、2009年9月より民主党政権が発足、当初国民が期待した生活を豊かに強くする保守的な経済政策は実践されず、
財務省主導で増税を主張、中国へも弱腰外交が展開され、完全に国民から愛想を尽かされ、2012年12月から第二次安倍政権が始動している。
安倍政権の黒田日銀総裁による異次元の金融緩和で経済が力強く回復を始め、景気が上向き、このまま経済成長が続くかと思われたが、2度の消費税アップにより経済成長も鈍化している。
世界が騒然とする事件が続く中で保守政治の真価が問われる厳しい時代が到来する
2020年1月以降の中国武漢のコロナ発祥を契機に中国警戒論が強まり、製造業中心に国内への生産回帰の流れが起こり、千兆円を超える国の借金を主張する財務省の大嘘がばれ、百兆円規模のコロナ対策予算を使っても、日本経済は破綻するどころか、GDPが成長、活性化しており、その事実に国民の多くが緊縮財政や増税は間違いで積極財政こそが経済の唯一の処方箋という認識へ考えを大転換している。
さらに終戦後のGHQ占領政策に端を発する戦後の日本否定の左翼、リベラル的な教育の誤りが明確となり、日本の伝統的な価値観や歴史観、国体や天皇の意義を改めて見直し、
再認識するようになったお陰で、今や日本に誇りと尊厳を感じる若い保守的な考えの世代が急速に増えている。
戦後教育の影響で、団塊世代の高齢者や60歳以上の昭和世代には左翼的な考え、リベラルな思想の人たちが増え、そのニーズに応えるため1980年代から2010年ごろまでの政治は、自民党や野党、マスコミ、
官僚も左傾化が著しく、リベラルな政策が主流となってきた。 ところが、2010年以降、特に長期の第二次安倍政権で日本も保守化、右傾化する人たちが増加、ネット上で嫌韓、反中のネトウヨと呼ばれる過激思想の人たちも登場した。
その大きな変化の流れの中で「草莽崛起(そうもうくっき)」を提唱するチャンネル桜の様々なネット番組が日本の保守政治へ果たした役割、影響は大きいと分析している。
草莽崛起とは、吉田松陰が提唱した民衆主導の政治改革であり、同じ思いで民衆が結束すれば、それが大きなうねりとなって、民衆にとって良き政治にできるという思想である。
2015年4月から始まった虎ノ門ニュースを契機として、保守系のネット番組が次々と登場、ユーチューブの言論規制も影響して過激なネトウヨは影を潜め、中立、現実路線を重視するやや右寄りの保守層が急増した。
書店の月刊誌のコーナーには、創刊百年を誇る老舗の文藝春秋の横に正論やWILL、HANADAの保守系3誌が棚を飾り、週刊誌の新潮、文春、サンデー毎日などの論調も以前よりは保守色が強くなってきた。
そうした社会変化の流れに逆行する今回の自民党総裁選における保守派を阻止するリベラル派の石破政権の誕生劇に国民は不快感をもち、中高年層の岩盤保守層は落胆し、若年保守層の怒りをまねいたのではないかと分析している。
ここで語られる保守やリベラルの定義や政策の違いを理解しておかないと大きな混乱を招くので当研究所独自の解釈で政策毎に理解しやすいように別紙に整理をしてみた。
政治の見方を右派と左派にわければ、保守は右派でも中立中道、あるいはやや右寄りのナショナリズムの考えが強く、常に現実主義のリアリズムに徹した政策推進を重視する。
理想主義の右翼や原理主義の極右の政治とは異なり、保守は戦争衝突を極力回避する平和主義の立場をとる。
例えば、保守の政治では、中国からの脅威に対し、強い軍事力を背景に外交交渉で相手に誤解が生じないよう日本の立場を明確に主張、相手に譲歩を促し、時には妥協することで、戦争回避につなげるという考え方をする。
武力戦争を起こさないために憲法9条を改正し、日本をしっかりと守れる国防体制を構築することが急務と考える政治スタンスをとるのである。

2020年1月のコロナ・パンデミックから始まり、2022年2月24日に起こったロシアのウクライナ侵攻、2023年10月に始まったハマスのイスラエルへの越境攻撃に端を発するイスラエル軍のガザ侵攻、中国の習近平主席の独裁政権のもとで台湾有事が危惧され、 2024年10月からイランとイスラエルの軍事衝突も本格化する懸念が強まっている。 世界が騒然とする事件が続く中で、今こそ日本の保守政治の真価が問われる厳しい時代が到来している。
解散総選挙では自民党の保守派とリベラル派の主張の大きな違いに注目が集まる
図表の「日本の政治における政党会派の政治信条と政策スタンスの分析分類」で整理されている通り、同じ自民党でも保守派とリベラル派では、その政策を推進するスタンスが全く異なっている。 自民党の保守派は、むしろ日本保守党や有志の会、参政党と同じ政策を推進できる立場にあり、低金利の継続による金融緩和を続け、
積極財政を推進、国債発行による思い切った公共投資による経済成長を目指している。 日本保守党はさらに豊かな家計の国民生活をめざすため減税を推進する立場であり、思い切った消費税減税まで主張している。
一方、自民党のリベラル派は、公明党や維新、国民民主の各政党と政策を共有する部分が多く、財務省主導の緊縮財政を現実的な考え方として受け入れる可能性が高い。
従来通り、中国との経済人事交流を促進、日中友好路線を堅持するスタンスも同じである。 様々な政策推進には、必ず予算が必要であり、そのための国債発行は極力抑制し、
決められた予算枠の中での政策推進が優先されるので、常に財政制約、予算の壁に阻止されることになる。 積極財政のスタンスをとる自民党の保守派とそこが一番大きな違いとなっている。
これら水と油のような財政政策や中国との外交姿勢の違いだけでなく、皇統継承においても、皇室典範で定義されている男系男子に関する記述をリベラル派は女系も容認する立場であり、
夫婦別姓やLGBTも肯定、解雇規制の緩和も推進する立場にある。 今度の解散総選挙で自民党が大きく2つの異なる政策グループにわかれる中でどのような主張、スタンスで選挙をおこなうのかが注目されている。
リベラル派の石破政権が岸田元首相や菅元首相をバックに保守派の清和会の議員や高市議員を締め付けながら、党としてどのようなマニフェスト、選挙公約を掲げるのかに注目が集まっている。

