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衆院選は終わった次は憲法9条改正だ

令和3年11月1日

社会資本研究所

南 洋史郎

衆院選は終わったが第3政党に躍進した維新の存在が気がかりである

10月31日のハロウィン総選挙は、改憲3政党の自民261、公明32、維新41の議席となり、憲法9条改正の発議となる310を軽く超え334となった。自民は40近く議席を落とすと言われていた。しかし、9月の総裁選から「国を守って欲しい」という国民の切実な思いを組み、高市政調会長が戦い、自身執筆の秀逸な内容の政策パンフのお陰で、国民人気が無い首相でも、わずか15議席減にとどめることができたのである。

その証拠に大阪は、公明と維新が組み、アンチ共産を旗印に勝利し、共産と組んだ立民が負けた。その他の地域も、共産と立民は共闘を組み、自民、公明、維新に負けて議席を落とした。大阪だけ自民は有力議員であっても維新に勝てず、もしかすると大阪だけ公明は自民でなく、維新と組んで選挙戦を戦ったかも知れないと疑われている。つまり、維新が怖く、公明ですら、真っ向勝負せず、自民へ協力をするふりして、何もしなかったのではないかという疑念が出ているのである。昨年10月に共産と組み都構想に反対した自民府議連への失望票もあったのではないだろうか。

これで、共産と組んだ政党はことごとく駄目という新たなジンクスが生まれ、政界の貧乏神という神話も生まれそうである。実際、今年5月までテレビのマスコミやSNSなどを活用したオリパラの反対活動や無観客運動は一部の国民に不評で不人気の原因ともなっていた。共産が裏で糸を引いていると感じた国民の静かな怒りをかったのかもしれない。

今後は、自民党本部と自民府議連、自民市議連が喧嘩せず、強い連携を組み、イメージチェンジをはかり、自民の府議連や市議連が本部と政策一体感を演出し、アピールする地道な選挙活動を始めないと次回の参議院でも大敗するであろう。過去振り返ると、自民本部から大阪へやってくる議員にも問題があった。特に都構想では、府議連や市議連に上から目線で偉そうにものを言う東京の議員の存在も、大阪自民は不甲斐ないという悪い印象だけを植え付けてしまった。今後、自民は猛省し、大阪で相当に頑張らないと参院選でも維新に惨敗するであろう。結構、甘い政党や議員に厳しい評価をする土地柄でもある。

大阪は維新で経済は衰退し、目に見えない中国の自治化が進んでいる

 

維新の一番の弱点は、過去10年以上、大阪や関西の経済が全く良くなっていない、というか、むしろ本社を東京にどんどん移され、地方都市の一つになり下がり、地盤沈下を続けている点にある。さらに中国のフロント企業にビルや商業地を買い占められ、大阪が中国の自治都市になりかけている厳しい現実がある。シャープは台湾企業になり、パナソニックの中国へのコミットメントは変わっていない。サンヨーは中国企業へ売却された。京都の有名な電子部品企業は、輸出の半分を中国に依存している。中国との取引に依存する割合が増え、恒大など中国のバブル崩壊の影響が大きいのが大阪と考えられている。実は、経済安全保障をもっとも脅かされ続けてきたのが大阪なのである。

企業の経営者だけを責める訳にいかない。過去10年以上、衰退する一方の大阪経済で、地獄のような国内市場をあきらめ、生き残りをかけ、大阪の企業は、中国の甘くて怖い経済の罠に次々と陥(おちい)ってきたのである。その間、維新の市政や府政は、都構想を叫ぶだけで、苦しむ大阪の企業のために何か有効な経済政策をとってきたかと言えば、答えはNOである。むしろリストラや合理化、民営化には熱心だが、地下鉄の民営化など評価できる点はあるが、経済は落ち込む一方であった。

大阪の知事も市長も、万博を全く盛り上げる気配が感じられない。50年前の大阪万博の頃を思い出すが、道路やモノレールなど次々と新しいインフラ工事が促進され、万博ニューディールの様相があった。今は万博を契機に大阪の都市機能が強化されるワクワクする計画は聞かない。都市計画やインフラ工事がどうなるのか、大方の府民や市民は知らされていない。とにかく、大阪経済がどうすれば成長するのか、所得が上昇するのかという道筋、戦略が全く見えないのである。

それに輪をかけ、維新が中心になって、万博と連動して、IR統合リゾート誘致を進めている。その中核となるカジノでは、海外、特に米国や中国から怖い人たちが大阪に大挙して押し寄せ、マフィアのフロント企業が暗躍する暗黒都市にならないかという懸念が強くなっている。もちろん、完全否定されるだろうが、マフィアのフロント企業は、表向き普通の企業を装っているので、外からではわからない。疑念はいつまでも払しょくできず、気持ち悪い状態のままであろう。

     

維新は本当に国政を任せられる政党だろうか、大阪では警戒論が強い

     

大阪府知事選と大阪市長選は1年半後の令和5年4月に行われる。それは万博の取り組みがちゃんとされているかどうか、維新の政治が大阪できっちりと問われる選挙になる。さらに来年の7月の参院選も維新が公明の協力なしに勝てる保証は無い。今回の選挙で維新がなぜ躍進できたか、それは都構想惨敗の猛省に立って、政党の強烈な個性を消し、過激な主張を隠し、古い年寄りの政治家の立候補者が多い自民党に対抗し、40歳代以下の若いやる気のある政治家を候補者として擁立してきたからである。

表向きは、いかにも自民の政策に寄り添う振りをしながら、「オールド自民」に対する「ニューヤング自民もどき」のイメージを作り上げ、悪の強さを消し、過激さの少ない、さわやかイメージの保守を売りにしてきたことが功を奏したのである。政党イメージだけ自民のイメージ・コバンザメ作戦をとったことが勝因と思われる。ただ、維新が主張する政策は、自民の政策とは全くかけ離れた過激なものとなっている。

9月に自民の小石河連合が有名となり、河野総裁候補の脱原発や全額税方式による最低保障年金の発言は、維新の考え方に近いと松井代表は述べている。2つとも自民党の衆院選の公約とは全く異なる内容である。維新は改憲政党を主張しているが、その中身は自民党とは全く異なるものである。維新は「教育無償化」「統治機構改革」「憲法裁判所の設置」など安全保障の9条以外の改憲に熱心であり、国防の観点からの9条改憲への姿勢がどうなるかは全く読めないのである。

教育無償化は北欧のような準社会主義の国なら可能であろう。日本では、財源が読めず、財務省が了解するとは考えにくい。個人的には賛成だが、実現は難しいのではないだろうか。統治機構改革は、具体的には日本に道州制を導入する話で、日本を自治化したい中国にとっては好都合な政策だが、今の安全保障の厳しい環境では難しいだろう。憲法裁判所の設置も道州制では必要になるが、今の日本には必要ない。どれも今の日本では、非現実的な憲法修正案であり、受け入れにくいと考える人が多いのではないだろうか。

こうした過激な政策を隠すため、徹底したさわやか保守のイメージを打ち出してきた。例えば、毒舌で有名な党幹部の足立議員は、選挙区を変え、若さ、毒気の無いさわやか個性の保守の維新の政党イメージだけを前面に押し出したので、勝利できたのではないかとみている。郊外の田舎では、高齢の維新の党員にスーパーの駐車場の入り口に一日中張り付かせ、維新の看板だけを無言でもたせる効果的な賢いアピールもしていた。昔の毒気たっぷりの国会答弁をユーチューブで見た人は、ガラが悪いので維新に票を入れたくないが、対抗馬の自民候補も高齢で魅力が少なく、どっちも入れにくいと愚痴っていた。

なお、昨年10月の都構想では、維新にとっては2つの大きな敗因があった。一つは、れいわ新選組の山本代表に維新の過去10年における大阪経済が成長していない事実を徹底的に糾弾され、都構想の政策矛盾、大阪市の財政資金を大阪府に吸い上げられる問題点を指摘されたことである。つまり、維新は大阪が経済で衰退してきた事実を指摘されるネガティブ・キャンペーン、ネガキャンに弱いのである。

もう一つは、自民府議連と共産府議連によるマドンナ作戦である。清楚な高学歴のインテリ女性の代表議員が活躍し、失礼ながら見かけが怖い松井代表と対局をなし、イメージ戦略で完敗したのである。大阪のおばちゃんが有名で人気があるように勘違いされるが、日常生活が夫婦漫才のような飾らない生活の中で、意外と芦屋や宝塚の上品な清楚なイメージの御婦人にはものすごく憧れ、そうした女性候補には滅茶弱いのである。維新の吉村知事も、芦屋の男前イメージがあり、維新のブランドイメージの向上に一役買ってきた。ただ、発言内容を聞くと結構過激である。美男美女に弱い有権者という構図は、大阪に限ってのことではないかも知れない。昔は維新の候補も怖そうな人が多く、バタ臭かったが、最近はさわやかルックスの若い候補が増え、このようなオジン臭くない候補を選定して選挙を展開してきたことも勝因となったのであろう。

    

ネガキャンに弱い維新は果たして自民の9条改憲に賛成するだろうか

 

以上の分析より、今回の衆院選では、近畿、大阪では、維新が勝利したのではなく、自民が維新の巧妙なイメージ作戦に完敗したと結論付けることが出来る。もっと自民、特に自民大阪府連が維新の政策との違いを明確にし、都構想のれいわ新選組のようにネガキャン中心の選挙戦をおこなっていたら、かなり善戦したのではないだろうか。大阪人の多くは、今の中国の動き、横暴には、相当に腹を立てている。ネガキャンで維新による大阪での中国人投資に対する無策ぶりやカジノ誘致への異常な入れ込みぶりを訴求すれば、全く違った選挙結果になっていたのではないかと考えている。

逆に言えば、次回の参院選は、維新をネガキャンで攻めまくり、自民も慎重に優秀な若い候補を選別し、ニュー自民のイメージ戦略に切り替え、岸田首相と高市政調会長の政策実行の実績を引っ提げて戦えば、かなり勝利できる可能性は高い。何が維新のネガキャンのテーマになるか、それは橋下氏の言動をみてもわかるが、意外と維新が親中でリベラルな左翼ではないかという疑念である。もし自民の9条改憲に乗るようなふりをして、結局、改憲に乗らなければ、その時点で維新が保守ではなく、実はリベラル色が強い政党とわかってしまう。9条改憲への維新の取り組みが、ある意味で踏み絵になるのである。

すでに国民の6割以上が、中国の脅威に対し9条改憲を望んでいるというアンケートの結果がある。つまり、時代が変わって、憲法9条の改憲は不可避となっており、それに公明は及び腰である。もし維新も非協力的なら、この2つの政党とも保守、改憲を訴求しながら、国民へ嘘をついていたことになる。それを明白にするため、来年1月からの普通国会では、改憲発議、自民の改憲案をテーマに論争を繰り広げ、公明と維新という大阪起源の第3、第4の2大政党が、果たして日本を中国や北朝鮮の武力脅威から国民を守る気が本当にあるかどうかを探ることができるのである。

令和4年1月の普通国会は憲法9条改正の踏み絵国会にすべきである

以上の予測から、令和4年1月の普通国会は、自民が9条改憲を発議すれば、憲法9条改正の踏み絵国会となる。そして国会論戦で結局、自民しか9条を改憲する気が無いとわかった時、国民の怒りはネットを中心として、かなりのものになることは間違いない。その事実が明白になるだけでも、大変な収穫なのである。なんだ、大阪オリジンの2党は結局、根性なしのあかんたれの駄目な連中だなと烙印を押してもらえれば、来年以降の地方選挙や参院選は自民圧勝の連続であろう。

また、自民党はいつでもその時の世間の空気を読んで、衆議院を解散できるので、公明との与党の提携解消を決断、維新も敵対勢力と位置付け、自民が強い姿勢で9条改憲の是非を問う解散選挙で臨めば、自民単独で310議席以上をとる圧勝も視野に入ってくるのである。今後の政局は、公明、維新という2つの大阪起源の政党が、憲法9条の改憲試験を通じ、本当に国防を強化する気があるのかどうかが問われる踏み絵国会になるのである。

すでに自民は選挙前の9月初旬の総裁選から2か月、国を守るための経済安全保障や国主導で財政投融資を拡大、経済成長を促す新しい資本主義を唱えながら、強力に選挙活動を展開してきたお陰で、国民の本当の民意を知ることができた。それは高市人気でもわかる通り、コロナで日本人が覚醒し、今や国民の多くが、あらゆる外敵から国を守る意識モードにスイッチが入っている変化を知ることができたことである。そのため国を守る政策を全面的に提唱し、行動力のある実績政党しか評価しない潮流になってきたことである。その証拠に9月の総裁選で活躍した高市政調会長の衆議院議員選挙での応援演説の人気はものすごく、その様子を撮ったユーチューブ放映は、どれも数万から10万近くとまるで安倍首相の再来のような人気であった。

次の参議院選挙は、来年7月下旬、約8か月後に行われる。それまでに自民党は政策パンフに記載した政策の中で、何より優先されるべき3つの公約、第一は憲法9条の改正、第二は成長のための投資と所得の向上、第三は経済安全保障のいずれも国民から評価される実績を築かなければ、今度は全国規模で逆に維新に大敗するであろう。政策で人気を博し選挙に勝った政党は、その政策の実行度で国民評価が決まるのである。以上の選挙結果の分析から、その中でも最優先すべき課題テーマが、憲法9条改正になることは理解してもらえると思う。

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