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日本は円安が続けば株価4万円超えで再び製造立国となる

令和4年10月17日

社会資本研究所

南 洋史郎

為替市場が円安へ振れる大変動となり賭博的な投機市場の様相となってきた

149円の円安でマスコミは大騒ぎしている。 今年の3月以降、わずか6か月間で30円を 超える円安となり、久しぶりの為替相場の大変動で、金融市場のボラティリティが高く、金融市 場に大きな収益が得られる千載一遇のチャンスが到来している。 金融機関のトレジャリーなど 資産運用部門で働く人たちも、連日、目を真っ赤にして24時間、市場の動きを注視し続けてい るであろう。 最近はAIによる金融市場での自動売買システムの導入が進んでいる。 昔のような取引関係者の大きな掛け声、怒鳴り声の大騒ぎは無く、静かに淡々とコンピュータが売買を 繰り返し、ディスプレイ上で収益がどんどん積み上がっているであろう。

金融関係の経営者にとって、毎日、毎時毎分と入金口座にチャリンチャリンと金貨が舞い込み 続ける感覚の金融自動売買システムのコンピュータが金の卵にみえていると思う。 ボラティリ ティとは、金融工学の用語で株価や為替、債券などの変動パラメーターを意味しており、そのボラティリティの変動が一定方向に高くなると市場関係者の多くがその方向に売買の取引をおこない、収益を上げて儲かるようになる。 ちょっとした為替市場でのバブル、ミニバブルの発生となる。 おそらく、年末にかけて150円を基準に140円から160円ぐらいの幅で、為替市場での円安取引の攻防が繰り返されていくのではないかと予測している。 金融市場が過熱すれば、140円や160円を超える円高や円安も起こりうるだろう。

この円安取引は、経済の理屈、理論より金融情報による駆け引きが中心となる。10月27 日21:30(日本時間)に7月から9月の第三四半期の米国のGDPの成長率の統計速報値が 公表される予定である。これがマイナスだと米国景気のリセッションが明確となり、140円の円高へ向かうであろう。 逆にプラスへ転換して、今までの2期のマイナスから脱し米国景気の上向きが読めれば、160円方向にさらなる円安へ向かうと読んでいる。為替取引のこわいところは、AIでも予測可能な政治情報、例えば、15日のバイデン大統領のドル高容認発言は、円安相場の安定につながるが、その他の予測が難しい情報をどう読むかという問題があり、 その読みを間違えると巨額の損失をかかえることになる。

11月8日の米国の中間選挙で連邦議会上院(3分の1議席=34)と下院(全議席=435) で上院、下院ともに共和党が多数を占め、民主党政権のレームダック化が明確になった場合、円高か円安のどちらへ振れるかは、その時々の複数の有力な専門家の意見が市場取引に大きな影響 を与える。不可抗力的な自然災害、例えば、日本で南海トラフ大地震が起こり、海岸沿いの工 業地帯が損害を受けると急激な円安へ一時市場が動くかも知れないが、損害が軽微と分かると巨 額資金による復興需要で景気が良くなる予測となり円高に切り替わる読みもでてくる。プロで も難しい為替取引に素人が気楽に参入して収益を上げられるほど甘い市場ではない。 最初は儲けることもあるが、それで病みつきとなり、数年して全財産を失った話も聞く。要は変動の大 きい市場での為替取引は、個人にとって賭博的な投機市場になっており、最初からそうしたもの と割り切って遊び感覚でプレーできる個人なら経済や政治の勉強ができるので良い面もあるが、 勝ち負けにこだわりヒートアップする性格なら、最初から関与しない方が賢明である。

輸出企業は円安のお陰で巨額の黒字決算を計上する見込みだが次の投資が大事

為替変動の投機的な動きに注意は必要だが、日銀と米国FRBの政策金利の差が3%以上も開いている状況では、140円以上の円安トレンドは変わらないであろう。金利差がさらに大きくなる可能性があり、米国の景気状況をウォッチしながら変動を繰り返していくと考えている。当然ながら、この円安の恩恵をもっとも受ける業界は輸出関連であり、逆に恩恵をもっとも受け ない、いやむしろ深刻な被害を受ける業界が輸入関連である。ただ、日本の商取引の慣習上、 輸入した商品の値上げを簡単には受け入れないが、お客様が販売価格の値上げを受け入れるか、 仕入れ価格の上昇でも値上げせず一定の利益を確保できるとわかれば受け入れるようになる。

2019年統計では、米国向け輸出は、自動車とその関連部品、オートバイが6兆円、電子装 置、部品や機器、機械類が2.5兆円、医薬品が2千億円強あり、累計で15兆円の実績となって いる。2019年のドル円の平均為替レートを110円、2022年の輸出品目や数量が仮に同じで平均レートを145円と仮定すれば、15兆円に145円を110円で割った数字を掛け ると20兆円となり、円安効果で5兆円の巨額利益が輸出業界へ舞い込む計算となる。 一方、米国からの輸入は総額で8.6兆円であり、同じ計算方法で円安により11.3兆円と2.7兆円も物 価の上昇となる。 輸出増から輸入増を差し引いた2.3兆円の貿易黒字が日本へ舞い込む計算と なる。円安だと2019年と比べ2022年では米国向け輸出がさらに増え、輸入がさらに減 少する。2022年の日本の米国との貿易黒字額は3兆円以上へさらに増加するとみている。

同じ2019年に日本が世界中から輸入した原材料などの貿易額は、原油8兆円、天然ガス4 兆円強、衣類関連3兆円、医薬品3兆円など78.6兆円あり、同じ計算方法で円安の影響を換算 すると103.6兆円で約25兆円の輸入増となる。一方、輸出総額は77兆円なので、同様に 101.5兆円約24.5兆円の輸出増となる。一般的に円安になると輸出が増え、輸入が減って 国産への調達切り替えが起こるので、2022年は米国以外も大幅な貿易黒字を計上、結果的に 輸出企業には数兆円以上の莫大な為替差益が入ってくると予測している。

特に最大の貿易相手国の中国の通貨元がドルと連動している。 日本円の為替レートは、この 半年で1元18円から20円へ10%も円安となっている。 中国にとって、日本からの輸入は 10%値上がり、日本への輸出も10%値上がる為替変動に即応する貿易構造となっている。2019年統計では、日本が中国から輸入するトップ3は、携帯電話を中心とする通信機が2兆円、衣類服飾関連が1.8兆円、パソコンを中心とする電子機器が約1.7兆円であり、総額18.5兆円の輸入額となっている。逆に日本が中国へ輸出するトップ3は、半導体など電子部品が1兆円、半導体製造装置が9千億円、プラスチック部材が8千億円であり、総額15兆円の輸出額 となる。 日本が中国から輸入する主要製品が、日本から中国で輸出した部材で加工生産された 携帯電話やパソコンなどの最先端の情報通信機器となっている。その多くは、保税エリアでの 加工生産が中心となるが、仕入れが10%以上アップした場合、上海でのゼロコロナのロックダ ウンの影響もあり、日本国内の生産へ切り替えれば、いつでも安心、信頼できるメードインジャ パンの携帯電話やパソコンを国内にて一貫生産できる体制となる。 円安効果で最初に国内生産 へのシフトが顕著となる業界が、携帯電話やパソコンの電子機器の業界ではないかと予測してい る。 さらに情報セキュリティ対策や米国の中国に対する電子部品や情報通信などの規制がさらに厳しくなるため、電子機器に限らず、それを搭載している工作機械や家電、自動車などの日本 メーカーの多くが、国内か東南アジアでの組立生産へ大きく転換すると予測している。

日本は円安が続けば輸出企業中心に日経平均株価4万円超え再び製造立国となる

一般的に組み立てだけの工場シフトは、単純に部材を入手しそれを加工するだけの工程が中心 なので仮に省人、無人の製造ロボットを導入しても半年から1年で転換対応できる場合が多い。 来年も引き続き円安が続くことで、日本のユーザーの安心で信頼できるメードインジャパンへの需要の高まりもあり、それが追い風となって、2023年の夏以降にかなりの携帯電話やパソコ ンが、急速に国内品へ置き換わっていくとみている。 こうして様々な製品分野で、日本国内の日本製へのユーザーの潜在需要も大きいことから、大規模な日本への国内生産シフトが進むであろう。その時に今まで二の足を踏んできた省人、無人化工場へのAIロボットへの投資も大胆 に推進でき、最初から人手に頼らない自動生産工場が稼働するようになると分析している。この投資原資に円安で得られた為替差益が充当されるのではないかとみている。

輸出業界における自動車やその部品メーカー、電子部品や電子機器、工作機械などのメーカーは、来年春ごろまでの2022年度決算で巨額の円安黒字の計上があると予測している。その為替差益の収益は、国内の省人、無人化された新たな生産工場への投資に充当され、それが為替 変動による労賃コストの変動に左右されない最強の省人・無人の生産工場を日本国内に増やして いく起爆剤になるとみている。政府は、こうした国内への生産シフトを推進する輸出法人の動きを後押しするために一期か二期の短期間で経費として計上できる特別な投資減税を導入すれ ば、2023年以降は至るところで、自動化、省人無人化された最強の国内生産工場の建設ラッシュが始まり、地方経済が急速に良くなっていくと予測している。円安というピンチを地方経 済の活性化というチャンスに転換できる絶好の機会が来たと前向きな考え方が必要となろう。

日本の輸出関連企業の経営者が優秀であれば、2023年は今まで述べたような日本での部材 供給から組立、物流までの自動化された一貫生産システムの国内製造ブームが起こると予測して いる。それらは、双腕ロボットなどの組み立て加工ロボットなどを大量導入した徹底した省人 無人化を追求する、為替変動に影響されない最強生産工場になるであろう。 こうした最強の生 産工場が日本国内で次々と建設されるようになると固定費の大部分を占める労賃を激減させることが可能となる。つまり、デフレギャップを過度に意識しなくても、変動する需要に臨機応変 に供給があわせられる需要変動対応型の究極の自動生産工場システムを構築できるのである。当然ながら国内で最強の需要変動対応の自動生産工場を構築できたメーカーへの株式市場の評価 は高くなり、日経平均が3万円を超えるどころか、4万円越えも視野に入って、日本を再び最強の自動生産工場が林立する製造立国の国家へ変身させることになるであろう。

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