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近い将来に参政党が与党自民党の脅威となる日が来る

令和4年7月25日

社会資本研究所

南 洋史郎

投票2日前の安倍首相暗殺の悲報で自民党に多くの同情票が集まった

2022年7月8日は、日本の政治史に残る悲しい日となった。 安倍元首相が暴漢の手製銃による暗殺で命を落としたのである。 日本の政治、いや世界の政治にとって大きなマイナスとなるショッキングな出来事であった。 海外でもその悲報は取り上げられ、G7や先進国、インド、南米など多くの国で半旗の弔意を受けることになった。 新聞やTVなど左翼的なマスコミの偏った報道には違和感や不快感をもったが、さすがに多くの国民の反発、反感を高める結果となっている。 部数や視聴率をさらに大きく落とすことになるのではないだろうか。

岸田首相は安倍元首相の9月27日の国葬を決断されたがその判断は正しい。 選挙遊説中の暗殺は、いかなる理由があれ、民主主義を脅かす悪質なテロ行為であり、決して許されるものではない。 日本の政治リーダーの殉職に対し、その責任をもつべき国家が国葬で弔うのは当然のことである。 国家の責任という面で、何より奈良県警の警備体制はずさんであった。 さらに事件後の容疑者の取り調べも、奈良県警が対応、相手の供述が中心で、警視庁や公安と連携し容疑者の背後関係を徹底的に調査する様子は見受けられない。 二度とこのような悲劇を繰り返さないためにも、容疑者の供述以外の様々な隠された原因も調べ続ける根気さが求められている。 とにかく、日本のために粉骨割いて献身的にご尽力いただいた名宰相のご冥福を心よりお祈りしたい。

さて、テロによる暗殺事件は、自民の保守層離れが危惧された参院選に大きな影響を与えたことは間違いない。 安倍元首相は、首相を退かれた後も67歳と若く、元気と人望があって、日本の保守政治を引っ張る現役のリーダーであり続けた。 日本がさらに危機的な状況となり、仮に岸田政権が倒れても、次を担える有力な首相候補として常に名前があがっていた。 政治的な手腕に絶大なる高い評価と信頼感があったのである。 今回の事件は、現役を退いた政治家の暗殺というより、3回目の首相登板も期待された世界的に傑出した有能な現役の政治家の命を奪った悲惨な暗殺であったといえる。

参院選の結果は、大方のマスメディアの予想通り、自民党が勝利したので、暗殺の影響は軽微であったと分析する識者もおられる。 しかし、暗殺の日まで自民党に吹いていた風は、明らかにとても厳しい逆風であった。 その逆風を巻き起こした台風の目が参政党現象だったのである。 参政党という新興の無名の保守系の政党が、連日、ユーチューブやティックトックの動画サイト、ツイッターなどのSNS上で激しい自民党批判を展開、それに共鳴、共感する人たちが参政党の党員として登録、わずか数週間の短期間で8万名を超える党員を集め、自民の岩盤支持層である保守層の票を大きく浸食する勢いであった。

もし、投票日の2日前に暗殺事件が起こらなかったら、自民離れの岩盤支持層が躊躇せずに投票所に出向き、迷わず参政党へ票を投じていたであろう。 結果的に参政党にさらに多くの票が集まったとみている。 道義上、アンケートはとれないので、その数字の影響は試算できず、勝手な見方になるが、保守層の有権者の少なくても1%が暗殺事件で心情的に自民へ同情票を投じ、それでも今回は自民へ投票したくない1%の保守層が、当日の投票を棄権したのではないかとみている。 仮に1%ずつの軽微な影響だったとしても、参政党は2百万票を失い、実際は4百万票近くを集めたのではないだろうか。つまり、暗殺事件が無ければ、参政党は、共産党や国民民主と同じ3議席を確保、自民が2議席を落としたとみている。

自民や野党は1議席の参政党の本当の脅威にまだ気づいていない

参院選の結果を別表1と別表2にまとめてみた。 投票率が60%でなく、52%にとどまったため、8%の有権者の票が自民以外の保守系の維新や国民民主、参政党へ流れることなく、まだ組織票の力が強いので、今回はかろうじて自民勝利に終わったとみている。
ただ、維新は予想よりあまり伸びず、国民民主が議席数を減らす中、結党からわずか2年あまりの参政党が、核となる有力な現役の国会議員が一人もいない中、得票率3%強の票を獲得、政党助成金の要件となる2%を超えたのである。

また、45の地域全ての選挙区で無名の素人に近い候補者を擁立、各地区で国民民主、維新、共産といった長年選挙実績のある政党候補とも互角で戦い、各地区で自民や立憲、維新の有力候補には及ばなかったが、共産の次に位置する得票数を勝ち得てきた。 1人区では、4~5%の得票実績を築いており、参院選の供託金3百万円の没収条件が、各地区の得票総数を議員定数で割った上で、その1/8以上、1人区なら12.5%以上の得票が必要なため、推計で45区の選挙区で1億円を超える供託金を失った勘定となる。

ところが、他の政党と異なり、参政党だけは、クラウドファンディングなどで広く一般の国民から4億円以上の寄付を集め、それを活動資金に充当してきた。 今回の選挙で、比例区の得票数で2%を超えて政党要件を満たしたので、7700万円の政党交付金を獲得している。 政党要件を満たすと衆院選では、小選挙区と比例代表の重複立候補ができ、選挙区出馬で政見放送を流せるので、解散が無ければ、9億円近い供託金を用意して289の小選挙区全てに候補者を擁立するであろう。

これまでの資金力、党員動員力から、参政党が2025年10月以前、おそらく7月に衆参同日かも知れない第50回の衆議院選挙で1割の議席数は獲得すると予測している。 2022年7月から2025年7月までに地方選挙が次々とおこなわれるが、現在の参政党の党員増殖の勢いはすさまじく、この3年間は、自民や立憲、維新などの既成政党にとって、黄金の3年間ではなく、茨(いばら)の3年間となるであろう。 政策や政治の舵取りを少しでも間違うと一気に参政党に勢いがつき、地方の議席数を次々と減らし続ける暗黒の3年間になりかねないのである。

すでに参政党は9月29日におこなわれる沖縄知事選や宜野湾市長選などで有力な候補者の公募を始めており、万一にも沖縄知事選で参政党が擁立する候補が勝利すれば、有力な政治キャリアをもった議員が次々と参政党に参画するとみている。 2023年5月の大阪府知事、大阪市長も維新が参政党に敗退する可能性すらでてくるであろう。 IRカジノ問題など突っ込みどころ満載である。 気持ち悪いミャクミャク・キャラを選んだ維新を非難し、可愛い万博キャラの新規採用を主張する参政党の選挙演説の姿が目に浮かぶ。

参政党は政治モデルを労働集約型から知識集約型へ変える先駆者となる

変わった見方かも知れないが、政治の世界を産業とみるとその規模は、政治家への議員報酬や選挙毎にかかる様々な諸費用、政党交付金など全て計算に入れると国政だけで年間1千億円程度の資金が動く政治産業を形成している。 1700余りの市町村や都道府県などの地方政治も入れると軽く5千億円を超える規模となる。 仮に5~6千億円の業界規模と推計すれば、文具・事務用品やフィットネス、飲用牛乳、自動車教習所、アウトレットモールの産業規模に匹敵することになる。

この政治産業で働く人口は、議員や秘書、事務員、身辺警護のボディーガード、専属運転手などを含め、ざっと5~6万人と推計できる。 一人あたりの平均報酬は1千万円となり、高収入が得られる甘くておいしい業界となる。 しかも、周囲から先生、先生と持ち上げられ、地元に戻れば名士として処遇され、有名人、成功者の気分をたっぷりと味わえるのである。 従って、一度政治家のうまい汁を吸うとなかなか辞める気にはなれず、それが政治利権や特定業界との癒着の温床ともなってきた。

この政治業界は、個々の議員の知識や政策能力、人脈づくりや知名度アップの巧拙などの手腕、力量で評価される典型的な労働集約型の産業形態となっている。 何しろ、あらゆる政策は、過半数をとらないと可決されず、議員の絶対数、頭数が勝負を決める世界である。 労働集約型の人数に頼る政治は当然といえる。 国民生活にマイナスの影響を与える悪法でも、正しく理解できない議員が多ければ、政党が与党なら可決してしまう。
要は無能でも、頭数さえ揃(そろ)えば、国民生活を無視し、自分たちに都合の良い法案を次々と通すことができるのである。

従って、自民や維新などの有名な政党が、票になるタレントや有名人を議員にしたがる気持ちもよく理解できる。 個々の議員の政策立案の能力、資質より、単純に頭数をどれだけ増やせるかを競う厳しい勝負の世界であるからだ。 選挙に勝って、議員数を増やせる政党のみが生き残れる過酷な世界であり、個々の議員の質がいくら高くても、選挙に負ければ、ただの人どころか、それ以下となるのである。 そのため、政権与党は、常に選挙を意識し、政治哲学や政策を軽視、政治信条も捨て、時の流れに身を任せ、人気取りのためにマスコミの論調にのり、重い政治判断を軽く決定する傾向が強かったのである。

ところが、その結果、過去30年間、経済は成長せずに伸び悩み、国民の給与は低いまま抑制され、さらに消費税10%で手持ちの所得は減り続け、その一方で外国資本に日本の土地や株式を売り渡してきたのである。 ついに有権者自らが立ち上がり、参政党という新たな政党を通じて国民自らが普通の生活を取り戻すための国民運動を始めたのである。 この政党の仕組みは、党員が国を良くする様々な政策の知恵を持ち寄り、それを議論し、議員を通じて実現させていこうとするものである。

つまり、当選後も議員が相当に勉強して知識を持ちより、そうした政策を国会で提案できる能力が求められる訳で、個々の議員の資質がまさに問われるのである。 その政治形態は、労働集約型というより、政策シンクタンクのような知識集約型であり、個々の議員の政策の構想力や企画立案力、法制化した後のフォローが重要となってくる。 例えば、プラスチックバッグの有料化という政策案が持ち込まれたら、環境大臣が勝手に決めるのではなく、決裁までに党員へ広く意見を聞き、そのマイナス面やプラス面を議論、結局、末端で働く店員の負担を増やすだけという結論となり、NOという判断になるのである。

政治哲学、政治信条というミッション、具体的な目標となる政治ゴールの設定、その達成のために必要な戦略としての政策や法制化への具体策の明示、さらにそれを広く党員の国民へ伝え、共感や意見を得るための場づくり、さらにマスコミに頼らない情報の発信力が求められてくるのである。 その確かな政治哲学のもとで、優れた政策を次々と提案し続け、知識集約型の政治を目指してきたのが参政党である。

国民も馬鹿ではない、今の国民生活を良くすると信じられる優れた政策を立案もできず、ただ闇雲(やみくも)に参政党の党員になり、ユーチューブ動画だけで投票しようとは思わない。 まさに政治の仕組みや政策提言の秀逸さに魅了され、その政策の実現を信じ、自分たちも国民目線で必要と感じる政策の企画立案に参加しようとしているのである。 参政党が、今までのどの政党もなしえなかった知識集約型の政治へ舵取りをおこない、政策と実行力で勝負しようとしているのである。

国民は参政党が指摘した問題を岸田政権が解決するかを静かにみている

新興政党の参政党の登場をみても、今後、安倍元首相がおられなくなった自民党、岸田首相への有権者の評価はますます厳しいものになっていくであろう。 例えば、原子力発電所の再稼働決定も、もともと数か月前にやるべき当たり前の政策を今頃になって遅すぎるという意見もある。 コロナも従来に比べ重症化率は減ったが、5類に変更できず、2類のままで、明確な政府方針を打ち出すべき時期なのにその決断はまだされていない。

岸田政権は、今まさに頭数で勝負する労働集約型の政治では解決できない政策の限界に直面しているのである。 政治の世界も、議員自ら、日本中、いや世界中の英知を集め、もっとも優れた政策を企画立案し、国民目線でその政策の影響や具体策までシミュレーションできる政策シンクタンク的な能力が求められているのである。 つまり、地方も含む全議員が、頭の構造を知識集約型の政治へ大転換する必要性に迫られているのである。

大きな政党に所属しているだけで何を考えているのかまったく不明、頭数だけで勝負する政治屋議員の時代は終わったのである。 当然ながら、義理人情の派閥の世界や一部の地域住民との冠婚葬祭のつながりを重視する従来型の溝(どぶ)板選挙も不要となっていくであろう。 地域住民とは、政治の良し悪しを議論する勉強会が中心となり、様々な活発な討論を通じて、政治参画を促していくのである。 そこには特定の利権集団が入り込む余地は少ないのであろう。

参政党の選挙演説になぜ国民の熱狂が集まり、参政党現象なるものに発展したのか、それは、事務局長の神谷氏を中心として、わかりやすい表現で、心に訴える魂の声の政策主張があったからだと分析している。 例えば、選挙演説の動画で、20年以上、日本人の給与だけが低く抑えられ、平均の初任給は、米国が2倍、スイスが3倍以上、消費税などの税金でさらに国民を苦しめてきた犯人は誰かを問う場面があった。 その責任は与党の自民党と公明党にあると言えば、その通りと共感の声と大拍手が起こるのである。

さらにインフレでガタガタになった国民の生活をあざ笑うように円安で格安となった日本の土地や日本企業の株式をバーゲンセールのように中国など海外へ売り渡している売国奴はだれか、それは自民党だと言えば、割れんばかりの拍手が起こるのである。 実際、自民党の政権のもとで、日本の土地や株式を中国や韓国、米国などの外国資本が自由に購入できるようにしたのは政権与党の自民党である。 実際、自民党が過去、国益を大きく棄損する政策を次々とおこなってきたことは事実であり、その罪は重いといえる。

今、その岸田首相の力量を問う大きな問題がふりかかっている。 一つ目は長崎ハウステンボスの土地をHISが香港の投資会社へ売る問題、二つ目は屋久島沖の領海内で中国の戦艦が海底測量をしていた問題、三つ目は日中国交正常化50周年交流促進に政府がどのように関与するかという問題である。 最初の問題は深刻である。 軍港の佐世保港は山をへだてたところにあり、ハウステンボスの位置は、そのすぐ近くとなっている。 香港資本といっても、中国資本と変わりなく、このまま売買を政府が認めた場合、参政党が非難する売国奴の日本売りが周知の事実となる。

二つ目の問題も深刻である。 通常、侵略行為を想定しなければ、戦艦が領海を侵して測量はしない。 屋久島近くに種子島のJAXAロケット基地がある。 中国共産党の解放軍が戦闘威嚇の準備を始めたと考えてもおかしくない状況となっている。 三つ目の問題も岸田首相の政治スタンスが問われるだろう。 9月29日の日中国交50周年をどうするのか、27日が国葬なので、中国共産党幹部のどのレベルが来日するのか、台湾侵略を公言する習近平自らが来ることは無いと思うが、政府の対応が注目されている。

参政党が議員立法を志向すると国会での勢力地図が大きく変わっていく

参政党は1議席だけの政党だが、おそらく、次は超党派での議員立法を仕掛ける可能性があるとみている。 議員立法をおこなうためには、国会法56条により、衆議院で20名以上、参議院で10名以上の議員の賛成がないと発議できない。 予算を伴う場合は、衆議院50名、参議院20名以上の議員の賛成が必要となる。 世の中の流れが、各議員が政党の枠を超え、政策中心で動こうとしている。 その時に10万人近くの政策の企画立案に関心を示す党員組織をもつ参政党は、与党や野党の保守系の派閥議員にとり、とても魅力的な存在となる。 与党や野党の政党の垣根を越え、保守層が魅力を感じる議員立法を次々と仕掛けることで、知識集約型の組織を国会内で形成する可能性があるのだ。

例えば、参政党党首で、元財務官僚、積極財政派の松田学先生が提唱するデジタル円構想もその一つである。 国民を豊かにするために税金を増やすのではなく、財務省や日本銀行を納得させるためにもデジタル円での政府通貨の発行という有効な政策を主張されている。 仮に議員立法を仕掛けて駄目になっても、その広告宣伝の効果は抜群である。 それが参政党の次の選挙にも良い影響を与えるであろう。 参政党を敵視し、党員へ圧力をかける政党があれば、次の選挙で国民の審判を受けるのはその政党となる。

参政党は、中国は自分たちの土地を自由に買わせないのに日本の土地や資産は第三者を通じて自由に買えるという国内法は、相互主義の観点から問題だと指摘している。 そこで、外国が簡単に日本の土地や株式を買えないように厳しい規制を加えるべきだと主張している。 すでに外国が保有する土地や株式も固定資産税を10倍にして、重税を課すべきとも主張している。 自民党の保守層で主張されてきた議論だが、参政党が議員立法を仕掛けることで、負けてはならないとむしろ自民党側が一所懸命に動く可能性は高い。

実は、参政党が主張する政策は、政策のプロから見ても正しい内容が多く、時代を大きく先取りする理念や考えを背景に、優秀な専門家が、自らの叡智(えいち)から珠玉(しゅぎょく)の政策を選りすぐり、参政党へ提案しているのではないかと推察している。 まさにこれからは議員の頭数ではなく、党利党略を超え、議員の頭の中身の質で勝負する新しい国政の時代が到来しているのではないだろうか、まさにそれを予感させるのが参政党現象なのである。 ドロドロした人間関係に腐心する政局は過去のものとなり、確固たる政治哲学、政治信条もなく、深く熟慮もせず、マッチポンプでパッパラパーの首相が政権与党を率いる政治の時代は終わったのであろう。

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