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劇的変化が進む国防を先取りできる国だけが生き残る

令和4年8月22日

社会資本研究所

南 洋史郎

21世紀型の国家間の戦争ではパラダイムシフトで何が起こっているか

8月24日は1991年にウクライナがロシアから独立して31年目の記念日となる。 首都キーウでは、破壊されたロシアの戦車50台を市内に展示、市民が独立維持への強い 思いを深めている。 ロシアのウクライナ侵攻、いやそれ以前のコロナ感染の流行以降、 ロシアや中国の権威主義の国家との新しい21世紀型の戦いが進行中である。 これを第 三次世界大戦と大袈裟に主張する識者もいるが、いずれにせよ、コロナパンデミック以降 21世紀の新しい概念、パラダイムシフトの国家間の戦争が始まったという認識は多くの 識者で意見が一致している。

そのパラダイムシフトの21世紀型の新しい戦争では、国同士の武力戦争が「ミサイル」 と「無人兵器」が中心の戦いへ180度転換、シフトするとみられている。 さらに「経 済戦」や「金融戦」、「情報戦」による武器を使わない戦いも21世紀の戦争の非常に重要 な構成要素となっている。 その代表格が輸入高関税やSWIFT金融排除、富裕層の資 産凍結、サイバー攻撃などであり、武力侵略と同時にロシアの富裕層の資産没収まで視野 に入れ日米欧で次々と資産が凍結されてきた。 また、ミサイルや無人兵器の開発では、 米ソ冷戦時代から米中貿易戦争を経て現在に至るまで、諜報工作活動の機密技術の情報収 集がヒューミント、スパイも含め21世紀の戦いでより重要な要素になるとみられている。

ウクライナでの21世紀型の武力戦争におけるミサイルに着目すると最強と言われたロ シアの戦車軍団が「ジャベリン(FGM-148 Javelin)」という歩兵携帯型の短距離小型ミサ イルにあれほど大量に破壊されるとは想像もできなかった。 高機動ロケット砲システム のハイマース(M142 HIMARS)は、射程距離は80km だがロシアが支配地域の弾薬貯蔵 庫や司令拠点を20か所以上GPS誘導で正確に壊滅している。 より射程距離の長い射 程300km のエータクムス(MGM-140 ATACMS)を投入すれば、占領地域を全て攻撃 できるが、米国のバイデン政権はロシア国内への攻撃も可能なためその供与は許していな い。 11月の中間選挙で共和党が圧勝するとその方針が変わるかが注目されている。 無人兵器に着目すると大量の小型ドローンが歩兵偵察用に活用され、数百km 範囲で偵察 用や戦闘用の無人機も投入されてきた。 戦闘用はトルコ製の「バイラクタルTB2」が 大活躍、偵察用はすでに数十キロ範囲のドローンが必要不可欠となっている。 数百km 以上の偵察が可能な米ボーイング製の「スキャンイーグル」の供与も予定されている。

パラダイムシフトの戦争を志向する中国のミサイルと無人兵器の現状と対策

中国は、急ピッチで中国版ハイマースといわれる射程距離を延ばした高機動ロケット砲 システム「衛士」の開発、配備を進めている。 何より安価なロケットを大量投入するこ とで戦況を有利にできると言われており、有事に台湾国内へ日当たり数千発の衛士の小型 ロケットを降参するまで何日も打ち込む計画まであるのではと懸念されている。 米国製 ハイマースの模倣開発であり、様々な諜報活動を通じてコア技術を獲得し、数年以内には 台湾攻撃の準備が整うかも知れないという軍事専門家の意見もある。

日本は、自衛隊が米軍保有のハイマースの借用使用の実績はあるが自国内に配備されて はいない。 ハイマースより射程距離が30km と短く、命中精度も低いが、多連装ロケ ットシステムのマルス(MLRS)を30年前から国内ライセンス生産で配備してきた。 本土防衛を想定し国内で百台近く保有しているが、離島防衛には適さない。 今後、離島 防衛用にマルスを数百キロ射程でGPS誘導の高精度に改良開発ができるかが課題となっ ている。 例えば、先島諸島などの離島防衛では、巡洋艦や戦闘機によるミサイル防衛の 考え方も重要だが、ミサイルの飽和攻撃に備えた島内からの多連装ロケットの対応も必要 となっている。 この時に本土の古いマルスを改良し島に配備する考え方も必要となろう。

技術的には巡航ミサイルや弾道ミサイルと同じ構造だが、最大の欠点は巡航速度の遅さ であり、時速150km 前後と対空の小型ミサイルで簡単に迎撃でき、その速度では先進 的な防空機能を有する欧米や日本の空からの攻撃は不可能となっている。 むしろ、中国 は日本の航空自衛隊を無人機でかく乱する陽動作戦に持ち込むため、沖縄や尖閣諸島など の領空をわざと侵犯し、航空自衛隊のスクランブルデータを収集してきた。 昨年だけで 千回のスクランブル発進がおこなわれ、その7割は中国の戦闘機であり、ほとんどが有人 機だがその中に無人機も含まれる。

1回あたりのスクランブルで2機の戦闘機が発進、その費用は1回あたり1機5百万円 で1千万円、千回で百億円のコストが昨年一年間だけでかかったと推計されている。 7 割が中国なら、法律の解釈を少し変え、確証写真を添付しスクランブルの都度、中国大使 館を経由し、人民解放軍へ支払期限1カ月の請求書を発行してはどうだろうか。 相手は 馬鹿にして無視するか、チンピラ風貌の広報官などが恫喝するかも知れない。 ただ、国 内外のマスコミ向けの情報提供とそれによる日本国民の意識覚醒のために騒いでもらうの 3 が本来の目的である。 請求書が未払いで積み上がっていくなら、ホームページでカウン トサイトを公示するのも良い方法かも知れない。 「ふざけるな」という国内世論を形成 するのに役立つであろう。 これが21世紀型の新しい情報戦なのである。

ロシアのように戦争犯罪を気にせず、防空機能の無い民間の住宅地を狙えるなら、無人 機の数機の攻撃で数百人を超える民間人の殺戮は容易とみられている。 台湾有事に中国 は、わざと数十機の無人機をおとりにして離島近くに飛行させ、それを迎え撃つ戦闘機を ひきつけ、相手の防空体制を崩(くず)して、離島を攻撃する陽動作戦すらあるといわれ ている。 一方、中国は米国の無人機が領空を侵犯したら、即座に撃墜すると公言してい る。 日本も当然ながら、自衛隊法第84条の法解釈を少し変え、無人機対応では先進の 中国を見習って、警告への返答をしない領空を侵犯する無人機などの不審物体へは対空ミ サイルで迎撃、その破片を回収し、それが中国製と断定できる場合は、対空ミサイル代金 を請求すれば良いのである。 これが21世紀型の新しい戦いなのである。

国守りの21世紀型の国防システムの新しいグランドデザインとは何か

日米欧など民主主義、資本主義が進化した政治経済の社会を形成してきた先進国は、そ の体制を脅かすロシアや中国から軍事的威嚇を受けた時、互いの国同士が密接に連携して 自国を守る国防システムが必要不可欠という認識に変わってきた。 例えば、フィンラン ドやスウェーデンがロシア侵略に対抗してNATOへの加盟を決断している。 両国とも 女性首相であり、英国も女性首相の誕生が見込まれている。 有事の難局を打開するため には、サッチャーのような強い女性のトップが信頼でき、決断力があると期待されている からではないだろうか。

また、オーストラリアでは、昨年9月にNATOに匹敵する米英との集団防衛機構の枠 組み「AUKUS(オーカス)」の締結を成功させたモリソン首相が、今年5月の総選挙 で労働党のアルバニージー党首に敗退した。 その直前の4月にソロモン政府が中国と艦 艇寄港や物資補給などを認める協定を結んだことに国民の反発が高まり、物価高や気候対 策の不満もあったらしい。 ソロモン諸島が第二のスリランカにならないかが心配されて いる。 アルバニージー新首相は、5月就任早々にわざわざ日米豪印の連携枠組み「クア ッド」の首脳会議に出席するために訪日されている。

国守りの21世紀型の国防システムは、各国の個別対応によるアローン(Alone)から 集団の同盟対応によるアライアンス(Alliance)をどう構築できるかという発想が必要不 可欠になっている。 欧州では、軍事的国防はNATO、経済的国防は欧州連合のEUと いう仕組みでアライアンスが強化されてきた。 圧倒的な世界一の軍事力を誇る米国は、 軍事的国防の中の集団防衛機構はNATOとAUKUS、経済的国防は各国とのFTAに よる同盟を重視してきた。 日本は、軍事的国防は日米同盟、経済的国防はTPPや欧米 などとの個別FTAで有事でも輸出入貿易には困らない国際的な仕組みをつくってきた。

日本の軍事的国防を担う日米同盟は、有事に米国だけが日本を守り、日本が米国をどう 守るかが明確になっておらず、尖閣有事などで同盟関係の信頼失墜も懸念されてきた。 そこで、当時の安倍首相が様々な国内の反対意見を押し切り、集団的自衛権の行使が可能 となる「国際平和支援法」と「平和安全法制整備法」の二つの法案からなる「安全保障関 連法」を2015年9月に成立させ、翌3月より実施したのである。 このお陰で、米国 だけでなく、今後は米国以外の軍事的な同盟を結ぶ国とも集団防衛のアライアンスが組め るようになった。 その意味で新しい国防の動きを先取りした画期的な法案であった。

過去、第二次世界大戦後に米国は東アジアの中国の共産主義体制を封じ込めるため、フ ィリピンと1951年に米比相互防衛条約を締結、韓国とは朝鮮戦争の終結直後の195 3年に米韓相互防衛条約を結び、台湾とは1954年に米華相互防衛条約を取り交わした。 日本とは1960年に日米安全保障条約を結んだが、もともと太平洋集団安全保障構想の 考えがあり、1954年に米国と日本、中華民国、韓国の4か国による軍事同盟の北東ア ジア条約機構NEATO(North East Asia Treaty Organization)を米国は締結しようと目論 んだが、日韓関係の悪化でご破算となった経緯があった。

また、「一つの中国」の考え方は、戦後まもない?介石の時代は、中国を代表する唯一 の政府は中華民国という立場を意味してきた。 しかし、中国が国連へ復帰した後、唯一 の中国の合法政府は中華人民共和国という解釈に変わった。 さらに中国共産党は中華民 国を国家承認すべきでない、国交を結ぶべきでないという圧力を様々な国へ加えてきた。 そこで、軋轢を避けるため、米国や日本、欧州各国は一つの中国の主張は認めるが、一方 で明言を避けながらも台湾は中華民国として既に独立していることを容認してきた。

以上の経緯より、21世紀型の日本の国防システムの新しいグランドデザインは、70 年前のアライアンスの原点に戻り、まずは、日本と米国、中華民国の親しい3か国が強固 な集団防衛の同盟関係を締結することであると考える。 そこに中国を恐れる韓国など他 のアジアの国の参加は必要ない。 むしろ、オーストラリアや英国など中国共産党の横暴 に対抗する意識が強い国がアライアンスに加われば大歓迎である。 中国共産党は、台湾 を侵略したければ、軍事力最強の米国や日本も敵に回して戦う覚悟が必要となる。

武力戦だけでなく、日米による貿易制裁やSWIFT金融排除、富裕層への資産凍結な どの経済戦のダメージを考えると中国は敗北が容易に読める戦いはしないと予測している。 アライアンスを公表後は、中国は台湾侵略を公には主張しなくなるとみている。 感情を 荒げ、中国が日本へ国交断絶を主張するかもしれない。 その時は国交断絶もやむなしと いう覚悟は必要になってくる。 それでも中国との経済取引を継続する企業は、ドルや円 との為替交換はあきらめてもらう必要も出てくるであろう。 今は日本という国を守れる かどうか重要な岐路にあるという認識なのである。 現段階では、日本と米国との集団防 衛のアライアンスのみが中国共産党の日本侵略や日本の離島での武力衝突を防げる唯一の 方法と考えるのである。

米民主党政権は武力戦争を期待し日本は米台との軍事共同訓練が必要

2016年3月から施行された集団自衛権を行使できる安全保障関連法の後は、国防を 担う自衛隊の憲法上の位置づけを明確にする手続きが残ってきた。 中国による台湾有事 が危惧される中、今年の秋の国会で憲法9条改憲議論も必要になってきている。 尚、国 家安全保障会議(NSC)はその時に創設されており、今回の内閣改造では、NSC事務 局トップの国家安全保障局長に元外務次官の秋葉剛男氏が再任された。着任早々、本来な ら外務大臣が対応すべきだが、秋葉局長が中国の外交トップで党中央政治局の楊潔?(よ う けつち)委員と7時間も会談し世間を驚かせた。 国内で良くない噂がたっている外務 大臣との会談を避け、NSC議長の岸田首相と直結する秋場局長へ中国共産党の思いや意 向を詳しく伝える外交手腕は流石と言わざるを得ない。

それだけ中国共産党が追い込まれているとも解釈できるが、日本からすれば、因果応報、 自業自得、悪因悪果で当然の帰結で仕方がないとしか言えない。 ペロシ訪問や米国の超 党派の議員団の訪問、日本からも次々と議員が訪問しており、今や台湾と日米との国交回 復や集団防衛のアライアンスは時間の問題となっている。 すなわち、米国も日本もすで に中国共産党の台湾への威嚇は一切容認できず、最悪の武力衝突もやむなしと腹をくくっ ているのである。 むしろ、米国の軍隊は、中国の人民解放軍からの武力衝突の機会を今 か今かと待ち構えているのではないだろうか。

特に民主党は11月の中間選挙で大敗北が予想されている。 その予想を覆す唯一の残 された方法は、有権者である米国人の多くが、武漢研究所のチャイナウイルスで百万人の 同胞を死に追いやった中国共産党のCCP(Chinese Communist Party)に何らかの制裁 が必要、成敗すべきと感じており、それを武力制裁で見える形にできるのである。 悪の イメージが強い中国共産党との戦いで一気に人気が浮上する可能性も残っているのである。 日本も国民感情として、今までの中国共産党の横暴に対して武力衝突は避けたいが、反省 を促すため何らかの方法で懲らしめるべきという認識へ変化しているとみている。 ただ、 中国共産党はいくら懲らしめられても反省は少なく、さらに面子をかけて反抗することが 危惧されるので、その前に戦意を失わせるのが一番良い方法となるであろう。

ここで大事なことは、日米台の共通の敵は中国共産党であり、一般の善良な中国の方は 敵ではなく、むしろ、台湾と同じ民主主義を共有できる仲間とみなしている点である。 2020年のコロナパンデミックやその後の戦狼外交、香港国家安全維持法の施行、度重 なる尖閣諸島への領海侵犯、一帯一路の強引なインフラ借用契約など国際ルールを無視し た常軌を逸する中国の横暴な言動や態度に、日米欧の先進国やその他の民主主義国が反発 しており、日米が台湾との国交を回復、さらに日米台が集団防衛のアライアンスを組み始 めると中国は戦意を失い、それ以降の対応も大きく変わるのではないかと期待している。

むしろ、台湾を今の危険な状態のままで放置して、中国の侵略が始まってから、米国や 日本が動いても、綿密な侵略計画を練った後の中国の侵攻は、かなりタフな戦いとなり、 日米の損害も相当に大きくなるのではないだろうか。 それより最初から、日米台で様々 な侵略シナリオを想定し、徹底的に軍事訓練を繰り返す方が、中国の侵略の可能性を低減 でき、その結果、軍事衝突の危険性も少なくできると考える。 逆に習近平主席にとって、 11月以降に3期目が確定すれば、日米台の集団防衛の同盟を理由に自ら一つの中国の解 釈を見直し、台湾はもともと独立国という解釈へ変更できれば、武力衝突やそれに起因す る中国の本格的な崩壊も避けることができるのではないかと考えている。

もともと巨大な中国がごく小さな島国の台湾にこだわり、国家を滅ぼすリスクをとる必 要は全く無いのである。 それより、台湾侵略を思い詰める気持ちから解放され、日米台 との関係改善を志向しながら、徐々に中国国内の経済回復をはかり、本土復興を推進する 方が賢明な選択となる。 台湾も国交を回復する国が増え、国連へ復帰後も、常任理事国 を主張せず自ら他の多くの国と一緒に様々なイベントに参加すれば、甘い見方かもしれな いが、逆にそれで中国との関係も徐々に良くなることを期待している。

権力闘争に明け暮れる一部の共産党幹部を除き、台湾の政府関係者にとって、大多数の 中国共産党の一般の人たちとは、互いに理解し分かり合える部分が多いはずだ。 温かい 人的な交流の中で、少しずつ互いの気持ちを分かり合い、根気よく少しずつ中国の民主化 を考えてもらう活動も必要となろう。 良い意味で、台湾人と中国人とが少しずつ互いに 分かり合う部分を探っていくサラミスライス的な人的交流の発想も必要なのではないだろ うか。 中国は自力だけでは、経済発展は難しく、日本や台湾、米国との交流を復活でき なければ、経済の再起は困難ではないかとみている。

例えば、中国では、過去30年以上にわたり、膨大な量の海砂を使った鉄筋コンクリー トでのビル建築工事がおこなわれてきた。 海砂を何回も真水に通し塩抜きする工程が必 要だが、不正に海砂をそのままコンクリートに使用して工事をするケースが今でも散見さ れると聞く。 30年前ならその比率はもっと高いであろう。 海砂をそのまま使用した 場合、早ければ20年から30年が経過すると海の塩で鉄筋がボロボロとなり、わずかな 地震でも倒壊するリスクが高まる。 そうした過去の構造物の鉄筋腐食の耐震調査は、日 本の非破壊検査技術が必要となっている。 ただ、今の敵対的な日中関係では、多くの検 査会社も中国で検査活動をしたいとは思わないであろう。 とにかく習近平主席自らが3 期目以降は人が変わり、米国や日本、欧州との関係修復に謙虚に努力しなければ、中国の 未来はかなり暗いままで国家体制も早晩、終焉を迎えるであろう。 中国に残された時間 はあまりないとみている。

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