2025年3月4日
社会資本研究所
南 洋史郎
人生は失敗や挫折を経て、その都度再設計や再設定をせざるを得ないところがある
大学や高校の受験シーズンとなり、合格発表の日が次々とやってくる。 合格して歓喜する人、不合格で落胆し静かに去る人、
明治時代に受験制度が導入されて毎年相も変わらず悲喜こもごものシーンが展開される。 人は成長とともに様々な失敗や挫折を味わう。
人生で成功体験は数えるほどしかなく、ほとんどが失敗と挫折の連続である。 傍(はた)から見ると金も名誉も手に入れ人生で成功したと思われている人から、上昇志向が強すぎるのか、意外に不満、不平ばかりを聞かされることがある。
逆に貧しく日々の生活に追われながら、数多くの失敗と挫折の人生から自分に自信と誇りを取り戻し、充実した人生を歩む姿に感銘を受けることもある。
要は人生の失敗や成功の基準は人の尺度によって千差万別であり、自分の人生を判定できるのは他人(ひと)ではなく、自分であり、それゆえ自分の思いや信念に忠実に生き、日々充実した気持ちで生きようとする心構えがいかに大事かに気付かされるのである。
失敗や挫折を一つの大事な機会ととらえれば、今まで歩んできた人生と異なる生き方が選択できる貴重なチャンスを天から授かったとも解釈できる。
自分の学生時代を振り返っても、いくら受験勉強をしても、試験当日になると覚えた多くのことが記憶から消えて答案が書けず、不合格を積み重ねた苦い経験を持つ。
社会人となって事故で脳検査を受ける機会があったが、専門医より脳全体に珍しい認知症にあらわれる委縮が見られ、記憶は苦手かも知れないが、思考力は大丈夫と言われたので、その影響が多少はあったかも知れない。
小さい頃より一つの課題テーマを追いかけ、その分析結果を整理、発表することは好きで得意であった。 そこで記憶より思考力が重視される米国の方が面白いかもと渡米、勉強したがその選択肢は正しく、実に得難い貴重な経験をさせてもらった。
脛(すね)をかじらせてもらった親には、今でも感謝している。
今年も合格発表の日に挫折を味わっている学生は大勢いると思う。 ただ、これだけは自信をもって言い切れる。
皆さんは不合格という挫折経験のお陰で、今まで歩んで目指して来た人生目標を転換し、新しい目標を設定しなおし、人生を再設計せざるを得ない貴重な機会を得たということである。
この人生目標の再設定や再設計という経験は、今回の受験の失敗だけに限ったことではない。 これからの人生で数限りなく自分に降り注いでくる災難や失敗、不幸な出来事を乗り切るための人生仕切り直しのほんの序章に過ぎないということである。
大学卒業までは順風満帆でも就職した会社が突然倒産し路頭に迷う、良きパートナーに恵まれ結婚したが生まれた子供が突然死であの世に召される、信頼していた腹心の部下に騙されて会社が倒産、債務保証をしていた自分が自己破産せざるを得なくなる、
資金繰りに困窮して15%の高利の金融機関へ借りたところ、返済できずに借金がどんどん積み上がり、自宅まで担保に入れざるを得なくなるなど次々と人生の難問奇問に遭遇、そのたびに人生の再設定、再設計が必要となるのである。
人工知能から人工頭脳へ技術進化する中で人間は違う存在であり規制が必要となる
経営者や政治家という重い責任のある地位について困難に遭遇すると人生をやり直す再設計が難しくなり、今までと別の人生を歩む再設定の覚悟が必要なこともある。
例えば、倒産や自己破産、会社資金や政治資金の規制違反による刑務所収監、両方を経験したら、今まで歩んだ人生の栄光のキャリア、名声を全て捨て、新しく生まれ変わる気持ちで再起を期す覚悟が必要となる。
そうなったら、大学受験の不合格経験なんて実にちっぽけなものとなり、そんなことで悩んでいた若かりし自分を愛(いと)おしくさえ感じるようになるだろう。 ただ、経営者や政治家は、自分は人生のやり直しの再設定はできても、それだけで済まないことが多い。
破産後に一緒に働いていた従業員の行く末や政治失脚した後に一所懸命、選挙で応援頂いた有権者の方々の落胆の気持ちに申し訳ないという強い自責の念にかられるのである。
その意味で経営や政治の采配は、生半可な気持ちでは取り組めず、成功による名声と失敗による没落が一衣帯水の関係であり、常に緊張しながら真剣勝負で対峙せざるを得ないのである。
一人の人間の人生すら思わぬ予期せぬ失敗と挫折を繰り返して、その都度人生の再設計や再設定がおこなわれる中、経営者や政治家、専門家、評論家など多くの人々の生き方に影響を与える人間ともなるとその言動や行動に影響を受ける人々がかなり増え、
それが多くの人々の人生の浮き沈みにも間接的に関係して、数百から数十万人、地球規模なら数千万から数億人以上の人生の再設定や再設計にも予期せぬ様々な副次的な影響を与え続けるのである。 SNS全盛の時代となり、個々の人生模様が瞬時に多数に伝播する世の中へ変化しており、
人々の人生になんらかの影響を与える人たちをライフ・アフェクター(Life Affecter)と呼べば、その頂点に立つ人たちが首相や大統領などの政治リーダーといえる。 情報の分野は動画サイトや人工知能AI(Artificial Intelligence)が影響度を強めている。
今後、AIから人工汎用知能のAGI(Artificial General Intelligence)へと開発が進み、人間の頭脳に近い人工頭脳、人工超知能のASI(Artificial Superintelligence)の領域まで技術がさらに発展すると予想されている。
人工知能などの分野の実業家で発明家として有名なカーツワイル博士は、2045年に人間の頭脳の機能を超える技術的特異点、シンギュラリティが訪れ、人間のように考え、未来を予測し、人間を超えるヒューマノイド・ロボットが登場すると予見している。
同氏は人間が不老不死になる時代もやってくると主張、現実離れした夢想家ではないかとも言われているが、人間の頭脳を超えるシンギュラリティが到来するかどうかについては懐疑的な見方をする専門家も多い。
理由は、人間にそなわる意識や心霊の世界が科学的に解明されていないことであり、人の人生がなぜここまで全く予知、予期できないほど多様に変化するのか、さらにその予知できない人の行動が、ライフ・アフェクターのような他人から思わぬ影響を与えられ、
予測しにくい行動をまねくのかが論理的に説明できる形で解明されていないのである。 人工頭脳をもったロボットと人間との相違点は、論理的に矛盾のない理路整然とした完璧な思考プロセスで考え、予測し動く機械と非論理的な説明のつかない意識が働いて、
予期しない言動や行動に走って、失敗や挫折を繰り返す生物との違いということになる。 つまり技術的に超える、超えないという比較対象ではなく、全く違う仕組みの存在であり、それゆえに邪悪な人間が人工頭脳の搭載されたロボットを大量に自由に操作できれば、
人類を支配し、滅ぼすことも可能と言われているが、そうした事態が起こらないように今からASIの前段階のAGI開発への規制が必要になってくるのであろう。
減税とトランプ関税への無策が自民の参議院選挙の大敗と議員の大量落選をまねく
個々の政治リーダーを観察した時に米国のトランプ大統領ほど世界中の人々に強烈な影響を与えるライフ・アフェクターも珍しい。 今までの政治キャリアをみてもかなり異色といえる。
ここまで短期間に大胆に世界を動かす政治リーダーも少ないが、トランプ自身は二期目も1ドルの給与しか受け取っておらず、私利私欲や利権のためでなく、民主党政権の時代に衰退しきった米国再建に自分の全人生を賭けているのである。
その面ではどんなに厳しい困難に遭遇しようとも、自身の信念を曲げない人生哲学の強さを感じる。 2020年11月選挙でバイデン大統領に敗北したが、
不正選挙の疑いが濃厚であり、その後もディープステートと呼ばれる影の官僚機構やそれを動かす民主党政権に弾劾裁判や数々の訴訟で政治生命を何度も断たれそうになった。 昨年夏には暗殺未遂まで経験している。
それでも米国を再び偉大な国にするというスローガンMAGA(Make America Great Again)を掲げ続け、2024年11月選挙で大勝利、2025年1月20日の大統領就任から自分たちを追い詰めた官僚機構の中から手始めにアメリカ国際開発庁、
USAIDの職員の大量解雇に着手、さらに政府効率化省、DOGE(Department of Government Efficiency)を新設、2月以降、連邦政府職員の大量解雇も始まった。
また、自分自身をタリフマン(関税男)と自嘲しながら、中国へは2月に10%の追加関税を課し、犯罪組織を取り締まり、違法薬物フェンタニルの米国への禁輸処置がとれなかったカナダやメキシコへも3月4日から25%の関税を課すことになった。
背景に米国ではフェンタニルの違法薬物中毒で10万人近い米国民が亡くなっており、このような状態を放置しているカナダやメキシコへの厳しい制裁的な処置とみられている。
極め付きは、2月28日の米国トランプ大統領とウクライナのゼレンスキー大統領との口論による和平合意の話し合いが御破算(ごはさん)になったことであろう。
政治家リーダーともなるとどちらが良いとか悪いとか低次元の感情レベルの問題を云々することは許されない。 問題の本質は、日々ウクライナ戦争で多くの兵士や民間人の命が意味もなく失われ続けていることであり、停戦により一刻も早くその問題を解決する必要があるのだ。
面子やプライドという話ではなく、ウクライナとロシアの愚かな戦争を早期に終結させ、ひとりでも多くの人命を救済するという話なのである。
現段階では、憎しみと怒りの塊となったゼレンスキーとプーチンとの感情のわだかまりを乗り越え、停戦を実現できる力を持った政治家はトランプしかいない。
おそらく、今回の問題で大統領の任期が切れているゼレンスキーを国民が再選するまで、なかなか交渉がギクシャクしてうまくいかないと思われ、まずはウクライナで正式な大統領選挙を早期に実施する必要があろう。
英仏中心に欧州独自の停戦計画を策定、米国と交渉する動きもみられるが、うまくいけばよいが、困難が予想される。 ロシアへのSWIFT排除の経済制裁の解除まで実施するかどうかは不透明だが、バイデン政権時代とは真逆の政策を推進しており、
少なくとも中国の影響を排除するための生活必需品や中古機械、中古車などの部分的な経済制裁の解除はありうるとみている。 既に中国の影響が強い国連の国際紛争の仲介機能やWTOの世界貿易機関の存在は全く無視しており、
むしろ国連や国際機関を完全にスルーする形で停戦交渉が進められ、国連の事務局側も実質何の力もないため静観せざるをえない状況となっている。
一方、安倍首相亡き後の日米関係は、非常に憂慮すべき状態が続いている。 2月7日に石破首相と会った際は、トランプ大統領は「あなたは偉大な国民の首相になるだろう(今はそうではないという皮肉)」と述べた額を渡し、会談時間わずか30分、
日本とまともに話し合う様子は感じられなかった。 安倍首相の後継者といわれる高市議員へは事前に会いたいと伝えており、親中路線を歩み続ける今のリベラル色の強い自民党の石破政権には懐疑的な見方をしているのであろう。
その影響なのか3月3日には日本と中国の首脳に同時期にドルに対して通貨を為替安へ誘導している、それを是正するため関税を課す以外に有効な方法はないと伝え、日本も中国も同じ扱いを始めてきた。
昨年11月のトランプ当選から、今後の日米関係を考えると親中の石破首相は早期に退陣すべきという国民審判は下っていたはずであったが、異例の石破首相の続投で、危惧した通りに米国は日本へも25%を上限とする高関税を課す準備を始めている。
日本側の唯一の交渉の切り札は、新首相となる安倍首相後継の高市氏のみとなる。 石破政権の予算成立を目途に3月の早い時期に自ら退陣を表明、総裁選を実施、新首相として高市氏を選び、即座にトランプと会って関税交渉を始める必要がでている。
どうやら、日本の政界やマスコミ、評論家は国益を左右するこの問題にかなり鈍感であり、今のところ4月以降も石破首相が続く可能性が高い。 このままでは4月以降の鉄鋼や自動車への高関税は避けがたいであろう。
日本製鉄のUSスチール買収も難しいと思われ、日本製鉄自身が米国で所有する既存の生産工場に高炉の新規投資をせざるを得なくなるとみている。 外務大臣による中国への長期ビザ発給の問題や高校教育無償化の維新、公明との3党合意の予算通過にともない、
所得制限なしの178万円の減税案が無視される状況となっている。 自民党はすでに有権者からかなり不評を買っており、さらにトランプ高関税による自動車やその他の産業の経済低迷のあおりで、経済不況が一気に顕在化するとも予想している。
その結果、今年7月の参議院選挙で自民、公明、維新、立憲の大惨敗は避けがたく、国民民主やれいわ、参政党、日本保守党が大きく飛躍すると予想している。
これも影響力のあるライフ・アフェクターの政治家の方々の政治人生における政策選択の結果であり、自民に限って言えば大量の議員が落選となり、衆参両院で与党から脱落、多くの議員が失職して、各々の人生の再出発のための生き方の再設計、再設定が必要になるのであろう。
以 上
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