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自民党は総選挙でどんな国民の審判を受けるだろうか

令和3年10月13日

社会資本研究所

南 洋史郎

岸田政権の前途多難を予想させる株安と円安のスタグ不況の足音

10月4日に岸田政権が誕生してから、株安、円安が続いている。米国がインフレから、 物価上昇の中の景気低迷というスタグフレーションを心配している中、外国の投資家が岸 田政権を評価せず、日本の景気の先行きを心配し、徐々に日本から資金が逃げているので ある。今は、財政の屁理屈を述べる時期でなく、コロナで疲弊した日本経済の立て直しに 向け、必死に対策を打っていく段階というのが大方の経済評論家の主流意見となっている。

ところが、こともあろうに選挙前の大事な時期に財務省の矢野事務次官という大物幹部 が、月刊誌で新型コロナウイルスの経済対策にまつわる政策論争を「バラマキ合戦のよう な政策論」とたとえ、「定額給付金のような金をばらまいても、日本全体として死蔵され るだけ」という強烈な政治的な主張をし、物議を巻き起こしている。確かに消費につなが らない過剰な補助金の過剰な貯蓄への問題提議は理解できない主張ではない。ただ、タイ ミングがあまりに悪い。こうした国論を二分する議論は、選挙後にして欲しいと願うのが 普通だが、岸田政権で総選挙に勝てる、優勢という自信があるのだろう。自民党からそれ を否定する動きは見当たらない。

もし、高市首相が実現していたら、プライマリーバランスを気にせず、思い切った財政 出動が期待でき、日本の政治の中国の習近平政権からの脱却路線も鮮明となり、経済界も 本格的に脱中国路線へ舵を切ることになったと思う。それはまさに米国や欧州主要各国による脱中国、いや脱習近平政権の動きと呼応し、海外の投資家も好感し、日本の株式や債 券が買われ、さらに株高、円高になっていたと思う。ところが、岸田政権に対して、海外の投資家の評価が低すぎるのである。日本の政治が一昔前のような右でも左でもない、何をしたいのか理解不能なウダウダしたものへ後退していると感じているのだろう。

ガソリンはリッター160円、食料品は30%前後割高になり、安いと思い買ったら量 が少なく、飲み屋は解禁されたがスカスカ、景気が良いと実感できないのである。エネルギーや食料品の価格が上がり、物価高の景気低迷という最悪のスタグフレーション不況の 心配すらでているのである。国民は、選挙でどのような投票行動をとるかは明白である。 オリパラ開催の反対運動を展開した共産党や立憲民主党の票は伸びないが、自民党以外の中道的な改革路線の政党へ無党派層の票が逃げる可能性が高いとみられている。

財務官僚主導で政権イメージ悪化に拍車をかける岸田首相と自民党

自民党は、世論の動きに鈍感である。すでに岸田政権への支持は5割を切って、下降局 面へ向かっているのではないだろうか。新しい資本主義の主張も意味不明で、何をしたい かわからない、不可解な政権のイメージを高めただけである。首相なら、財務官僚の不適 切なバラマキ合戦の政治発言を公然と否定し、本人を呼びつけ、厳重抗議する迫力は必要 である。しかし、今のところ何も対応していない。

それでなくても財務官僚主導の政権と揶揄され、選挙戦の前に大きなマイナスイメージ がマスコミにより作られ始めている。そのマイナスイメージの傷にさらに塩を塗り込む官 僚の政治的な言論に対し、首相自らが毅然と対応することで、財務官僚へ物言う強い首相のイメージをアピールできる絶好の機会となっている。ただ、恐らく温和な首相のまま、なにもしない、いや、できないままで終わるのかもしれない。逆に予想に反し、厳重注意 をする強い首相の姿がテレビに現れたら、どうも芝居がかっているなと疑った方が良い。

各選挙区で活動を始めた自民党の議員は、そのあたりの厳しさ、危機感が高いのではな いだろうか。今回の財務官僚の発言でも、おいおい待ってくれよ、ここでネガティブ・キャンペーンをするのかよ、やめてくれというのが本音ではないだろうか。こんなことなら 菅首相の方が数段良かったという恨み節もでてくるかも知れない。政策の賛否はあるかも 知れないが、選挙の顔として「日本初の女性首相」というキャッチフレーズで選挙を戦え る高市首相だったら、どんなに楽勝の雰囲気の中で戦えただろうという自民党の議員も少なくないだろう。

逆に言えば、選挙の足を引っ張る財務官僚の発言や株安、円安の中でのガソリンや食料 品の価格上昇、緊急事態は終わったが、冬のコロナ流行への不安が続く、元気がない日本 社会、どう考えても自民党が選挙で勝てる要素は少ない。それを見越して、一部の専門家 から、現276議席から 20~30の議席は減るかも知れないが、公明党と合わせれば、 過半数の233議席は優に超え、280議席は確保できるであろうという見方がされている。ただ、衆議院465議席の2/3、310議席は難しいので、憲法改正は望めないといった意見が主流となっている。高市首相であったなら、自民単独で300議席以上は確保でき、憲法改正も視野に入っていたとする見方もある。

果たして、自民党は20~30程度の議席減でおさまるであろうか。立憲民主党や共産 党の票が伸び悩むか、減るという見方があり、日本維新の会や国民民主党の票が大きく伸 びる、いや幸福実現党など新興の政党が票を獲得するといった様々な意見がでている。 ただ、大方の評論家の意見は、自民党が今より議席数を減らすが、それでも過半数は優に 超え、政権は安定して維持されるであろうという見方が強まっている。誰も自民党が50以上の議席を減らし、過半数の233議席を割り込むとは思っていない。そのため、今の自民党の中は、選挙で政権を失うという危機感はまったく感じられないのである。

岸田政権で衆議院議員の半分の議席233を割り込む可能性はある

選挙は甘くない。今まで選挙で圧勝し続けた安倍政権が特別なのであって、自民党そのものへの批判は根強い。昨年3月から起こったコロナ・パンデミック、その後の対応につ いて厳しい批判は続いている。特に医者出身の分科会の会長が我が物顔で政権のコロナ対 策をリードしてきたが、むしろそれで国民は政治に嫌気を感じてきたというのが本音であろう。その会長にも、巨額の補助金の不正取得の嫌疑がかけられ、国民は相当に怒っているのである。

ただ、かといって立憲民主党や共産党へ投票するという選挙行動にはつながらないとみている。むしろ、規制改革をベースに中道路線を突き進む政党への支持が大きく伸びるのではないだろうか。日本維新の会が現11議席、国民民主党が現10議席から、どこまで 新たな議員を担ぎ出せるかによるが、やり方によって、両党合わせ、30議席ほど議席を 伸ばす可能性が十分にある。また、令和新選組や幸福実現党など新興の政党が20議席ほ ど確保する可能性があり、もしかするとそれ以上になるかもしれない。

まさか、そんなことは起こらないだろうと自民党の幹事長や選対委員長は思うかも知れ ないが、選挙は、常にその「まさか」が起こるのである。すでに昨年から自民党不支持が 5割以上続き、支持が3割へ激減している。半分の議席すら確保できない選挙の大惨敗も 十分に起こりうるシナリオなのである。あとは、この最大のチャンスを中道改革路線の日本維新の会や国民民主党がどこまでつかむことができるかに政局の行方はかかっている。

もしかすると岸田政権は、10月31日のハロウィンの日に令和の徳川慶喜になるかも知れない。ただ、今の自民党には、その危機感が全く感じられない。岸田政権で自民主導 の政治を楽に継続できると思っているかも知れないが、国民の静かな目に見えない怒りは、結構深刻かもしれないのである。その時に高市首相をなぜ選べなかったのかと自民の議員が悔やんでも、それは後の祭りなのである。

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