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無観客判断は客観性を欠き地元参加のオリンピックを急遽準備せよ

令和3年7月18日

社会資本研究所

南 洋史郎

検証結果で無観客判断は無効、結論として地元中心の有観客開催をすべき

7月8日の東京都知事、オリパラ委員長、オリパラ大臣の有観客・無観客の重大な判断について、同日にその判断に大きく影響を与える新型コロナウイルス感染症対策分科会(以下「コロナ分科会」という)による東京都の緊急事態宣言の必要性に関する議論が行われ、菅首相に緊急事態宣言の必要性の提言がおこなわれた。両方の関係性はかなり高く、その結果、「安全安心のオリンピック開催のために感染者数が増えている現段階で、万全なコロナ感染対策ができず、安全安心を確保できない」ことを理由に無観客判断がなされたことになる。

そこで、その東京都の緊急事態宣言の根拠にしている客観的な数字に基づく重症化率と致死率が分析された判断資料と、7月8日の議事録をネットで探したものの見つけることが出来なかった。そこでシンクタンク時代の昔取った杵柄で、だれでもネット検証できる簡単な分析をおこなったので、結論を本報告で先に申し上げたいと思う。

〔 結 論 〕

1) オリンピックの無観客判断は、その判断に大きく影響を与えた東京都の緊急事 態宣言が、当研究所のデータ分析では、都の感染データから、ワクチン接種効果 がでて、致死率が大きく下がっており、不要という見方をしている。ところが、 分科会の緊急事態宣言に至った資料をみたが、ワクチン接種が普及した後は、感 染者数を云々しても意味がなく、一番肝心の致死率、重症化率の確率数字を見る べきであるが、それが全く欠如している。
さらに尾身会長が分科会の会長にもかかわらず、6月にオリンピックの無観客に 言及、主張するという政治的な発言がおこなわれており、分科会の審議において、 果たしてオリンピックの無観客判断を議論したのか否か、もしされたとしたら、 分科会の本来の目的と全く異なるオリンピックの無観客判断について、どこの レベルまで議論がなされ、関与していたか、7月8日の分科会の議事録が明確に なっていないため、深刻な疑念が生じている。万一、分科会で緊急事態宣言の提 言とその後のオリンピックの無観客判断についての影響を議論していたならば、 分科会が職務分掌を超え、国民の国家プロジェクトとなっているオリンピックの 無観客判断を想定して、それを誘導するために都の緊急事態宣言を恣意的におこ なったかもしれないという疑念が発生する。
この疑念を払拭するまで、コロナ分科会は、正規の審議をして東京都の緊急事 態宣言を審議したことにはならず、その提言は一旦無効の扱いとすべきである。 万一にも、これが意図的に行われたならば、コロナ分科会が、国家プロジェクト であるオリンピックに深く関与し、その無観客判断に大きく影響を与える東京 都の緊急事態宣言の発出を首相へ進言するという前代未聞の重大な越権行為を おこなったことになる。
従って、東京都の緊急事態宣言も、本当に必要かどうかも含め、政府は、速やか に新型コロナウイルス感染症対策分科会を再度、招集して、オリンピックの無観 客判断への分科会の関与がどこまで行われたかを調査するとともに東京都の緊 急事態宣言が妥当なものかどうかをもう一度再検証する必要がある。

2) 都の緊急事態宣言が、オリンピックの無観客判断に重大かつ深刻な影響を与え たが、上記1)でその判断根拠に疑念があり、再審議すべき事案となったため、本来、オリンピックの無観客判断は、国家プロジェクト的な見地から、独自で判断すべき最重要事案であり、急遽、都知事、オリパラ委員長、オリパラ大臣が集まり、有観客への転換を再検討し、首相の意見も参考に聞いて、開催都市の小池都知事の最終決断で、正式手順を経て有観客への方針転換をおこなうべきであると考える。

3) 安全安心の有観客のオリンピックを推進するため、競技場所に近い地元移動を 中心とした開催へ速やかに大会を切り換えるべきである。

4) 地元中心の開催なら、民間のプロ野球やサーカーと条件は同じであり、各オリ ンピックの競技も国内と同じ条件にしないと公平性を欠くので、国内の地元の野 球やサッカーと同じ条件で観客を入れても問題ないと考える。

5) すでに開催までの時間が限定され、観客の収容限界まで満たすことが出来ない競技場については、年齢層の中でもっとも感染リスク、致死率が低く、仮に感染しても回復がもっと早い6歳から21歳で参加を希望する地元の小中学、高校、大学生を一定均等枠で、希望校を急遽募り、各地方のオリンピック委員会の事務局が、厳選なる公正な方法で抽選にて選出し、収容人員の上限まで、各地域のオリンピック委員会の要請に応じ、観客席で競技を応援支援するボランティアとして、抽選で選ばれた各学校の生徒が競技を無償にて応援してはどうだろうか。

6) 新型コロナウイルス感染症対策分科会は、都の緊急事態宣言を再検討する場合 に感染リスク、致死率がもっとも高い高齢者のワクチン接種が急速に普及した後 の新しい感染対策のガイドライン策定を行って欲しい。従来のような客観的な分 析にもとづかない提言を回避し、必要なら外部の調査機関へ客観的なデータ分析 を要請して、つねに「病院などの医療側」、「感染された場合の患者側」、感染対 策を求められる「規制される業界側」の3者が納得できる公平なバランス感覚の ある優れた提言を首相や知事へできる体制を構築して欲しい。

本報告の反論として、客観的な根拠に基づくデータがあるなら、ぜひ拝見したいが、時間的な猶予が無いので、先に本報告の提言の「結論」に続いて、次に「無観客判断の根拠となった都の緊急事態宣言を無効と判断する理由」、最後に数日しか時間的な猶予が無い現段階における「有観客への転換手順」について意見を述べたい。

また、本報告にあたっては、どの政治団体からも資金提供を受けておらず、中立的、かつ客観的なものであることを付言する。ボランティアでの提言活動とは言え、ここまで、一所懸命に提言活動を続ける動機は、ただ一つ「オリンピックで活躍する世界中の選手の尊厳を守り、日本が開催国としてとりうる最大限の責務を全うすること」に貢献することにあり、それ以外の他意が一切無いことも付言する。

無観客判断の根拠となった都の緊急事態宣言を無効と判断する理由

7月8日の東京都知事、オリパラ委員長、オリパラ大臣の有観客・無観客の判断について、観戦者の国内移動による人流での感染拡大や7月における感染者数の増加を理由に「新型コロナウイルス感染症対策分科会」の尾身会長が菅首相へ対策を提言され、7月12日から8月22日まで発出された緊急事態宣言が一番大きな根拠となっている。

しかし、その経緯をネット検索で検証した結果、次を理由として、尾身会長がオリンピックの有観客・無観客の判断に大きく影響を及ぼした「コロナ対策のための都の緊急事態宣言への提言」は、分科会での手続きを経たものの、会長個人の主観的、恣意的な思惑が働いた可能性を否定できない状況となっている。

従って、現段階では、その個人的な意向が、どこまで7月8日のコロナ分科会の審議に影響したか、議事録が無いため判断できず、それが明らかになるまで、無効という検証結果となった。その検証結果に基づき、首相の都の緊急事態宣言のコロナ分科会の判断も、疑念を払拭した手続きを確認できない提言に基づくものであり、判断となる根拠にも大きな疑問があるため、再検討すべきであると考える。すでに緊急事態宣言は発出 されているので、限られた時間内で再度、都の緊急事態宣言を継続すべきかどうか、 その根拠は何かを再審議し、継続すべきか、中止すべきかを取り決めないといけない。

〔 無効理由 ① 〕

新型コロナウイルス感染症対策分科会の会長の職務分掌は、オリンピックの感染対 策に限定した専門家としての客観的な意見具申に限定されるが、同コロナ分科会は、 6月16日の審議では、オリンピックの観客については、意見できる立場ではないと しながらも、7月8日には、オリンピックの無観客判断に大きく影響を与える東京都 の緊急事態宣言の発出を首相へ進言している。

〔新型コロナウイルス感染症対策分科会の構成員〕
尾身地域医療機構理事長〔分科会会長〕
脇田国立感染症研究所長・石川ヘルスプランナー・石田労組連合会副事務局長・ 磯部慶應大学教授・今村駒込病院センター長・太田医療法人協会副会長・大竹阪大 教授・岡部川崎健康研究所長・押谷東北大学教授・釜萢日本医師会常任理事・河本 経団連委員会企画部会長代行・幸本東京商工会議員・小林慶応大学教授・清古全国 保健所長会副会長・舘田東邦大学教授・中山弁護士・平井鳥取県知事・南読売新聞 調査本部長・武藤東大教授(参考人)小林オフィサー・前田東京都北区保健所

〔 無効理由 ② 〕

尾身会長の分科会の会長として、職務分掌を超えた政治的な発言は、今まで、重大な懸念をはらんできた。6月16日の分科会では、オリパラに言及しないという意向を確認しているのにもかかわらず、個人見解としてオリンピックの無観客の五輪を推奨し、驚いたことにオリパラの組織委員会や政府へ五輪のリスクについて、逆に納得のいく説明を求めた「尾身提言」は、ご本人はその自覚は無いかもしれないが、6月中旬の段階で、すでにオリンピックを無観客で誘導するような中立性を欠いた、片寄った問題発言と受け取られている。
本来、中立性を保ち、客観的な資料を提出して意見具申すべき黒子としての立場に徹すべき専門家が、国民から選挙で選ばれた訳でもなく、本来、分科会では意見しないことになっているオリンピックの観客に関して、6月に無観客という政治的な発言をおこない、7月8日には、オリンピックの無観客判断に大きく影響を及ぼす都の緊急事態宣言を分科会で審議し、ワクチン普及後に重要となる重症化率、致死率の議論が無いまま、都の緊急事態宣言を首相に進言しているのである。本来、中立性を保つべき専門家集団である分科会の会長としての役割を、現時点では、はるかに超えているのではないかという疑念が生じている。

尾身会長は、今までいろいろコロナ対策で、政府や国民のためにご尽力を頂いた功 労者のお一人であり、立派なキャリアをお持ちで、国民にも広く周知されているので、 今後は、分科会の枠を超え、コロナに限らず、国民のために感染医療における政治的 な素晴らしい発言ができるお仕事につかれてご活躍される方が、良いような気がする。

      

有観客判断の根拠と有観客への転換手順について

すでにオリンピックの無観客の判断の大きな根拠となった都の緊急事態宣言は、分科会の審議内容に疑念がある以上、首相への進言については、手続き上、一旦は無効にすべきと考えている。さらに分科会の進言で、緊急事態宣言を実施した12日以降の都の感染者数も効果は無く、減るどころか逆に増え続けている。むしろ、ワクチン効果のお陰で致死率は大きく減ってきている。果たして、都民の生活を大きく犠牲にする都の緊急事態宣言が本当に必要かどうかは、再度審議すべき事案ではないかと考える。

一方、高齢者へのワクチン効果のお陰で、重症患者や死亡者は減り続けており、すでに明らかにワクチン接種効果もあり、感染者数を云々するフェーズが終わり、感染者の重症化への対応と重症化した感染者の死亡率の低減が最重要な課題になっていることが緊急事態宣言のお陰で、逆に明確になってきている。 (末添データ1参照)

つまり、緊急事態宣言は意味や効果はあまり見られず、ワクチン接種の普及により、感染者数にこだわり続けるコロナ感染対策は不要になりつつあり、しかも、今後は、入院率や重症化率、致死率が大きく低減する見込みなので、オリンピックは無観客どころか、有観客でも問題なく、むしろ観客は一杯にしても問題が一切無いとみている。

国内では、明らかな外国人差別となる外国選手のコロナ感染リスクが大きいという問題を指摘するマスコミの識者の意見はあるが、この点については、感染リスクは皆無ではないが、ほとんど気にしなくて良いレベルと考えている。

何しろ、観客席の場所と選手が競技をおこなう場所の間は、厳格に分けられており、屋内競技場でも、空気感染の対策のため、優れた換気システムが導入されており、そのような問題を心配する必要は皆無に近いと思われる。一番気を付けないといけないのは、接触感染であり、座席など必要な場所でのアルコール消毒は徹底する必要がある。

  次に有観客になれば、残り数日で、急遽、無観客決定を覆し、今からオリパラ委員会は有観客への受入準備をしないといけないが、どんなに大変でも、徹夜してでも、歓喜の心で万全の対策をとるであろう。この面は、素人のアドバイス意見は不要であり、 有観客への準備をみてみたい。むしろ、コロナのお陰で一旦、キャンセルになったチケットが直前で復活でき、その喜びは今まで以上に倍加すると肯定的にとらえればよい。今までコロナ対策の会長が問題にしていた地方から東京へやってくる観客の人流を抑えるという話は、根拠が理解できなかったが、高齢者のワクチン普及のお陰で、感染そのものを心配するより、移動中の感染対策に注意を払って、今まで通り衛生対策をすれば良いと考えている。人流を問題にするより、その移動中の感染対策が重要になるのである。

それより、ワクチン接種が済んでいないなら、政府命令で、希望すれば、チケット保有者へ優先的に集団接種会場でワクチン接種ができる体制を組めないだろうか。地方へ戻っても、東京で1回目のワクチンは接種しているからと言えば、だれも問題にしないはずだ。まさに今流行の「ワクワク、ワクチン!」の安全な効果を期待するのである。

また、残った座席は、コロナ感染リスクがもっとも低く、人流も心配しなくて良い、地元の小中学生や高校生、大学生で希望するところに抽選で「オリンピック応援支援の観客ボランティア」として子供たちに無償支給されるべきである。また、この際、参加選手の家族や親戚も応援支援の観客ボランティアとして、参加してもらっても良いのではないだろうか。

オリンピックに参加できる子供たちの輝く目を想像して欲しい。彼らが、オリピック選手の活躍の姿を目に焼き付け、一生の思い出として、それを語り継ぎ、豊かな人生を歩む姿がどんなに素晴らしいものか。

今回の無観客騒動のお陰で、オリンピック・スタジアに大勢の子供たちの純粋な思いが満ち満ちたほんとうの意味で、海外の選手や関係者への「おもてなし」になる開会式や競技をおこなえるようになるのである。まさにコロナを打ち負かした感動的なオリンピックになることは間違いない。無観客騒動は、有観客になれば、災い転じて福のような話であり、神のいたずらで、もう一度、オリンピックの意義や意味を国民皆が見直す良い機会になるのではないだろうか。

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