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ロシア・中国に経済戦で負けると大恐慌となる厳しい状況が続く

令和4年8月2日

社会資本研究所

南 洋史郎

米国の経済と金融のダブル失策のために世界の金融市場の混乱が続く

経済評論家と称する専門家が、インフレ対策で金利を引き上げたFRBの決定は正しく 米ドルがさらに強くなって、円がさらに弱くなり、今後もますます円安が続くと予想して いた。 また、ヘッジファンドで金融の専門家と称する米国人が、日銀の黒田総裁の金利 の据え置き、金利を引き上げない政策は金融市場でしっぺ返しを受け、円安がさらに進み、 為替取引で日銀は必ず負けると豪語していた。

正直言って、一体全体、ここまで今の経済状況を理解せず、出鱈目(でたらめ)な意見 を平気な顔をしてテレビで主張できるのか、驚きを隠せない。 まず、今の日本の円安、 欧州のユーロ安は、なにが真の原因かを理解しないといけない。 諸悪の根源は、米国の バイデン大統領がエネルギーや食糧の安定供給の推進という経済政策を明示できなかった ことへの金融マーケット関係者の失望、それに輪をかけて、FRBのパウエル議長が今年 の3月中旬以降、短期間で4回も小刻みに利上げを繰り返し、3月中旬まで0.5%であっ た金利をわずか4カ月半で2.5%まで2%も引き上げたことにある。

つまり、米国のバイデン大統領の経済政策とFRBのパウエル議長の金融政策のダブル 失策による急激な政策金利の上昇が、ドルの独歩高を生んだのである。 さらに米中央銀 行のFRBが主導するテーパリング (Tapering)という量的金融緩和の縮小、それにとも なう米国への資金還流が続いている。 金利差があるとはいえ、3月から7月の5か月間 で、通貨ポンドは1ポンド=1.3ドルから1.2ドル、通貨ユーロも1ユーロ=1.1ドル から1.0ドルへ共に▲0.1ドル下落、通貨円は月間平均で1ドル=119円から137 円へ▲18円も下落している。

そこで、英国や欧州の中央銀行でも、米国に続いて政策金利を引き上げる金融政策がお こなわれてきた。 英国中央銀行のBOE(Bank of England)は、昨年11月までのゼロ 金利政策をやめ、5回にわたって0.25%ずつ引き上げ、6月時点で1.25%の金利水 準にしている。 欧州中央銀行のECB(European Central Bank)も長年のマイナス金 利政策をやめ、7月時点で政策金利を0.5%とした。 ロシアのウクライナ侵略の3月以 降、英国は消費者物価の指標であるCPIが前年度比6.2%から9.4%、欧州ユーロの CPIも前年度比5.9%から8.9%へ急増している。 英国やユーロで米国に追随した 金利引き上げは仕方のないものと言える。

日本企業の経営努力と日銀の黒田総裁のお陰で日本経済は救われている

ところが、日本銀行のBOJ(Bank of Japan)の黒田総裁は、マイナス金利政策の堅持 を公表している。 理由は簡単である。 日本のCPIは前年度比1.2%から2.4%と わずか1.2%しか上がっていないからだ。 エネルギーと食品の物価の影響を除いた日本 のコアコアCPIは、▲0.7%から1.0%と1.7%上昇しているが、それでも目標の 2%を超えていない。 つまり、日本経済だけは、ガソリンが値上がっても、欧米経済と 比較して消費者物価について、ロシア侵略の家計への影響が軽微に収まっているのである。

日本では、石油や石炭、天然ガス、小麦など海外から輸入する物価が、円安で平均1 5%以上も割高になっても、企業努力で価格へあまり転嫁してこなかったのである。 つ まり、日本企業が高い輸入物価への抵抗力があるとも解釈でき、経済活動における日本独 特の道義的な商慣習が、安易な値上げを許さないからだと前向きにとらえることもできる。 従って、日銀の黒田総裁のマイナス金利政策の維持は正しく、むしろこれから米国経済 が落ち込み始めると急速に110円台の円高へ逆ブレする可能性が高い。 円がさらに弱 くなって円安が続くという経済評論家の見方は間違いであり、米国のヘッジファンドの専 門家が、日銀が金利を上げないのは間違っていると主張するのも誤りである。 金融市場 の専門家なら誰でもわかっている常識なので、日本国債を運用するファンドが日本の金利 上昇で儲けるための意図的なミスリード発言なのであろう。 過去、金融市場で日銀に歯 向かったファンドは、ほぼ全て粉砕されてきたので、恐らく、このファンドも巨額損失で 消えるのではないだろうか。

一方、岸田政権における有効な経済政策は何も聞かない。 まさにアベノミクスをささ えた日本銀行の黒田総裁のお陰で、金融政策で低金利が維持され、中小企業はコロナで膨 らんだ借金の返済も金利負担を抑え無理なく対応できているのである。 ところが、都市 銀行は、日銀にマイナス金利政策を一刻も早く解除してもらい、金利を引き上げ、日銀と の取引で再び楽に儲けられるようにしたいと願っている。 既に来年4月8日の黒田総裁 の退任を見据え、今年3月に岸田首相を説得し、日銀の審議委員に都市銀行の意見を主張 できる委員を2名も送り込んでいる。 もし岸田首相が、黒田総裁退任後の人事を間違え、 物価は安定しているのに欧米なみに金利を上げる総裁を選んだ場合、中小企業の借金返済 が苦しくなり、日本も米国に追随し、不況の奈落の底に向かう可能性すらでてきている。 黒田総裁の1年以上の続投も必要ではないかと感じる理由もそこにある。

米国ではバイデンとパウエルの失策のため恐慌の可能性がでている

バイデン大統領は、米国内のガソリン価格が2倍以上に跳ね上がっても米国内の石油な どの増産をせず、米国内の農家に働きかけ、穀物増産の音頭もとらず、あろうことか、サ ウジアラビアなどOPECへ石油増産をお願いするという考えられない愚策を繰り返した のである。 民主国家のウクライナを武器供与で支援することは、独裁専制国家のロシア を敵に回すことであり、当然ながら、金融制裁以降の経済戦、金融戦を勝ち抜く覚悟が必 要となる。 そのためには、ロシアの天然ガスや小麦などの農作物がなくても、西側諸国 はびくともしない、大丈夫というメッセージを発する必要があった。 ところが、米国で はマスコミ対策も含めて、こうした情報戦が全くできなかったのである。

結果的にバイデン政権とFRBのパウエル議長の迷走ぶりがより鮮明となってきた。 今年上半期のGDPは減少し続けたが、それでも金利を2.5%まで引き上げる矛盾した金 融政策をとることになったのである。 前年度との比較で四半期毎のGDPは、1月から 3月が▲1.6%、4月から6月が▲0.9%と落ち込み続けている。 通常、四半期の2 期連続でGDPが減少した場合、景気減速の不況、リセッション(Recession)と定義さ れている。 失業率は5か月連続して3.6%と良好にみえるが、景気減速の半年から1年 あとに影響が遅れてあらわれてくる遅行指標なので、今年の秋以降に失業率の悪化が懸念 されている。

一方、消費者物価の指標CPIは、ロシア侵略以降、3月以降に前年度比で8%以上に 急上昇している。 7月はついに9%を超えた。 変動の大きい食料価格や光熱費などを 除いた消費者物価の指標コアコアCPIは、前年度比6%前後で推移し、物価上昇の中で 景気が減速するスタグフレーションの状況となっている。 米国では、物価高で生活が相 当に苦しい中、景気が減速し続け、消費が抑制され、さらに景気が減速する不況スパイラ ルへ陥(おちい)る可能性が高くなっているのだ。 突如、リーマンショックのような恐 慌(Depression)にまで発展しないかも懸念されている。

インフレには良いインフレと悪いインフレがある。 良いインフレは、需要の拡大など で景気が良くなり、供給が追いつかず、物価が高くなる需要インフレを意味する。 デマ ンドプル型インフレ(Demand-pull Inflation)ともいう。 悪いインフレは、原材料や資 源を供給する企業が価格を引き上げる資源インフレや人手不足で賃金が高騰する賃金イン フレといったコスト高によるインフレを意味する。 コストプッシュ型インフレ(Costpush Inflation)ともいう。 欧米で起こっているアフターコロナの経済回復のインフレや ロシアの侵略戦争以降に起こっているインフレは、後者の悪いインフレであり、需要が急 速に減退し、不況が深刻化、恐慌になる可能性もでている。

実際、昨年からコロナ後の経済復興で、航空運賃や自動車、半導体などの価格の上昇は あったが、コロナ前の需要に戻り供給が充足できた後は、物価上昇は落ち着くだろうと考 えられてきた。 米FRBも今年2月まで、金利を0.5%に据え置いたままであった。 それでも、生活資金に余力がない低所得者世帯では生活が苦しくなり、消費を抑制する動 きが顕著となり、実感として景気は急激に減速してきた。 米国内で一昨年よりホームレ スに近いテント生活者が急増、昨年の映画「ノマドランド(Nomadland)」が静かな世界 的ブームになった背景も、こうした世相を反映しているのであろう。

米国主導による経済、財政、金融の三位一体の有事政策が世界を救う

有事でなければ、為替市場や債券市場などの金融市場への政府介入は極力避けるべきで あり、中央銀行の役割も物価指標CPIの推移や長期金利の動向を分析、失業率が上がら ないように景気の状況もみながら、金利政策を決定すべきである。 有事でない場合は、 今回のFRBがとった金融政策は、普通の常識的な対応とみなすことができるのである。 つまり、中央銀行の役割とは、政府の政策に影響されず、独立性を保って金融政策を決定 することだと主張しても許されるのであろう。

ところが、戦争や深刻な不況、恐慌の様相が顕著な有事の時、特に世界経済に影響を及 ぼすほど大きな戦争が起こった時の有事には、情報戦や経済戦、金融戦で政府や中央銀行 が一緒になって、積極的に市場介入する必要がでてきている。 つまり、政府による経済 政策や財政政策、それと密接に連動した中央銀行の金融政策が欠かせなくなっているのだ。 現在は、コロナパンデミックで傷んだ経済の復興やロシアの侵略戦争によるエネルギー、 食糧の供給危機という二重苦の有事が起こっている時期であり、政府と中央銀行の強力な 市場介入が必要不可欠となっているのである。

その意味で、今回のFRBがとった金融政策は間違いであった。 パウエル議長は何よ りホワイトハウスの経済政策や財政政策の政府高官と一緒に市場対応をどうすべきか、そ の金融戦略を話し合うべきであった。 その上でロシアの武力侵略の影響で石油と小麦の 供給不足の不安を解消するため、経済、財政、金融の三位一体の国家戦略に基づき、有事 の金融政策を進めれば良かったのである。

トランプ大統領の時代、パウエル議長は度々、金利政策でお叱りを受けていた。 有事 の政府との連携意識が欠如していたのであろう。 有事の金融政策とは、エネルギーや食 糧の価格の引き上げという悪いインフレで苦しむ企業や庶民を救済するため、積極的に財 政支援をおこない、金利は低めに抑制、資金調達しやすい環境を生み出すことを意味する。 一方、不当に価格を吊り上げる悪徳企業に対しては、様々なペナルティや増税などの厳し い規制を課していくのである。

理想を言えば、今年3月に米大統領自ら、温暖化対策よりロシア侵略によるエネルギー と食料危機への対策を優先する方針の大転換を国内外へ明示すべきであった。 具体策と して、米国内の石油と天然ガス、穀物の大増産を宣言、政府が積極的な財政支援を約束す るのである。 次に欧州主要国の英国、ドイツ、フランスなどと協議し、欧州各国の穀物 増産をすすめてもらうのと同時に従来のCO2対策を優先するエネルギー政策を棚上げし、 ロシアの天然ガスの供給が止まっても、自律対応できる現実的な電力政策、すなわち原子 力発電と石炭火力発電の復活、強化を促進すれば良かったのである。

ロシアの天然ガスや小麦に頼らない方針が明示できれば、エネルギーや食糧のインフレ 懸念が収まり、ポストコロナの経済回復による短期的なコストプッシュ型のインフレ対策 に注力すれば良いのである。 その効果をみながら、FRBや英、欧州の中央銀行は、金 利据え置きも視野に入れて、積極財政や金融緩和の強化を推進すれば良かったのではない だろうか。 価格を不当に吊り上げ、例年より大きく収益を上げた企業へは、法人税を累 進的に高くするペナルティ政策なども効果があると考えられるのだ。

ドイツでは、3月以降、ロシアのノルドストリームの天然ガス供給を止められたら大変 と連日、マスコミが騒いでいた。 ところが、天然ガスの発電比率は、電力全体の8%だ けで、石炭火力が3割に主力となっている。 賢い米大統領ならマスコミとの情報戦を勝 ち抜くため、ドイツの首相と協議し、ロシアの侵略戦争が終わるまで、廃炉予定の原子力 発電所3基の継続を決め、CCUS(Carbon-Dioxide Capture Utilization&Storage)への開発投資を促進しながら、石炭火力の比率を4割 までアップすることでドイツは大丈夫と公表したであろう。 つまり、米国とドイツがロ シアの天然ガスが無くても心配ない、大丈夫とアナウンスする情報戦を展開すれば、資源 インフレをかなり抑制できたと考えている。

なお、世界の石炭火力発電の分野は、米国や欧州、日本などで二酸化炭素の分離回収の 再利用と地中貯蔵のCCUSの技術開発 が進められてきた。 今まで自然エネルギーの推進団体から、コスパ面で実用化が難しい と酷評され続けてきたが、今回のロシア問題を契機として、日本が主導して、CCUSの 新システムを欧米の火力発電所へ導入する共同開発プロジェクトを積極推進するべきであ ると考える。 既に日本では、火力発電のガスタービンに水素を30%混焼する技術やア ンモニアをボイラー燃焼時に混焼させる技術は確立されている。 これらは、既存の発電 所に新たな装置をつければ、早期の実用化が可能なので、その技術を欧米の火力発電所へ どんどん広めれば良いのである。

経済金融戦争に勝つためエネルギー食料の安定供給の同盟結成が必要

今回のロシアのウクライナ侵略は、コロナで破壊された世界経済を回復させる大事な時 期に起こったため、ダブルパンチで欧米各国は大きな経済的なダメージを受けた。 その ロシア、さらに台湾侵略を公言する中国との武力以外の経済金融の長期戦に打ち勝つため、 米国と欧州、日本など民主主義を代表する主要な国々が同盟関係を組み、密接に連携しな がら、共通課題であるエネルギーや食料などの安定供給と物価抑制、さらに経済制裁や金 融制裁による経済ダメージを軽減する体制を構築する民主的な経済安全保障同盟(仮称; GESA=Global Economic Security Alliance)を結成するべきではないかと考える。

それは、NATOやクワッド、日米同盟といった軍事的な安全保障の同盟でもなければ、 TPP、環太平洋パートナーシップ協定などの貿易協定でもない。 その目的は、ロシア や中国という権威主義、専制主義といった民主主義と価値観を共有しない国への経済制裁 や金融制裁の効果を高め、制裁による経済金融面の悪影響を排除することにある。 同盟 各国が有事に技術支援や財政支援、資源・食料の供給支援、インフラ支援などをおこない、 ロシアや中国からの悪影響を極力排除していくのである。

例えば、ロシアへの経済制裁、金融制裁による天然ガスや小麦の供給不安に対し、資源、 農業の大国である米国やカナダ、オーストラリアが中心となって、増産による安定供給を 推進するのである。 中国の一帯一路により、経済が破壊された加盟している発展途上国 へは、欧米や日本が被害国へ積極的に財政支援をおこない、民主的な政治体制の構築に協 力しながら、中国の悪影響を徐々に排除するのである。 中国は台湾侵略という武力威嚇 以外に欧米や日本に対して貿易力を駆使して経済戦争を仕掛けてくる大国である。

今後、米国や日本など同盟各国が、東南アジアを含む中華経済圏の民主国家の盟主であ る台湾と国交回復を目指す中、中国が軍事以外で経済圧力をかけてくる可能性が高まる。 さらに米軍や自衛隊と部分的で偶発的な軍事衝突が起こった場合、香港でドルと元との為 替取引を止めるSWIFT金融制裁が即刻発動される可能性も強まる。 そうなると欧米 や日本を中心に中国との貿易取引が完全にストップする。 中国も深刻な経済ダメージを 受けるが、日米欧もかなりの返り血を浴びることになる。

例えば、中国が強い産業分野、テレビ、冷蔵庫、エアコンなどの家電産業や携帯電話、 パソコンなどのIT産業で中国へ経済制裁が発動され、貿易取引が止まっても、日本や欧 米の大手メーカーが東南アジアで直ぐに需要を充足する代替生産の体制を促進させること も、GESA同盟の重要な活動の一つとなってくる。 もともと中国は日本や欧州の大手 メーカーとの取引による加工貿易で成長してきた経緯がある。 日本などから重要な精密 部品が輸入できなくなると中国もロシア以上に相当に苦しくなるとみている。

日本は食糧と電力の自給を目指して米の需要増と原子力発電を推進せよ

ロシアの侵略戦争でウクライナからのトウモロコシ、小麦、大麦などの海上輸送の穀物 輸出が止まり、世界的な食糧危機が叫ばれてきた。 トルコや国連が仲介して、収穫され た穀物の黒海での海上輸送が可能となり、8月1日よりオデーサからトウモロコシ搭載の 貨物船が出港、ウクライナ国内に滞っていた穀物輸出が始まった。 主な輸出先は北アフ リカや南アジアであり、エジプトやパキスタンなどの食糧需要を支えている。 今後、ウ クライナ国内の戦争が1年以上も長期化する見通しの中、ロシアの穀物輸出も大幅に減少、 民主主義の国々は、増産推進国と自給促進国に色分けし、世界的な穀物需給のバランスを とる必要性に迫られている。

日本は明らかに自給促進国に区分され、米国やカナダからの穀物輸入を減らし、米中心 の国内農業での自給自足体制の強化が必要となっている。 そこで国内の米需要の拡大の ため、全国小中校3万校で9百万人以上が利用する学校の米飯給食に着目、供給回数を週 4回以上へ増やす取り組みを強化すべきである。 また、グルテン補充の問題は残るが、 米粉を積極的に小麦の代替穀物として活用、パンや麺類への小麦との混入利用や単独使用 を強化、その結果としてコメ増産を推進する地道な努力の継続が必要となっている。

国内のエネルギー供給体制において、従来の石油、石炭、天然ガスに過度に依存する状 況から、エネルギーの自給自足を促すために日本国内でも比較的安全な地下式原子力発電 所や小型原子力発電所の建設を促進し、その分野の新たな技術の開発研究を進める必要性 に迫られている。 こうした安全性を重視する原子力発電所の増設により、再び電力需要 の3割程度をCO2の排出が非常に少ない原子力発電でまかなう電力政策を推し進める必 要性がでてくるであろう。 福島の大規模な事故経験を踏まえ、原子力発電の構造システ ムの改良や新たな安全技術の開発を強化、既存の原子力発電所の再稼働だけでなく、安全 技術を駆使した発電方式を積極的に進める前向きな姿勢が問われている。

米の需要増から米増産につなげる自給政策の推進や安全な原子力発電所の再稼働と新規 建設による電力政策の大転換で、日本はロシアや中国から仕掛けられる様々な経済戦、と くにエネルギーや食糧における供給危機を勝ち抜く政策を強化する必要性に迫られている。 ロシアや中国の経済状況が相当に厳しくなっているが、独裁専制政治の強さは、一旦、社 会システムとして確立すると国民がいくらもがき苦しもうが、長期にわたってその政治体 制が持続できる点にある。 すでにその強さは、ソ連や北朝鮮で立証済みである。 今後、 こうした厄介な権威主義の大国と5年以上の長期にわたり経済戦争が続くことを覚悟しな いといけない。 権威主義のロシアや中国との経済戦争に民主主義の欧米や日本が敗(や ぶ)れ、経済不況から大恐慌をまねく事態だけは何としても回避しないといけない。

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