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岸田政権の継続にNOが民意となり自民政局激変の予感

令和4年11月11日

社会資本研究所

南 洋史郎

岸田政権へのバッシングが強まるネットメディアの論調と支持率の大幅な低下

10月から11月にかけて、岸田政権の支持率の低下は深刻なものとなっている。 10 月の時事通信の世論調査で支持するが27.4%、支持しないが43%、11月6日のJNN の調査で支持するが39.6%、支持しないが57.7%、読売新聞の調査で支持するが36%、 支持しないが50%となっている。 自民党の支持率は大きく変わっていないので、ある意 味で民意として自民党は支持するが、岸田政権は支持しないという結果が明確となっている。

11月2日から7日にかけての北朝鮮の度重なる実践を想定したミサイル攻撃は、大方の 日本人の感覚を変えて、国防のあり方について再考を促し、このままの状態では自分たちの 命まで危なくなるという危機感をもたせる契機となった。 その怒りの矛先は、岸田政権へ 向けられ、ネット論客などの強烈なバッシングの対象になっている。 参議院選以降の岸田 首相の行動や言動のチグハグさもそうしたバッシングを呼び込んで仕方がないかなと思える 点がいくつかあり、それがさらにバッシングの度合いを強め、支持率低下につながっている。

いくつかネットのバッシング原因と思える気になる点を列挙すると次の通りとなる。

1)7月8日の安倍首相暗殺事件以降の対応について
奈良県警の不手際による警備上の問題による暗殺事件の発生であり、即座に現政権の立 場で責任所在の明確化のため、警察組織や公安組織のトップの解任をすべきところそれ を放置、さらに通常、国葬なら1か月以内に実施すべきところ3ヶ月後に設定、その間 に反対運動がさらに盛り上がる結果となった。 また、内閣改造は8月15日のお盆後 の49日後に行うべきであるが、唐突に8月10日に実施、安全保障の強化など何か急 ぐ理由があれば国民も納得できるが、外相や蔵相、官房長官は在留のままで、信頼の厚 い岸防衛大臣を変えるなどそのタイミングの不可解さに不満が大きくなる。

2)中国人民解放軍による日本の排他的経済水域へのミサイル着弾への対応の不満
8月4日に中国人民解放軍による日本のEEZの排他的経済水域へ初めてミサイルが5 発着弾、緊急でNSCの国家安全保障会議を開くべきところ、それを実施しなかった。 北朝鮮のミサイルであればEEZ外でもNSCを開くのに中国には何も言えず、おと なしすぎる親中ぶりに不満が溜まる。

3)旧統一教会への対応の不満
暗殺事件に端を発した旧統一教会への国民の反発は大きく、政権として適切に対応すべき事案であることはわかるが、自民党内の議員を過度に次々と糾弾し過ぎで、その後の 二転三転する優柔不断な対応の変化にも不満が高まる。 果たして解散命令までもって いけるのかについても司法判断がある中で大きな疑問が残る。

4)財務省に配慮して物価高騰に対する迅速で効果的な経済対策を講じられない
輸入物価の沈静化のためには消費税の減税がもっとも効果があるが、財務省に遠慮され て何も言わない。 さらに25兆円から29兆円の財政予算のアップについても、自民 党内の議論がまとまる前に財務省からの進言を先に聞き、財務省が政治家を差し置いて 首相をコントロールしようとしている状況が我慢ならない。 とにかく、この国難の時 期に首相の考えや方針が定かでなく、周囲が右往左往する政治リーダーシップの欠如は 看過できず、日本を守るという正しい方向性、考えのもとで、強力なリーダーシップの ある政治を目指して欲しい。

5)防衛予算の大幅な増額に対する判断の稚拙さ
10月に中国の政治の独裁化が強まり、北朝鮮の開戦準備を危惧させる大量のミサイル 発射など、防衛費の大幅増が必要な時期に許されない海上保安庁の予算の防衛予算への 組み込み、国防強化のための増税議論など財務省の影響が強まった予算の制約への動き に対して、待ったをかける首相の動きが何もない。

6)国民感情への洞察や空気が読めない身内に甘い姿勢
国難で大変な時期に10月になって唐突に経験の浅い長男を秘書官へ抜擢する人事を決 行、身内に甘い姿勢に対して国民感情への配慮が欠落しており、失望の声が強くなる。

7)コロナの2類から5類へ変更する判断の遅さ
国民がマスク着用をなかなか止められない理由に政府判断でコロナを2類から5類へ変 更できないという問題が残っている。 一度罹患すると長期に自宅療養が必要になるな ど2類のままだと規制が厳しいので、国民性なのか相手に迷惑をかけてはいけないとい う配慮からマスク着用が日常的になっている。 いろいろな条件、例えば、検査やワク チン、治療などの費用の無償化について従来通りとしながら、2類から5類へ早期変更 が望まれているが、そのあたりの政府の考えが明確になっておらず、集団免疫化してい る中で、いつまでも中途半端な状態になっている。

G20で習近平主席の首脳会談を画策する岸田首相の外交姿勢に失望感が高まる

11月14日にG20に出席する習近平国家主席がバイデン大統領と米中首脳会談をおこ なうが、その後に岸田首相も日中首脳会議を狙っているという情報がでている。 仮に独裁 政治を志向し台湾への武力侵攻も視野に入れると公言する習近平主席と岸田首相が今会って も、相手に対して、万一台湾への武力侵攻があった場合は、日本も米国と一緒に対抗すると いう意思を示すなど相手をけん制する強烈なメッセージを伝える目的がない限り敢えて会う ことの意味はない。 むしろ会って、中国より強い調子で台湾問題に日本は口出すなとくぎ を刺され、何も言えなかった場合、その弱腰姿勢に日本側は面子を失うことになりかねず、 会うことのリスクの方が大きすぎることが懸念されている。

外交は互いの国益を守る戦いの場であり、すでに独裁体制を確立した習近平主席が日本の 首相に対して余裕をもって好感度を高める発言をする場合、逆に裏があるので要注意である。 習近平主席の3期目は予想に反して態度が大きく変わる軟化路線を歩むのではないかという 見方もある。 既にドイツのショルツ首相と会って、ドイツを通じて米国の民主党へ柔和路 線をとり始めている。 11月8日の中間選挙前に中国がドイツと一緒にロシアの核兵器の 先制使用に反対する共同声明をおこない、習近平主席による米中関係の緩和へ向けた画策が おこなわれている。 こうした独裁的な習近平主席のリーダーシップと強かな手練手管の外 交手腕をつかって反中の動きをやわらげ、ドイツやその他のNATO加盟国との距離を縮め、 中国のプレゼンスを良くすることを狙っている。

この柔和路線がもっとも危険で要注意である。 過去の歴史を紐解くとヒットラーとチェ ンバレンとの会談が思い起こされる。 柔和路線で相手国が油断した後で、突然、不意を突 いて武力戦争が起こる事件は、過去、枚挙にいとまない。 むしろ岸田首相が今回のG20 で名を上げるとすれば、こちらから会いたいとは言わず、中国から是非とも会って話をした いと近寄られる関係にまで日本のプレゼンスを高める必要がある。 それができなければ、 日本から会いたいというメッセージを発信することはご法度である。 G20でも軽く会釈 する程度で冷たく無視し続ける方が中国とは良好な関係を続けられるという政治的な割り切 りも必要なのではないだろうか。 仮に日中会談をおこなっても、ドイツのショルツ首相の 交渉力に匹敵する駆け引きができるなら、名声を高めて支持率を回復できるが、逆に弱腰の 言われっぱなしの会合で終われば、国内の評価を大きく下げ、支持率のさらなる低下につな がるであろう。 現段階では、そのようなリスクを冒してまで、こちらから媚びるように頭 を下げて会談をする必要は一切ないのである。

12月から来年春にかけ与党内で政局激変の予感がある、その時は総裁選となる

岸田政権の大臣更迭が相次いでいる。 10月24日の山際大臣、11月11日の葉梨法 相と2名の大臣が辞めた。 また、他の大臣や自民党の関係者、議員からも首相の采配、リ ーダーシップに疑問の声がでている。 8月の内閣改造後の就任早々に中国という国名を名 指しする表現は避けるように指示を受けた大臣の話など岸田政権が末期的な症状になってい る予感さえ感じる。 このままネットを中心にバッシング報道が続けば、岸田政権の先行き に不安を感じる大臣が、最悪、次々と辞表を提出する異例の事態も懸念されている。

すでに英国のジョンソン政権において、当時のスナク財務大臣が辞表を提出、それを契機 に大臣が次々と辞め、政権が崩壊、その後のトラス首相もわずか50日で辞職、現在、スナ ク首相に政権が移ったが、前途多難な船出となっている。 米国も上院は拮抗してわからな いが、共和党が下院で勝利すれば、議会が予算権をもつので、従来のようなウクライナへの 軍事支援の継続も難しくなる可能性が強まり、ウクライナとロシアとの早期の和平交渉の話 もでてくる公算が高まる。 日英米で政治混乱があっても次の政権リーダーの良し悪しによ り、独裁国家中国の外交や軍事の政策は大きく影響を受けることになる。 中国の脅威とな る新しいリーダーが現れ、日英米の政治経済の現体制をガラッと変える可能性もでている。

日本の首相、政権の倒閣には、大きく3つの方法がある。 一つ目は閣僚及び党幹部の辞 任が相次ぎ、内閣の維持が難しくなった時、二つ目は衆議院での内閣不信任案の決議、三つ 目は政権与党の自民党内で総裁選をおこない、新しい総裁を選出し、その新党首が現首相を 辞任に追い込む場合となる。 その他に重要法案の決議に反対するとか、参議院で首相問責 決議案を可決するなどの方法も考えられる。 しかし、その中で解散総選挙を避け、党の面 子を保つためには、三つ目の新たな党首選を仕掛ける方法が現実的なものと考えられている。 なお、政党の一部の議員が所属政党を離れて新たな政党をつくる、いわゆる分派による政党 活動は、政党助成金が一切支給されないので、12月入って自民党を離党し新政党をつくる 昔のような動きは起こらないであろう。

それではどんな場合に岸田首相が退任に追い込まれるキシダオロシが起こるのか、いくつ かその可能性を考えてみる。 一つ目は税制調査会や財務省が主導して新たな増税法案を進 めて積極財政派の不満が爆発した時、二つ目は安全保障の問題として国防予算など従来の約 束事を違(たが)える話を勝手に進め、保守団結の会など自民党内の保守系の会派が怒り出 し、大きな党内勢力として増殖した時、三つ目は岸田首相と自民党の支持率が青木率の5 0%を割った時などが考えられる。 他にも旧統一教会関係などの重要法案の廃案や自民党 議員による致命的な刑事事件に発展するスキャンダルなどが考えられる。

これらの可能性の中で一番高い可能性が支持率50%割れではないかとみている。 10月 の時事通信の支持率の数字は衝撃的であった。 内閣支持率が27.4%、政党支持率が23. 5%と5割ラインのギリギリのところに留まったものの、今後、11月から12月にかけて 青木率5割を切る4割台の支持率の調査結果もでたときに一気に党首選による政界再編とな るであろう。 なお、岸田首相がやってはいけないオプションが衆議院の解散ではないかと 考えている。 青木第二法則なるものがあって選挙公示前の議席数に解散直前の青木率を掛 けた議席数しか選挙後には議席をとれないという予測で、5割を切って解散すると選挙後は 公示前の議席数が半分になる可能性もでてくるのである。 ただ現実にはそれより2割から 4割多い議席数がとれることも多く、逆に民主党政権末期のように予測よりさらに低い議席 数しかとれないケースもあった。 今のところは来年春までに支持率がさらに急落、自民党 の党首選が実施される可能性が高いと予測している。 その時に次の党首で総裁が誰になる かについては興味津々であるが、自民党内の派閥トップに政治的なセンスがあればという条 件付きの話になるが、期待を込めて今度こそ高市首相になって欲しいと願っている。

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