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今度のCOP26で火力発電9割CO2回収と安全原発、エンジン新駆動の3つを主張せよ

令和3年10月27日

社会資本研究所

南 洋史郎

CO2問題は火力発電9割回収・再利用と安全原発がないと解決しない

岸田首相が11月1日と2日に英国・グラスゴーで開催されるCOP26に参加する。以前よりCOPは、何かというと地球温暖化の原因のCO2の排出削減のため、風力発電や太陽光発電など再生エネルギー、再エネへの産業シフトが議題の中心となり、各国の再エネ化を促進、誘導してきた。

一方、前日の10月31日のハロウィン総選挙も岸田首相にとって心配であろう。ただ、自民党の高市人気がすごく、彼女執筆の政策パンフも好評である。5日前の勝手な予測で外れるかもしれないが、自民党はそれほど議員数を減らさないのではないだろうか。それより、野党の中で明暗が分かれ、維新のように善戦する党とオリパラ中止を主張した左翼系の政党が苦戦する気がしている。自民が善戦すれば、それは高市効果によるものである。

COPの話に戻ると、世界のCO2の排出が多い主要国の発電事情は、再エネより火力発電が中心となっている。だから、火力発電のCO2の回収や再利用を推進した方が、結果的にCO2の排出を劇的に減らすことができる。COPは、その議論を優先すべきであり、それは具体的な数字で見た方がわかりやすいので、2020年の大雑把な概数になるが、主要国の年間の発電電力量の構成は次の通りとなっている。主要国の火力発電への依存度は8割弱から9割でカナダは低いが、それでも6割強を火力に依存している。



CO2排出の世界シェアは、中国28%、米国15%、インド7%、ロシア5%、日本3.2%、カナダ1.7%、ドイツ2.1%、英国1.1%であり、電力量よりCO2の排出量の世界全体で見た比率が1%以上大きい国は、中国とインドとなっている。日本は福島の原子力発電所事故が起こる前の2010年は、原子力発電が2%でなく30%の比率だったので、CO2の排出も先進国の中でも低く優等生であった。ところが、原子力の代替えとして、石炭、石油、天然ガスの火力へ全面シフトしてから、CO2の比率が電力量の比率より若干だが0.1%大きくなっている。

CO2の排出量が大きいのは、火力発電であり、間接的なCO2排出も考慮した比率は、もっとも排出量の低い水力発電を1とすると原子力2、風力3、太陽光4に対して、天然ガス火力47、石油火力74、石炭火力94となる。そこでどの国も単純にCO2排出がもっとも大きい石炭火力発電をやめ、再生エネの比率を高める議論をしている。ところが、根源的な問題として、火力発電が燃焼から排出するCO2を9割以上回収できる技術を開発できれば、ガス火力5、石油火力7、石炭火力9まで削減でき、さらに回収率を高めれば、再エネ並みのCO2排出まで削減可能となる。

つまり、COPが地球規模のCO2問題を議論するときに取り上げるべき最重要テーマは、再エネではなく、どの国でも電力の中心的な役割を担(にな)っている火力発電のCO2回収とその回収されたCO2を様々な産業に再利用する技術を確立することである。そして、その技術を使って、CO2の再利用、カーボンリサイクル事業を採算がとれる産業へ育成、発展させることが重要課題なのである。さらに、特に日本で議論すべきテーマが、原子力発電を再び安心できる安全な電力源として活用することである。

地球温暖化の元凶といわれるCO2を世界的な規模で解決するために、再エネより火力発電の9割のCO2の回収と再利用を促進すべきなのである。さらに風力発電や太陽光発電などの再エネより、CO2排出が少なく、安全な原子力発電を推進すべきである。ただ、原子力発電は、福島の苦い経験から危険という認識が強いので、日本にて研究開発中のトリウム溶融塩を活用した安全性の高い原子力発電が実用化できれば、危険性も低く抑制できる。こうした新しい原子力発電の技術を活用した原子炉を今後増やしていけば、日本のCO2の排出量を劇的に低減することも可能になるのだ。

皇国の荒廃、今度のCOP26にあり、日本人はみな奮励努力せよ

日本にとって、エネルギーの安全保障において、最も危険なCOPの議論は、CO2を減らすために再エネを最優先する議論である。まるで、石炭火力や石油火力の発電方式が悪者のように扱われ、否定される議論が続いている。また、CO2排出ZEROの電気自動車も救世主とばかり、異常に持ち上げられ、日本の自動車産業を衰退させるようなエンジン駆動の技術規制の動きも強める傾向となっている。

もし、火力発電を否定し、再エネを優先する考え方と従来のエンジンを否定し、電気で動く自動車を優先する考え方が正しければ、文句も言わず、ひたすら追随していけば良い。しかし、この2つの大きな潮流は、明らかに間違っているのである。そこで、今度のCOP26では、会議に出席する岸田首相には、煮え切らない発言ではなく、言い切るすっきりした表現で、日本のCO2排出対策として次の3つを堂々と主張して欲しい。

1)火力発電の9割CO2回収の技術開発の促進とカーボンリサイクル産業の育成

火力発電のCO2排出の9割回収を実現する技術開発を促進し、回収されたCO2を100%再利用するカーボンリサイクル産業の育成をおこなうこと。

2)トリウム溶融塩炉を活用した安全な原子力発電の研究開発と発電所の建設推進

研究開発中のトリウム溶融塩炉を活用した安全安心な原子力発電の研究開発を促進し、トリウム原子力発電所の実験施設の建設とその結果を踏まえて、全国にトリウム原発を増やして、原子力での発電構成を3割にもっていくこと。

3)1回補充で2千キロ以上走行可能なCO2排出ZEROのハイブリッド車の開発

電気モ-ター駆動かエンジン駆動かといった手段となる技術を目的化するのではなく、1回補充(充電)すれば2千キロ以上走行可能な固体蓄電池や水素燃料電池、エンジン駆動、モーター駆動などの複合技術を融合したCO2排出ZEROのスーパーハイブリッド車を開発すること。

今度のCOP26は、岸田首相が首相になってから初の国際舞台となる。外務大臣の就任期間が戦後最長と自慢しても外務大臣と首相では、その役割と発言の重みが全く違う。 今度のCOPの集まりは、日本の産業の未来がかかっている。岸田首相には、明治の大将の心意気をもって「皇国の荒廃、今度のCOP26にあり、日本人はみな奮励努力せよ」という気概で会議に臨んで欲しい。なお、上記3つの政策のうち最後の政策は、自動車メーカーがびっくりする内容の技術開発を目標としている。マスコミから大風呂敷、業界との根回しがないといって叩かれるかも知れないが、総選挙はすでに終わっている。日本の自動車メーカーしか開発できない技術であり、能力はあり、思い切って公表して欲しい。

大袈裟に聞こえるかもしれないが、日本が、欧米の実態を無視した幼稚な議論に振り回され続け、今度のCOPで英国が主張する石炭火力発電の規制の議論が盛り上がり、国際的な取り決めになると後の祭りで取り返しのつかないことになる。それだけではない、日本のエネルギーの安全保障が大きく傷つき、基幹産業である自動車産業も大きく疲弊しかねない厳しい状況に陥るという危機感が必要なのである。「分配」と「成長」の良循環を主張してきた片方の大事な「成長」が、愚かなCOP規制のために逆に衰退しかねないリスクが強まっているのである。首相自ら日本はハイブリッドエンジンで行くと主張するだけで、欧米の愚かで、幼稚な議論が早く正常化すると予測している。

火力発電のCO2の9割回収・再利用と安全な原子力発電は可能なのか

結論から言えば、すでに技術的には9割の分離回収の技術の目途は立っている。有望な技術として、化学吸収法と物理吸収法(燃焼前)、膜分離法(燃焼前)、固体吸収法(燃焼後)深冷分離法(燃焼後)の5つの方法があり、日本の研究開発拠点として、四国電力の広島県の大崎発電所の大崎クールジェンや電源開発㈱の若松研究所(別称EAGLE)などで開発が進められている。どの方法でも、研究開発の段階ではCO2回収率9割は実現している。

特に膜分離法は有望で、25万キロワットの石炭火力発電所の燃焼前にCO2分離膜プラント(56m×24m、高さ13m)を通してCO2回収率90%以上を実現しており、回収コストもCO2のトン当たり1500円以下にする方向性はみえている。固体吸収法などの方法に比べ、コストも数分の一程度なので、有望視されている。つまり、国が資金的な支援をおこなえば、全国の石炭火力発電所にまずはCO2分離膜プラントの建設により、CO2を大きく削減できる目途がついているのである。

再利用のカーボンリサイクルの様々な技術も進んでおり、後は事業化、さらには産業化に向けた資金支援があれば、様々な新たな化学産業などを興すことが可能となっている。要は技術はみえているので、後は開発資金の金次第という段階に来ている。もともとCO2が存在しなければ、植物の光合成は存在せず、CO2は人類にとって欠かせないものである。ただ、その量が異常に増加しているという点だけが問題なのである。CO2を回収する技術や急増するCO2を有効利用できる産業を創出できるという自信と発想がないといつまでも非現実的な欧米議論に振り回され続けるのである。

次にトリウム溶融塩炉の原子力発電の技術は実に面白い。原料のトリウムそのものは、レアアースで日本以外、世界中のレアアースがとれるところで採掘可能であり、トリウムそのものは放射性がなく、危険性は少ない。発電には、ウランの核分裂が必要なため、トリウムから放射性の高いウランへ加工する必要がある。その加工プロセスで、プルトニウムを燃焼しながらウランへ転換するため、危険な放射性のプルトニウムを消費してくれる。もともと液体で反応が進むため、福島のようなメルトダウンの危険性も少なく、ウラン使用後に廃棄物として危険なプルトニウムはほとんど生成しないので、ウラン核分裂の発電でも、従来に比べ、危険な廃棄物はごく少量であり、安全性が極めて高いのである。

2千キロ以上走行可能なCO2排出0のハイブリッド車の開発は可能か

欧米はテスラをはじめとして、電気自動車がCO2排出ZEROのこれからの技術ともてはやし、ガソリン・エンジンの従来の自動車を完全否定している。そこにはCO2アレルギーのような極端なCO2の存在そのものを否定する危険な思想すら感じられる。一度、電気自動車を利用してみたら、その技術がまだまだエンジン車を凌駕できるものではないことを知るだろう。もちろん、数10秒で電池補充でき、1回の充電で千キロメートル以上も走れ、操作も簡単な技術的に完成度の高い割安な電気自動車が登場すれば、その時には一気にエンジン車から電気自動車へ市場は大きくシフトするだろう。果たして2050年までにそこまでのエンジン車を凌駕する電気自動車が登場するだろうか。現段階では、その可能性はかなり低いと考えている。

むしろ、技術開発の状況を観察すると、リッター40キロ、50リッターで2000キロメートル以上走り続けられるCO2排出もわずかで価格も安いスーパーハイブリッドのエンジン車が登場し、電気自動車を技術的に凌駕している可能性が高いと予測している。つまり、自動車のユーザーにとって、1回当たりの充電や補充で、どれだけ長く走り続けられるかが一番の関心事であり、面倒な充電、補充のステーションにはあまり立ち寄りたくないのだ。そのユーザー目線で見た時、一回立ち寄れば、数か月に1度だけの補充で済む割安なスーパーハイブリッドエンジン車、しかも電気自動車より馬力のあるエンジン車に魅了されるのは、当たり前の話なのである。

今後は、電気自動車の技術も取り入れたスーパーハイブリッドの馬力のあるエンジン駆動の自動車が主力となり、今もてはやされているテスラも技術転換できなければ、倒産の危機に直面する可能性も無いとは言えない。このスーパーハイブリッドのエンジン車の技術は、日本はずば抜けており、水素燃料電池の技術、リーンバーン、希薄燃料エンジンの技術なども融合し、電気だけの力では到底実現できないパワフルなスーパーハイブリッドのエンジンとモーターの融合駆動の技術も加味された新しい車が登場している可能性すらあると予測している。2050年には、世界の自動車駆動で日本が主役になる可能性も十分にあると考えている。

一方、現段階では、従来のガソリン・エンジンを否定し、充電電池とモーター駆動だけで動く電気自動車や水素燃料電池のFVC車がCO2排出ZEROで注目を浴びている。ただ、金額が高く、馬力も弱く、充電時間がかかり、1回の充電で走行距離が3百から4百キロメートル以下と、決して満足できる技術のレベルには到達していない。固体蓄電池の激しい技術開発が進んでおり、その技術を否定するわけではないが、電気自動車とスーパーハイブリッド自動車とを比較すると向こう20年から30年の期間において、1回補充、充電で2000キロ以上の走行を可能するのは、スーパーハイブリッドのエンジン車以外には考えにくいのである。

もし岸田首相がCOP26で電気自動車よりガソリン・エンジン車が進化し続け、今後も技術的、コスト的に優位に立ち続けると主張することで、日本の自動車産業の優位性は、今後も数十年以上保持し、さらなる技術優位性を確立し続けることができると考えている。日本の首相なら、日本の産業において、日本による技術で、日本の繁栄のために自動車産業を勇気づける機転の利いた政策目標をアナウンスするぐらいの度胸は欲しいのである。そうなれば、地元の広島の自動車メーカーも活気づき、元気になるのではないだろうか。

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