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オミクロン対策は経済と両立する地域医療支援を優先せよ

令和4年1月8日

社会資本研究所

南 洋史郎

北京冬季オリパラ開催前にコロナ対策で日本選手の安全確認が必要不可欠

昨年までの2年間の新型コロナ対策は、コロナ感染対策分科会が感染症2類から5類への分類に難色を示し、行動規制を中心に度重なる4回もの緊急事態宣言を発出、延長してきた。その結果、当然ながら、日本経済は大きく疲弊、減速したが、それで優れた対策が講じられたなら納得できるが、宣言の発出、延長の効果について有効な検証がされてきたとは言い難い。オミクロン株の感染速度は、デルタ株と比べても短期間で広範囲に広まると言われ、昨年11月に南アフリカからWHOに報告されてから、わずか2カ月で世界的な流行となっている。すでに77か国で感染が報告されている。

今年2月に北京で冬季オリンピックが開催されるが、外交ボイコット云々の前に各国の参加選手が、北京でオミクロンやデルタなどの新型コロナに感染しないか、感染した後の治療対策は万全なのか、検疫体制はどのように準備されるのか、中国は日本と違って有観客にすると主張されているが、観客の防疫検査体制はどうするのかといった様々な疑問、諸問題に中国共産党が信頼できる回答や対応をされるとは考えにくい。そこで、事前にしっかりと現地調査か委員会本部の関係者と打ち合わせをおこなう必要があり、恐らく既にその分野に詳しい専門家が実態調査含めて万全の派遣体制を準備されていると推察するが、改善すべき点があれば、早めにオリパラ委員会と中国当局へ指摘をすべきではないかと考える。感染確率が高い食堂や娯楽室などへの出入りにおける検温やアルコール消毒、マスク着用の有無など日本では当然の対策がとられない可能性も危惧される。

主張が強い特殊な国柄なので、改善提案を素直に聞いてもらえないケースも想定される。万一、現地で日本選手がコロナに罹患した場合、日本で特例認可された経口薬などを持参、その他の医療対策の準備も含め、コロナ対策に詳しいドクターも一緒に渡航する必要もあるのではないかと懸念している。また、東京オリンピックは、無観客でないと駄目と判断されたコロナ感染対策分科会が、あくまで政府の専門機関の参考意見として、北京へ選手団を送り込む場合にコロナ対策面の問題点や感染対策に不安があるなら、日本選手に対する現地の防疫体制をどうすべきか、そもそも選手を派遣しても大丈夫なのかといったことについて、政府関係者へ進言すべきと考える。今回のオリンピック開催の責任は、オリパラ委員会にあり、北京開催にあたって、アスリートファーストの観点から、日本選手団のコロナ対策の安全性を確保し、安心できる日本独自の体制づくりも必要になるかもしれない。すでに用意周到に準備されていることばかりと思うが、今一度、慎重な対応が求められる気がする。

昨年12月にウイグル非難決議を自民党の茂木幹事長がストップをかけたが、その後、ネットメディアから岸田内閣に対して痛烈な批判が巻き起こった。確かに外交ボイコットや非難決議の表明は、英米の動きと呼応して、日本のスタンスを明確にでき、国際的な受けは良いかも知れない。ところが、北京の冬季オリパラを直前に控え、中国共産党の習近平主席からすれば、今までおとなしいとなめ切っていた日本が、急に高飛車な態度をとったと感じて反発、2月に訪問する日本選手団に対し、露骨な嫌がらせや報復処置を講じる可能性が懸念されるのである。

勝手な見方であるが、岸田政権になり、強かな自民党の先生方が、そうした懸念を払しょくするため、互いに連携して組織ぐるみでいろいろな役回りを演じられているのではないかとみている。中国への強硬路線を印象付ける安倍元首相による「台湾有事は日本有事」という頼もしい発言があったかと思えば、岸田首相は、外交ボイコットとは名ばかりで、橋本オリパラ委員会会長やJOC山下会長という政治家ではないが、日本のスポーツ界の大物を2人も派遣することを決めた。冬季オリパラ前に中国とは波風を立てず、なるべく刺激をしないように硬軟を織り交ぜた二正面作戦をとったのではないかと推察している。もしそうなら、岸田政権は、党内最大派閥のトップも巻き込んだキシダチーム、岸田組ともよべる個人プレーより組織プレーを重視した自民党オールキャストの政権運営、自民劇場を始めたのではないかとみている。

致死率が低いオミクロン株の感染拡大は大丈夫という油断は禁物である

とにかくオミクロンの感染伝播のスピードは従来と比べて速い。米国では、クリスマス休暇の影響もあり、1月3日の日当たり感染者数が今までで最も多い百万人を超え、それまでの直近の調査より95%がオミクロン株と推計される。1月6日のJH大学の調査報告では、累計の感染者数、死者数、致死率は、概数で米国が58百万人、80万人、1.4%、英国が14百万人、15万人、1.08%、日本が1.7百万人、2万人、1.06%となっている。デルタ株流行の時期に比べ、致死率は大きく減少しているものの、感染症5類のインフルエンザの致死率の0.1%と比べ、10倍程度高く、新型コロナの致死率は依然として高いといえる。高齢者に限って言えば、コロナの致死率はさらに高まる。ワクチンの普及や検査体制の向上のお陰で、英米ではオミクロン流行で致死率が下がったとはいえ、致死率の水準は高いままで、なめてかかるとえらい目にあうことになる。

今まで英米と比べ、日本だけが10月から12月まで感染者数が極端に少なかったのは、ワクチン接種率が全人口の8割で空港の入国検疫が厳重だからという分析もあるが、英米共にワクチン接種率が7割を超え、検疫体制も厳しく、なぜ日本だけが人口比で感染者数が1桁以上も低いのか、ファクターXといわれる日本人特有の免疫体質が要因ではないかと推測する専門家もいる。個人的な意見として、そうした要因もあるとは思うが、厳格なマスク着用やアルコール消毒、検温など日本人の律義な防疫、衛生への意識の高さが感染防止にかなり寄与しているのではないかと考えている。

とにかく電車に乗り、街中を歩いてみると、ほぼ全員がマスク姿であり、マスクをしないと周囲から無言の非難圧力を感じるほど日本は防疫意識が高い国ではないかと思う。米国のCDC疾病センターの発表では、感染から発症までの潜伏期間が、デルタ株の4日平均に比べ、3日平均と短いが、軽い風邪程度と勘違いをして、感染を広げる結果をまねくようである。日本に駐留する米軍関係者との接触から、オミクロン感染者が急増している現状を考えると日本だけが例外と考えるのは危険である。いつ何時、急に感染爆発をするかは予断を許さない状況となっており、油断は禁物である。

オミクロン株に有効なワクチン接種の準備体制は万全と言えるのか

NHKのネットナビ情報では、オミクロン株に対するワクチン効果、すなわち中和抗体がどれだけ免疫力維持に有効かを北里大学の実験研究チームが調査したところ、ファイザー製やモデルナ製を2回接種した場合、3ヵ月が経過した時点で、両方ともデルタ株に比べて中和抗体の効き目が7割から8割程度も減少するという結果がでている。ただ、血液採取のサンプル数が少なすぎ、人によって抗体量が少なくても免疫力を維持できることがあるため、一概には断定できない。

その他のネット情報だと英国健康安全保障局(UKHSA)が15万人のデルタ患者と7万人のオミクロン患者の解析から、アストラゼネカ製・ファイザー製・モデルナ製のワクチンの中和抗体の持続効果を報告していた。2回接種だけの場合、どのワクチンも接種後20週、5か月が経過すると、オミクロン株に対する抗体効果はゼロ近くになるらしい。3回接種では、ファイザー製を2回接種した場合、3回目もファイザー製だと2.5か月が経過すると5割弱しかオミクロン株への抗体効果が持続せず、3回目をモデルナ製(武田薬品)にすると2か月過ぎてもオミクロン株に対し7割強に抗体効果が持続したとも報告されている。

こうした報告が、日本でもしっかりとされるべきであるが、国民の8割がワクチンを2回接種した後の中和抗体の時系列的な残存有効性の調査を国、厚労省が主導したデータを見つけることはできなかった。医薬メーカーのデータや個々の病院や大学の自発的な調査に任せたままとは思わないし、英国と異なり、日本ではデルタ株やオミクロン株の抗体血液検査がしにくいという事情もあるかも知れない。しかし、政府、厚労省の感染対策分科会の専門チームがこうした調査を主導し実施しなければ、今後の感染対策の核となる様々なワクチンの接種効果から最適な組み合わせを選択する判断材料の科学的なデータが何も無いという問題が発生する。

もしそうなら、早急に大学病院などと連携し、様々な年齢層や性別にわけた数千から数万レベルのサンプル調査、それが難しければ、数百レベルの調査でも良いので、血液検査による中和抗体のデータを集め、現在の中和抗体の残存有効性を調べて、政府、厚労省へ提言し、3回目のワクチンのブースター接種を実施すべきであると考える。そうでないと3回目のワクチンのメーカー毎の中和抗体の持続効果がまったくわからず、今後、4回、5回、6回とワクチン接種の回数を増やして、接種を継続する中、どのようなワクチンの組み合わせが最適なのかといった判断も正しくできないことになる。また、今後、承認が期待される国産ワクチンの接種後の中和抗体の有効性も過去からの時系列的な検査情報がなければ、自治体や国民の目線で有効なワクチン選択の情報が何も入手できないという問題も発生する。

ワクチンの副作用については、厚労省の見解では致死に至る事例は皆無となっている。一方、ワクチンのために大事な親族を失ったと訴える方もおられる。残された家族の気持ちに寄り添い、第三者機関が副作用の深刻なクレームを綿密に調査したという話は聞かない。もちろん、こうした調査は、利害が反する厚労省ではできない。自治体を管轄する総務省など別の省庁から委託を受けたところが調査をすべき事案と思われる。調査の結果、明確な因果関係がわからなくても、ワクチンを差し控えるべきハイリスクな人は容易に知ることができるので、ワクチンの信頼性をより高めることができると考える。

注射後の腕の腫れや痛み、倦怠感などは多くの国民が感じている副作用であり、中和抗体を調べる中で血液検査と副作用との相関関係も分析することで、深刻な副作用が起こりやすい人を特定することも可能になると考えている。また、稀ではあるが、2回接種でも中和抗体ができにくい人もおられる。その場合、血液や体質との相関関係を分析することで、どのようなワクチンであれば有効か、あるいはワクチンは無理なのかも、調査データからある程度は判断できるのではないかとみている。

ワクチン接種だけは、様々な視点から少しでも多くの中和抗体に関するデータを集め、その分析から相関関係を割り出す地道な努力が必要となっている。コロナ感染対策分科会の役割とは、本来、こうした政策判断に寄与する重要な医療データを集め、その結果をもとに政府や厚労省に対して、どうすべきか、専門家としての知見や意見を説明することにある。自分たちの意見が、政府に受け入れられず、気に食わないと勝手にメディアへ政府見解と異なる内容を公表することは、本来の職務を超えた許されない越権行為となるので注意が必要である。

日本では、3回目をファイザー製かモデルナ製、アストラゼネカ製のいずれかの接種を選択する自治体が増えるとみられている。モデルナ製だと武田薬品経由という安心感も選択に影響すると考えられているが、5千万回分の契約しかされておらず、不足分はファイザー製やアストラゼネカ製で充当することになる。ただ、今の英米のワクチン接種体制では、季節にかかわらず、年2回から3回のワクチン接種が必要となる可能性がでている。いつまでも、英米のワクチンに依存する訳にいかず、国産ワクチンの早期導入が待ち望まれている。

国産ワクチンは、塩野義、第一三共、KMバイオロジクスの3社が有望と聞く。塩野義製薬は、ウイルスのタンパク(抗原)の遺伝子組み換えワクチンで先行している。最終の4臨床試験のうちブースター接種試験を含め2試験を終了、3つ目は12月下旬からベトナムで開始、最後の中和抗体比較試験も1月中に開始予定となっている。認可承認を前提とした3千万人分の生産体制も準備中である。第一三共は、mRNA技術を使い、体内にあるウイルスのタンパク質の抗原を合成する技術を活用してワクチンをつくる。1月にブースター接種治験を始める予定である。KMバイオロジクスは、昨年10月に不活性ウイルスの人体投与によるワクチン最終試験を開始した。勝手な予想だが、塩野義製薬は、3回目のワクチン接種の参入を目指し、3月か4月までに国産最初の認可を得るのではないかと思う。

オミクロンなどに有効な経口薬を投与する治療は診療所で十分に対応可能

昨年12月24日(米国承認12月23日)に厚労省は、軽症から中等症の新型コロナウイルスの感染症患者に対して、国内初の経口抗ウイルス薬として米メルク(MSD)の「ラゲブリオ」(モルヌピラビル)を特例承認した。オミクロン株に対して、これまでの変異株と同じような効果が期待でき、ウイルスのゲノム変異を促して複製を阻害、増殖を抑制する経口薬となっている。ただし、妊婦への使用は不可となっている。1回800mg(4カプセル)を1日2回、5日間の経口投与で治療する薬であり、診療所やクリニックの処方、指定薬局で入手し服用できるようになった。すでに厚労省にて160万治療コース分(1400億円相当)が確保され、配布が始まっている。

同じように増殖を抑制する薬として、レムデシビルがある。過剰な免疫反応や炎症を抑えるバリシチニブは、オミクロンの治療にも、ある程度は効果が期待されている。中和抗体薬のソトロビマブもオミクロンに有効といわれている。これらの薬は、新型コロナ向けとして認可はされていないが、診療所でみてもらって、医者から処方してもらえれば服用できるものとなっている。風邪の症状になったら、かかりつけの医者に診てもらって、疑わしい場合は、PCR検査などを実施、デルタやオミクロン、それ以外の変異株かを特定し、その上で医者の判断により最善の経口薬などの処方をしてもらえるようになった。

症状が軽微なら通常の風邪薬で静養して治癒する場合もある。一般的に新型コロナの8割は無症状を含めて軽症ですみ、その中の2割が中等症で、さらに5%か10%が重度になると言われている。オミクロンだと病院へかかる比率がさらにぐっと低くなるとも推測されているが、データが少ないので注意が必要である。要は多くの場合、風邪レベルで重症化する比率は低いが、重症化すると死亡するケースがでてくるので、診療所で重症化しそうな患者を判断してから、専門病院と連携して早めに対処すれば、大きな病院でICUなどの重症患者用の病床が不足する確率も低減できるのではないかとみている。つまり、診療所、クリニックが防波堤となって医療崩壊を防ぐ医療体制をうまく構築できるのである。

今後オミクロン感染が急増した場合、緊急事態宣言や行動規制は必要か

すでに昨年12月に厚労省から「新型コロナウイルス感染症の診療の手引き」第6版が発行された。そこには、日本の地域医療をになう全国の診療所、クリニックの役割がしっかりと定義されている。他の病気のように各自治体の医療体制の実情を踏まえ、末端の地域医療を統括する各都道府県の医師会と自治体の組長が、どうすべきかをまずは検討し、その上で政府へ支援を求めるという自治体主導の末端医療重視の医療体制を推進する方針も明確にしている。

今後は、まん延防止や緊急事態宣言は、自治体と地域の医師会が相談し、各地域の実情にあった方法で政府へ要望するようになるとみている。地域の医師会は、さらに様々な組織ルートを通じ、末端医療を担っている診療所やクリニック、地域の総合病院などの意見を吸い上げる必要があり、その中でどうすれば、オミクロンへの効果的な対応がとれるかを模索するようになるだろう。

一つ確かなことは、やたら行動規制を強いる緊急事態宣言を安易に発出する従来のようなやり方ではなく、各地域の実情に応じて検疫体制の整備、すなわち抗原検査や3回目のワクチン接種を推進する中、それらの証明書を活用して、経済活動をとめないことを優先する自治体が増えるのではないかということである。地域住民へやたら行動規制を強いる今までの緊急事態宣言は、総じて不評であった。それゆえ、安易にそうした宣言を避け、地域住民に喜ばれる実効性のある感染対策を検討した時に、それは結局のところ、地域のクリニックや診療所によるきめの細かな医療サービス支援の良し悪しにかかっており、感染された個人や家族に対して、診察時間を変えて往診するなどどこまできめの細かな対応ができるかにかかっている。

その末端医療のサービスを充実、支援するために薬の配給や3回目のワクチン供給を推進するなど地域医療をしっかり支える自治体が、住民から高い評価を得ることができるのである。さらに認可された経口薬が円滑に服用できるようになると、軽症の場合、自宅療養や通院対応で済むケースもでてくるので、余程のことが無い限り、行動規制まで考える必要はなくなるのではないかと考えている。

従来は、政府のコロナ感染対策分科会が中心となり、緊急事態宣言の方針を政府が決めてきた。今後は、各自治体の長と政府関係者が、各自治体の医師会の責任者の意見も踏まえて判断することになるとみている。政府の分科会は、あくまで専門家としての意見を政府へ提言するだけの本来の役割に徹してもらい、その中で、政策判断のもとになる中和抗体などの調査データを地道に集めるなどの裏方的な役割に徹すべきではないかと考えている。

また、末端の医療機関と連携して、地域を管轄する保健所が感染情報をリアルタイムで入手し、自治体や厚労省へ報告、連絡、相談できる体制がとれれば、医療崩壊も起こらないとみている。今後はワクチン普及と同時に経口薬が処方できるようになり、診療所、クリニックが現場対応するので、感染症の分類も結核のような隔離対象の2類ではなく、インフルエンザ並みの5類へ変更しても、大きな問題、支障にはならないと考えている。

なお、小規模の飲食店や宿泊施設などは、緊急事態宣言のお陰で、助成金を受けやすく、特別な支援金受給の恩恵を受けて、資金繰りも楽になったところも多かった。ところが、緊急事態宣言での行動規制が無くなった場合、お店を利用していた客が、自己規制を強め、店を利用しなくなるケースも増えることが懸念される。その結果、業績が悪化する場合の対策をどうするかについては、業績低迷に対応した助成制度を今よりもさらに拡充する必要がでてくるであろう。利用状況や事業規模に応じて、大企業なら減税などの政府支援を受けられる公平な制度も導入する必要がある。今後、新たに発生する可能性のある未知のウイルスへの対策も含め、きめの細かな経済支援策が政府に求められているのである。

オミクロン対策は感染症の2類や5類を超える6類のような新制度が必要

新型コロナの患者のうち、その1割から2割が、中等症や重症に罹患する感染症の医療負担については、従来は感染症2類に分類してもらったお陰で、医療負担は、ほとんど無償に近かった。ところが、感染症5類に区分されると個人の費用負担がかなり増えることが懸念される。また、処方される薬の負担も結構大きいものがある。今回の新型コロナのように、短期間で次々と新たな変異株があらわれ、なかなか終息せず、ワクチンや経口薬も新たな変異株に合わせ、臨機応変に開発、準備する必要のある感染症は、1類から5類のどの分野に当てはめてもうまく機能しない。

感染症の中でも、新型コロナウイルスは、5類のインフルエンザのようにウイルスの中のRNAが複製を繰り返して増殖する際に変異をしやすい。しかし、インフルエンザが冬の寒い時期だけに流行するため、流行する前の晩秋に年一回ワクチン接種をすれば良いのに対し、新型コロナウイルス(COVID-19)は、暑い夏でも寒い冬でも、一年中、増殖し続ける性質をもっており、ワクチン接種も年に2回、3回と打ち続け、一定量の中和抗体を体内で保持し続ける必要がある。季節を問わず、常に変化をし続け、様々な変異株となって短期間で増殖して終息する性質ももっている。

そのため、5類ではなく、新たな分類による感染対策が必要になっている。これから登場する未知の変異種に有効となる医薬品もあれば、無効となる医薬品もあり、その変化が大きい場合は、ワクチンですら効き目が無くなる可能性もでている。いずれにせよ、ウイズコロナ(With Corona)も、従来とは異なる考え方で、次々と変化するコロナウイルスと共存し変化をし続ける医療体制を構築、整備することが必要となっている。

例えば、感染症6類といったカテゴリーを新たにもうけた場合、中等症や重症で入院する際は、2類と同じ扱いで無償治療を受けられるようにする配慮が必要となる。軽症の場合でも、保険の特別適用により、少ない自己負担で一般と変わらない医療サービスを受けられるようにする配慮も必要となってくる。また、ワクチン接種やPCRなどの抗原検査は、その頻度が高くならざるを得ず、無償にしないと個人の医療負担が相当にかさむことも懸念される。そのため、資金面の制約から、検査や防疫に消極的となり、それが感染をさらに広げる要因にもなる可能性がでてきている。そこで、国がそうした費用を全額負担し続けることを覚悟せざるを得ないのである。

まずは1月から始まる通常国会では、この新たな6類への制度導入だけでなく、今後も予想される様々な未知の感染症への対策について、保健所の役割の抜本的な見直しも含め、自民党の政調会長を中心に新たな法案、これを感染症総合対策法案と形容すれば、その策定、審議を早急におこなう必要性がでてきていると思う。

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