2025年2月5日
社会資本研究所
南 洋史郎
日本の自動車業界は2強グループにわかれハイブリッドを核に世界的再編が進む
本田技研工業(以下「ホンダ」、その他の会社も通名)と日産が2025年6月までの経営統合の話し合いが進んでいる。
すでに日本の自動車産業はトヨタの寡占化が進められ、スズキやマツダ、いすゞへは業務提携のため5%を出資、ダイハツは100%、日野自動車は50%超えの出資で子会社化、スバルは20%超えの出資で持分法適用の関連会社になっている。
つまり、日本の自動車業界はすでに業務提携先のスズキやマツダ、いすゞを含め、関連会社のスバルや子会社の日野自動車、ダイハツを加えたトヨタ自動車グループ7社とホンダ、日産、三菱自動車(以下「三菱」)の二極構造となっている。
三菱は日産が34%を超える資本を保有、株主総会の否決権をもち、日産もルノーが38%を超える資本を所有、フランス国策の自動車メーカーのルノーに経営の主導権が握られている。
今回の経営統合の話し合いがまとまれば、日本の自動車業界は、トヨタグループ(以下「トヨタG」)とホンダ・日産・三菱の日本グループ(日産「日」とホンダ「本」を合わせて以下仮称「日本G」)の2強となる。
技術開発の現状分析から石炭火力発電所の隣接場所でCO2とH2からつくられる合成燃料(e-Fuel)の生産プラントの本格稼働が2030年頃から始まると予想している。
この燃料はガソリンと同等で一般のガソリンスタンドでも扱えるため生産時期と同じ頃に販売も始まる。 CO2からつくられる合成燃料の生産方法は確立されており、後は日本が得意とする品質と製造コストをひたすら低減、改良し続ける改善活動の領域に入る。
ENEOSの実証プラントではリッターあたり700円のコストをいかに低減できるかが課題となっている。
その鍵はコストの9割を占める水素を5分の1以下にする製造方法を確立することであり、ペロブスカイト太陽光発電によるグリーン水素や石炭火力発電の電力をつかったブルー水素など様々なメーカーが参入して激しいコストダウンや開発競争が展開されるであろう。
その結果、この合成燃料がガソリンに近づく価格帯まで改善が加えられ、石油資源の少ない日本の救世主となり、自動車の動力源は今後もエンジンが主力の座を維持し続けると分析している。
当然、2035年以降の新車販売を全てEVにするとか、石炭火力発電所の新設を抑制するといったCOP盲従の経産省の産業規制も政治主導でCOP脱退も視野に入れながら、早急に変更する必要がでている。
エンジンが主力と言っても、モーターやバッテリーとの最適ミックスのハイブリッドエンジンの意味であり、エンジンとモーターを駆動用と発電用にわけ、バッテリーも高性能な全固体電池と組み合わせたエンジンとバッテリー、
電気モーター、太陽光発電の最適な融合技術であるトリプルE技術(Engine & Electric Engineering)で優れたものを開発できないとグローバル競争には勝ち残れない。
ところが、日本はすでに次世代のハイブリッドエンジン技術とバッテリーの全固体電池、その充電のための太陽光発電技術においてほぼ独占的な優位的地位を確立している。
ハイブリッドエンジン分野は、トヨタのTHVとホンダのe:HEV(以下「HHV」)が世界の他の自動車メーカーの追随を許さない優れた技術的優位性を確立している。
この2社はハイブリッドエンジンの開発をめぐって長年、過酷な競争を続けてきた歴史があり、リコールや不具合のクレームなどを経験しながら、臥薪嘗胆(がしんしょうたん)の中で、ほぼ完璧なものを開発し終えているのである。
バッテリーの全固体電池は最適材料の組み合わせ開発を続けながら、何より量産技術の確立が必要不可欠となっているが、日本のメーカーがこの分野で優れた実績をもっている。
太陽光発電はペロブスカイト太陽電池の主力材料のヨウ素が日本国内で大量調達できるため有利な立場にある。
ハイブリッド(H)とバッテリー(B)、太陽光外装発電(S)という次世代の自動車のハードウェアの優劣を決めるHBS分野で日本の自動車メーカーのハイブリッド技術の2強であるトヨタとホンダを核に日本ではトヨタGと日本Gの2強のグループが形成され、
さらにそれらが触媒となって、欧米の自動車メーカーや関連メーカーに大掛かりな事業化学反応が起こり、連鎖的に産業再編が進むと予想している。
スーパーハイブリッドへの燃費競争が起こるがEVは10年以上の事業停滞を覚悟
これからの自動車メーカーの戦いは、ハードウェア分野は、ハイブリッドエンジンやEVモーターの燃費や電費の向上、全固体電池の軽量化と蓄電容量の大幅向上、車体全体へのペロブスカイト太陽光電池膜の埋め込みと塗装の外装融合技術が命運を決する。
ハイブリッドエンジンそのものの燃費向上については、エンジンとモーターの駆動や発電の技術とバッテリーや太陽光の電気エネルギーの技術を活用、WLTCモード基準でコンパクトカーだとリッター50km/ℓ、40リッター満タン、セダンであれば40km/ℓ、
50リッター満タンで2000km以上の航続距離を実現できるかが勝負となってくる。 ガソリン、合成燃料、水素の一回補充で航続距離2000kmを超える領域のハイブリッドをスーパーハイブリッド(以下「スーパーHV」)、
5000kmを超える領域のハイブリッドをウルトラハイブリッド(以下「ウルトラHV」)と呼んでいる。 燃費性能の良いコンパクトカーのトヨタのヤリスやホンダのフィットでも航続距離は1300~1400kmであるが、セダンクラスのプラグイン・ハイブリッドの
PHEVになるとバッテリーの夜間充電によりモーター駆動時間を長くすることで2000kmを超えるスーパーHVの車種も開発されている。 ただ、PHEVだとEVデメリットの電池重量が重く、コストがかかり、充電も必要で高額なセダン、
高級車のゾーンに絞り込まれ、コンパクトカーへの導入は難しい。
一方、100%モーター駆動のEV車は、航続距離が最大で500~600km、通常は350~450kmが主流のため2000kmの壁を乗り越えるためにバッテリー性能で5倍以上、
小型軽量化で5分の1以下の開発が必要となる。 バッテリーチャージに急速充電でも15~20分以上かかり、マイナス20度以下の寒冷地では全く動かないという致命的な欠陥を克服するため大容量の超小型電池
を不燃性の断熱材で覆って寒冷地や熱帯地帯でも使用可能にする被膜技術や容器開発によりガソリン限界マイナス40度でも使えるバッテリー開発は可能である。
急速充電は、全個体電池が普及すればカートリッジ式バッテリーが登場、スタンドでの5分以内の急速充電が可能な装置が開発され、緊急時の予備用バッテリー交換が可能なら、静粛性と電費の低さからハイブリッドからEVへ乗り換えるユーザー層も増えていくであろう。
今の開発スピードであれば、ペロブスカイト太陽光の外装発電の技術も進化するので、2035年以降に100%EV車の致命的問題も解消されると予測している。
2040年以降には100%モーター駆動のEV車も徐々に普及するとみているが、それまではCO2リサイクルの合成燃料や水素をエネルギー源とするハイブリッド車が環境面でもEV車より売れていく状態が続くであろう。
専門用語で言えば、電気自動車を普及させる社会実装を進める中で、難所の「魔の川」と「死の谷」は超え、「ダーウィンの海」のイノベーターとアーリーアダプターの2~3割の市場へは食い込めたが、
向こう10年から15年で致命的な技術的問題を克服できるまで6割以上のマジョリティ市場への食い込みは難しく、それまでは販売が停滞し業績が悪化し続けると予想している。
なお、経験則になるが、日本の自動車の購買層は、新車販売の時に5%前後のエキスパートユーザー層が、プロ顔負けの価値分析をおこない、それを口コミやSNS、ネットで発信を始め、その情報に影響を受ける15%前後の情報感度が高く、
比較的裕福な先進ユーザー層の購買に影響を与える。 さらに6割前後の保守ユーザー層は、ネット情報をちゃんと収集、理解しているが、自分自身の経験則から来る独特の感性、評価、損得勘定を大事にしている。
この保守ユーザー層の多くがコストメリットから大衆車のコンパクトカーや軽自動車のユーザーとなっており、今後も電気自動車の販売ターゲットにはなりにくいとみている。
最後の2割は高齢者に多いが、ロイヤルユーザー層といわれる自動車メーカーにとって、ありがたい神様のようなお客様である。
なにがあってもトヨタ、ホンダ、日産、スズキ、スバルなどのブランドに対してロイヤルティをもち、ディーラーとの長年の人間関係を大事にして車を購入する。
将来、この層へ比較的高額な電気自動車を売り込み、その半分程度の1割のユーザー層を獲得できるかも知れないが、残り1割は価格が安く燃費の良いスーパーハイブリッドの車種でないと売れないであろう。
2050年になっても、ハイブリッドエンジンはバッテリーの性能と容量が大きく改善され、EV電費性能と競合できる燃費のスーパーHVやウルトラHVのお得感を武器に保守ユーザー層の気持ちをがっちりつかみ続けると予想している。
例えば、仮に1回あたり30リッターでリッター300円の合成燃料を9千円で補充しても、ソーラー外装発電のバッテリー充電でモーター駆動も活用して3000kmを走行できるなら燃費は100km/ℓとなる。
このお得感により自動車市場の6割の保守ユーザーと1割のロイヤルユーザーのボリュームゾーンの7割は、ハイブリッドエンジンが市場を占有し続けると予測している。
電気自動車の需要は残り3割のアッパーミドルやハイエンドの市場にあり、この分野でエンジン発電を使ったシリーズハイブリッド(以下「シリーズHV」)のPHEVと価格性能でシェア争いを続けると分析している。
こうした自動車市場のユーザー特性を理解するなら、大手自動車メーカーの経営者が2040年に電気自動車だけに経営資源をシフトするという方針を掲げることは、実際はしたたかにハイブリッドで稼ぎ続けるので、
フェイントのブラフとして意味はあるが、協力会社のことを考えるなら控えるべきである。 むしろ2050年になっても、駆動と発電のハイブリッドエンジンの技術はスーパーHV、ウルトラHVへと進化し続けるので、
協力会社も一緒に開発を頑張ろうと叱咤激励すべきであろう。 スーパーHVの登場で2050年でもEVメーカーにとって事業環境は厳しいままで、欧米市場も同様であり、中国市場はEVからハイブリッドへ転換するであろう。
日産のシリーズハイブリッドなどエンジン分野に大手EVメーカーがなだれ込む
今後、米国のテスラや中国のBYD、その他のEVメーカーは、ダーウィンの海を乗り越える技術ブレークスルーが見えるまでの10年から15年を生き延びるためハードウェアのマイナス評価を自動運転の
ヒューマンウェアやナビゲーションのインフォウェアなどでカバーするだけでなく、100%EVのハードウェア面の致命的欠陥を克服するため、優れたエンジン発電技術をもつ会社を買収、
あるいは部品として取り込み、エンジンを発電だけに活用するシリーズHVのPHEVで再起をはかるとみている。 つまり、エンジンの発電機能だけを使ったシリーズHVがEVメーカー生き残りの主力になるとみている。
この分野で技術的な優位性を確立し豊富な経験を持つ自動車メーカーは日産であり、経営統合がご破算になった場合、大手のEVメーカーが日産買収を狙う可能性も強まるであろう。
10年から15年先を見据えるとホンダはハイブリッドエンジンのHHVだけに胡坐(あぐら)をかく訳にはいかないので、EV車の静寂性と操作感覚をもったシリーズHVの技術を有する日産のノウハウをホンダのEV車種へ加えるメリットは大きい。
ソニーと50:50の折半出資で設立したソニー・ホンダモビリティ株式会社のAFEELA1の新機種に追加するPHEV車種にも活用できる。
なお、実際は起こり得ないであろうが、テスラと日産の合併を仮定するとテスラの優れた自動運転などのソフトウェア技術やロボタクシーなどの共有利用のユースウェア技術、
オートナビゲーションのインフォウェア技術と日産のE-POWERのハードウェア技術の融合が起こり、さらにディーラー網が皆無のテスラが、突然、日産のグローバルな販売ルートを活用でき、トヨタやホンダにとって新たな競合会社が登場することになる。
今のところテスラは、ハードウェア開発には関心が低く、車の所有より共有の動きを先取りする持続可能な社会の実現に向け一所懸命のため、余分なお荷物となりかねない日産の買収には無関心であり続けるとみている。
ただ、米国政府の内部に入って政治活動に専念していると思われていたイーロンマスクが、突然、ギフテッド特有の直感で日産買収に強く関心を示す可能性も残っており、ホンダとの経営統合が確定するまでテスラの動きには細心の注意を払う必要がでてこよう。
万一にも想定外の買収アプローチがある場合、イーロンマスクというゴーン顔負けのリストラ経営者のもとで日産社員は再び窮地に追い込まれる可能性がでてくるであろう。
さらにテスラは人命を預かる自動車メーカーの使命である絶対安全の神話の追求を超えて、ひたすら自動運転の技術開発に挑(いど)み続けており、自動運転の欠陥操作事故でリコールと巨額訴訟の洗礼を受けるリスクもはらんでいる。
イーロンマスクは車の走行データを集め記録するデータセンターをDOJYO(道場)と呼び、ネット上で親日ぶりをアピールしている。
ビルゲイツのように米国人の有名経営者が親日を大袈裟に対外アピールする時は警戒や注意が必要であり、日産以外のエンジン技術に強い日本の自動車メーカーに対して触手(しょくしゅ)を伸ばす可能性も十分に考えられる。
日本も保守政治へ回帰する動きがあり、リベラルな自民政治により米系などの欧米の外資に株式市場を開放して敵対的買収に無防備な状態が続いている。
今後、保守政治に戻れば、自動車業界へ数兆円規模の開発予算を投入、外資の出資規制が検討されて、中国への技術漏洩に対しても厳しい規制を課して、日本の自動車産業を強力に守り続けるとみている。
自動運転分野はレベル4で国や自治体と連携、レベル3.5の安全機能の開発に注力
ソフトウェア分野の自動車メーカーの戦いにおいて、すでにホンダはレベル3の技術開発を終えているが、レベル4やレベル5の完全自動運転になるとメーカーにてソフトウェアの企画設計や開発は可能だが、
国や自治体の社会インフラとの連携をどうすべきか、様々な社会生活と絡(から)む問題を解決するソルーションまで視野に入れたヒューマンウェア発想の技術開発が必要となる。
例えば、レベル4は運行エリアの限定範囲内で無人化された自動車やバスが走り回るが、この分野に関心を示す購買層は、タクシー会社やバス会社、介護福祉施設などの法人市場や免許証返納で迷っている高齢者層をかかえる家庭である。
さらに利用できる限定エリアの認可に熱心なところは地方自治体であり、特に急激な人口減少で過疎化が進む市町村では地域住民の足に無人自動車を推奨していくであろう。
車のディーラーは、従来の販売の概念を変えて、国や自治体の認可やニーズを聞きながら、地域に根差した車の利用サービスを促す企画提案が必要となってくる。
自治体によってはレベル4の認可を受けた複数メーカーと組んで第三セクターの無人介護タクシーの運営会社を設立、公共サービスとして所有から共有の利用を促すところもでてくる。
また、財政負担の軽減のため、介護が必要な家庭に無人運転自動車の有償貸与や個人所有を促す補助金制度を導入、地域住民の利用を促すケースも考えられる。
いずれにせよ、国主導による無人運転自動車を普及させるための制度設計や財政支援は必要不可欠であり、保守政権には、こうした業界から喜ばれる地に足の着いた政治を期待したいものである。
さて、好むと好まざるとにかかわらず、自動車メーカーには限定的な利用地域を絞り込むレベル4の完全自動運転の自動車開発が求められる。
自動車という商品サービス事業は、ユーザーや同乗する家族の大事な命を預かっているという使命感や義務感が無いと成立せず、どちらかといえば、電車や航空機のメーカーと同じ企業風土の中で、
何を言われても耐えて耐え忍んで地味にコツコツと改善を続ける根気が求められる。 EVになれば、スマホと同じコモディティなのでどこでも誰でもつくれると主張する専門家と称する人がいるが、自動車事業のカルチャーを全く理解しておらず失格である。
また、100%EVでないと自動運転も含めた様々なシステムの導入は無理と言う意見もあるがこれも間違いである。 むしろハイブリッドの方が、バッテリー充電ができ、NTTの光半導体の実用化までは、
蓄電消耗の激しい自動運転のAIシステムを搭載したパワー半導体は、ハイブリッドでないと導入は難しいとみている。 なお、車載半導体は、エンジン搭載だとECUが必要でEVより複雑になるが、その技術は確立されている。
ユーザー側も自動運転車だからといって、ホイホイと調子に乗って購入はしない。
考えてみて欲しい、自分の命をブラックボックスとなったシステムを搭載した車に気軽に任せるだろうか。
さらにコネクテッド(Connected)といって、車載走行データをリアルタイムでデータセンターへ送信、オートナビゲーションなら行先まで目に見えないものにコントロールされるのである。
高齢になって免許証の返納を迷う時に考えるかも知れないが、自動運転は怖いので、レベル2の車線変更や駐車、スタート時に障害を検知、誤操作を抑止する安全運転支援や高速で自動運転で
走るオートクルーズの機能が搭載されていれば、事故を未然に防げるのでそれで十分であろう。 優れたレベル2の自動車を購入する時の判断基準は絶対信用を感じる自動車メーカーのブランドである。
トヨタやホンダ、日産などの歴史ある日系メーカーやベンツやBMWなどの独系メーカーならレベル2の車を躊躇(ちゅうちょ)なく買えるが、テスラなどそれ以外の自動車メーカーからの購入にはかなりの抵抗を感じるのではないだろうか。
こうした背景から、日本国内の自動運転分野は、トヨタGと日本Gによるレベル2、さらに運転中に脳梗塞や心筋梗塞などで運転者の意識が無くなり、倒れた時も自動検知でレベル4の完全自動の運転モードに切り替わり、
近くの救急エリアや救急病院まで自動搬送するレベル3.5のAED(自動体外式除細動器)のような完全自動運転機能があれば十分である。
レベル3.5の自動運転はトヨタとホンダが先行して企業グループで社会実装が進む
2035年ごろまでにトヨタGやホンダを核とする日本Gにてレベル3.5の安全運転のための完全自動制御と緊急時に限定した完全自動運転システムの開発が完了、2040年頃までにグループ全ての車種に標準装備される時代が到来すると予想している。
自動車メーカーにとってレベル2までの運転事故は、ユーザー側の過失責任を問えるが、レベル3の自動運転については、運転事故の過失責任がユーザー側にあるのか、メーカー側にあるのかが不明瞭となり、システムの不具合を巡って法廷闘争となる可能性がでてくる。
事故が起こった時、ユーザー側はハンドル操作も含め自動運転中に車が勝手に事故を起こしたと主張するであろうし、メーカー側は自動運転システムに問題はなく、ドライバー側の過失で事故が起こったと主張するであろう。
自動車メーカー側は過失責任が曖昧(あいまい)になりがちなレベル3の車種投入を一切止め、国や自治体と一緒になって利用範囲、すなわち過失責任の範囲を限定的に規定できる完全自動運転のレベル4の開発を進めるとみている。
認可申請する自治体のエリア内で完全自動運転を進める場合、ナビゲーションで目的地を指定した後で危険ルートを回避する自動運転ルートを設定するなど様々な事故防止のための自動運転システムの開発が継続されるであろう。
トヨタGや日本Gは、全国の様々な地域の交通インフラにディーラーを通じて関与するので、ディーラー網の共有化や整理統合が進むとみている。
2030年ごろから日本では国や地方自治体との連携による自動車メーカーによる完全自動運転の認可や試験的な地域限定の利用サービスがはじまると予測している。
2040年から2050年ごろまでにレベル4の完全自動運転サービスで全国をカバー、そのノウハウを集約して全国津々浦々をカバーするメーカー責任の範囲が明確となった完全自動運転の機能をもったレベル5の車種が投入されるようになると分析している。
トヨタはすでに本格的な自動運転の車社会を見据え、ウーブン・シティと呼ばれる車社会の未来を研究する街づくりをはじめている。
特定の自動車メーカーのグループで事業を展開する発想(Automotive Industry Concept)から地域の人々のための車中心の先進的なサービスを提供する未来コミュニティをつくる発想
(Human Society Service Concept)まで事業領域(Domain)を広げたのである。 そこでトヨタ独自の未来の車社会のショールームならぬショーエリアをつくり、そこで展開されるサービスをユーザーへアピール、実商売へつなげる計画なのであろう。
例えば、ウーブン・シティで提供される完全自動運転のバスや自家用車などのレベル4の限定的な自動運転サービスを地方自治体の関係者へ見せ、自動運転に対する不安や心配を解消してもらい、
自動運転のバスやタクシーなどを自治体へ提案、運営からメンテまでトータルパッケージを地域ディーラーと組んで推進する狙いがあるのではないかと推察している。
ホンダと日産、三菱の日本グループの経営統合の参考モデルは阪急阪神グループ
ホンダと日産の日本グループの経営統合の話し合いが二転三転している。
日産側から9千人のリストラ計画が出てこないので、経営判断の遅さに業を煮やしたホンダ側から日産側へ子会社化の提案があったようだ。
ただ、日産側は対等合併が条件だったので、突然、ホンダ側から上から目線で今までの約束を反故(ほご)にする子会社化提案への反発は理解できないことは無い。
案の定、2月5日の日産の役員会で「経営統合を断念、基本合意を破棄」という結論になったようである。 公表後にホンダ株は上昇、日産株は下降、日産は思い切ったリストラを断行しない限り、単独での生き残りは難しいと言われている。
当然、新たなパートナーを探すことになるが、THSに対抗できる優れたハイブリッドエンジンの技術を持たず、シリーズHVのエンジン発電技術だけでは、今後も事業環境は厳しくなると分析している。
無責任な外野の意見としてお許し頂けるなら、経営統合の話し合いにおいて、ホンダと日産の経営陣の両方とも今まで述べた自動車業界の現状を客観的に分析、未来のあるべき姿を展望、
大局観をもって経営判断をする経営能力に欠けている気がする。 もちろん、経営者が論理的に熟慮を重ねた上で、独自の優れた大局観があっても世の中がその通りになるとは限らない。
ただ、少なくともなぜ当初のシナリオ通りにいかなかったのか、その時点で新たな分析ができ、次の改善策を検討、議論ができるので、いずれにせよ経営者として独自の大局観で未来シナリオを策定することが必要となる。
大局観を練る時に過去に経営統合の良い事例があれば、今回の経営統合を考える上で参考になる。
事例としては、阪急阪神ホールディングス株式会社(以下「阪急阪神G」)があげられる。
社名も含めて外部から見ると対等の扱いとなっているが、2006年に阪急電鉄による阪神電鉄の買収統合により阪急阪神Gが誕生している。
当時、村上ファンドによる阪神電鉄の株の買い占め騒動があり、阪急電鉄のメインは三和銀行、阪神電鉄は住友銀行で銀行系列も異なり、互いに犬猿の仲であった。
同じ梅田と三宮の山手と海側の路線でライバル心が強く、互いに競合していたが、買収騒動の危機から思い切ったライバル同士の経営統合が実現した。
阪急電鉄の本社内に本社機能が置かれ、代表取締役や役員も阪急電鉄で占められるが、外から見ると阪急電鉄や阪神電鉄の両方とも阪急阪神Gの100%子会社であり、独立採算で阪神電鉄も従来通りでそのままの形態で運営されている。
そのお陰で阪神電鉄の企業文化や社員の雇用、阪神ブランドがそのまま継承されており、協議する時は、対等の立場で相談、最終判断は阪急阪神Gがするものの、同じグループの仲間という意識をゆっくりと時間をかけて醸成していった経緯がある。
阪神タイガースは阪神電鉄の子会社であり、阪急百貨店と阪神百貨店は別のH2Oリテールの傘下だが、全く別のイメージの百貨店のままである。 阪神タイガースの優勝記念は、阪神百貨店だけでおこなわれ、阪急百貨店とは全く無関係であった。
冷静に俯瞰(ふかん)して、外部の専門家と称する人たちが、テレビやネットで会社の内情も知らずに日産は駄目と言い過ぎる気がしている。
これでは経営能力のない役員ほど被害者意識が強くなり、対抗心や反発心も高まり、まとまる話もまとまらなくなる。
よくよく考えてみるともともと巨大組織で資本と経営は完全に分離しており、どっちが上か下か、文化が違うと騒いでも、所詮、経営者もサラリーマン出身で、創業経営者のように駄目なら自己破産の厳しい状況に追い込まれない優雅な身分である。
一般に合併による経営統合で困ることは、プライドと意識だけが高い役員が、優れた戦略的な代替案も無く、いろいろ訳の分からない財務資料などを持ち込んで、反対のための反対をする場合である。
もしも、そのようなタイプの役員がおられるのであれば、阪急阪神Gのように経営統合の後で時間をかけて警戒心をとりながら、ホンダの上下の隔たりのないワイガヤで論理的に物事を詰める優れたコミュニケーション・スキルをマスターしてもらい、
日産社内を少しずつ良い方向へ導いて欲しいと願っている。
勝手な推測で恐縮だが、今回の子会社案もいつものホンダらしい裏表のない気楽な提案だったと思うが、もう少し相手の立場への配慮も必要だった気がする。
強いものが寛容な心で弱いものを助け、弱いものは恩に感じて、さらに弱い立場の協力会社や販売会社を助ける「強助弱食」の精神を醸成できれば、
ゴーンによるリストラ推進やわがままな独裁経営から立ち直るため、売れない車種を減らし、バッサバッサと合理化などで厳しいコストダウンを続け、人心も相当に疲弊されているような状況ではないかと拝察する。
販売店からは、シルフィーやティアナといったセダンタイプやエンジン車が完全消滅、シリーズHVに集中するのは理解できるが、肝心のスーパーHVの航続距離2000kmを超えるPHEV車種のラインナップができていない。
おそらく米国市場で2年前にPHEV車種を増やし充実させておけば、米国の販売実績が今のように落ち込むことはなかったと思う。 まずは、一刻も早くシリーズHVのPHEV車種を大幅に投入する方向へ転換すべきであろう。
さらに現場主義のホンダスピリッツを徐々に浸透させ、小さな成功体験の積み重ねの中から役員マインドが変わり、社員に心のゆとりとやる気をもってもらうことも必要ではないかと分析している。
日産はホンダとの経営統合でWIN・WINのシナジー効果で業績が急回復する
ホンダと日産の経営統合で互いの強みと弱みを補完し合うWIN・WINのシナジー効果を高めることで業績を早期に回復できると分析している。
ホンダの強みは、ハイブリッド駆動エンジンのHHVであり、フィットなどコンパクトカーに高機能・省スペースの小型バッテリーを搭載、家庭の夜間電力で充電できるプラグイン充電機能も加えることで、
2000kmを超える航続距離のコンパクトカーの車種の開発を目指すべきではないかと考える。 セダンはHHVにシリーズHVの発電用の小型エンジンと高機能バッテリーを搭載、航続距離2000kmを超えるアコードやシビックタイプRなどの高級車種の
ラインナップを充実できるであろう。
日産の車種ラインアップの方向性としては、EV車の欠点をガソリン補充のエンジン発電機能で補完するシリーズHVにプラグイン機能と大容量バッテリーを加えたPHEV車種を大幅に増やし、
2000km以上のスーパーHV領域の航続距離を目指す。 また、コンパクトカーの領域では、HHVを標準搭載した新しい車種を開発販売することで、シリーズHVのノート以外のラインナップを充実させる。
要はホンダのHHVと日産のシリーズHVを活用して、航続距離2000kmを超えるスーパーHV領域の車種の充実をはかるのである。
ディーラー販売においては、洗練された日産のディーラー販売ネットワークの中でホンダや三菱の車種も扱うマルチブランド・ディーラー(MBD)を選定、コンパクト、セダン、SUV等
の多岐にわたる車種を扱い、販売実績の向上を目指すことでシナジー効果が得られると考える。 日産とホンダ、三菱のディーラー販売の能力を比較すると日産の販売店のマネジメントが比較的優れており、
店のショーウインドウから展示のレイアウト、メンテナンスの修理工場まで小ぎれいに整備されていて、高級感を感じるところも多く、販売員も比較的よく教育されていて、きめ細かく丁寧な対応をされている。
この日産ディーラーの販売マネジメントのノウハウをホンダや三菱へも教えるとともに逆にホンダや三菱のディーラーの中で優れた業績を上げるマネジメント・ノウハウをもつ販売店も日産へノウハウを教え合う相互学習関係を構築するべきであろう。
この2年間で日産は売れる車種に絞りすぎ、過去の華やかなラインナップの時代に比べると車種が少ないので、ホンダと三菱が新たに車種を加えることでユーザーの選択肢が格段に増え、販売実績が伸びると予測している。
自動車生産工場については、最近の動きとして部品のモジュール化が進み、様々な系列の自動車メーカーの車種を多品種少量で受託生産できるAMS(Automobile Manufacturing Service)を強化する動きがみられる。
従来のように単純に稼働率の悪い工場を閉めるという発想より、稼働率を上げるために余ったラインを新たな受託生産の仕事で埋める発想で系列の複数の自動車メーカーから仕事を受託する工場を増やすべきではないかと考える。
今後、ホンダと日産、三菱の経営統合の話し合いの過程で、互いの系列車種の生産を受託できるAMSを推進できれば、販売状況に応じてフレキシビリティの高いライン生産の体制が組めるとみている。
その意味で今回の経営統合の話は、三社にとってWIN-WINとなるものであり、AMSによる工場の合理化を検討する中で、工場閉鎖、リストラの相談もすべきではないかと思う。
つまり、経営統合の前にホンダから提案されている日産の工場閉鎖のリストラの話は時期尚早であり、むしろ経営統合の後にAMSの生産と物流販売の車種ごとの理想的な組み合わせを考える中で、
それでもAMSが難しいという工場に絞ってリストラを進めるべきであると考える。
以 上
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