お問合わせ
06-4708-8655

多重迎撃と飽和反撃の防衛体制が台湾での武力衝突を回避する

令和4年12月26日

社会資本研究所

南 洋史郎

米中台の武力衝突回避のシナリオは多重迎撃と飽和反撃の防衛体制の構築となる

未来予測の自主研究プロジェクトとして、2023年以降の日本はどうなるのか、世界の政治 体制はどのように変化するのかという予測が難しいテーマについて当研究所で分析を始めている。 米中における台湾での軍事衝突を回避できるのか、万一、軍事衝突が起こった時、中国はどうす るのか、その時に日本は何ができるのかという軍事や国際政治の専門家にとっても予測が難しい 分野の分析に挑戦している。 そうした分析の中で、日本を含む米中の台湾での武力戦争を回避 するための政策シナリオや回避策について整理したので私見に近いが意見として述べたい。

その政策シナリオや回避策を云々する前に武力衝突回避の基軸となる考え方は、中国共産党の 独裁政治のトップである習近平主席が、うかつに台湾へ侵攻すると痛い目に合うどころか、中国 共産党の国家体制そのものが危機に瀕すると容易に理解できる日本と米国による強い結束と互い の強みを生かした完璧な防衛体制(PMDS-Perfect Military Defense System)を構築すること ではないかと考える。 さらに中国側へもイエローライン、レッドラインを明示して、その内容 を事前に明確に包み隠さず伝えることだと考えている。

この台湾も含む日米の完璧な防衛体制であるPMDSを中国の軍事幹部へ事前に良く説明し、 万一にも武力衝突へは発展しないように互いの意思疎通を促すホットラインを継続したいと主張 することが、戦争回避につながるのではないかと考えている。 もちろん、中国は台湾への現状 変更のための侵攻を邪魔すると激高して拒否する可能性が高いが、むしろ、そうした拒絶した態 度があっても、イエローラインとレッドラインの防衛体制を事前に伝え、黙々と準備すべきこと が中国共産党の暴走を防ぎ、日米台と中国との武力衝突を防ぐ確かな方法ではないかと考える。

さて、台湾や日本を巻き込んでの米中衝突での武力戦争を回避できるPMDSとは、日米台に おける「多重迎撃と飽和反撃の防衛体制」の構築であると考える。 武力衝突の回避のためには 中国共産党側へその考え方を事前によく伝達すべきではないかと考える。 多重迎撃と飽和反撃 の組み合わせで中国からの核ミサイルの恐怖を取り除けるかについては、2035年ごろまでは 核ミサイル抑止の力を持つ在日米軍などとの密接な連携が前提となるであろう。 これを第一段 階と表現すれば、2035年頃からの第二段階においては、急速なミサイル迎撃の技術の進歩、 特にレーザーやレールガンなどの迎撃兵器が実用化の段階にくると予測しており、在日米軍の核 ミサイル抑止に頼らなくても日本独自で中国やロシア、北朝鮮(以下「中露北」という)の核ミ サイル攻撃に対して安全な多重迎撃体制を完成し、日本国内に広く配備できると予想している。

中露北の核ミサイルの脅威から日本を守る迎撃ミサイルの現状はどうなっているか

現在、2035年ぐらいまでには、研究開発中の迎撃確率が非常に高く、ミサイルに比べて安 価なレーザーやレールガン等のゲームチェンジャー的な核ミサイルの迎撃システムが開発できる という見方もあるが、それでも技術的な障壁から開発ができない場合も想定され、それまでに既 存の迎撃兵器を活用して、まずは短期間で日本全体を核ミサイルの脅威から守る優れた迎撃防衛 の体制を構築しないといけない。 現在の日本の迎撃システムは2段階となっており、最初の迎 撃はイージス艦から発射される最大射程が2千キロメートル(以下キロ)で最大射高が千キロの 範囲で核の弾道ミサイルを打ち落とすことができるSM-3(ブロック2A)であり、過去の発 射実験よりその迎撃率は9割と高確率となっている。

これで打ち漏らした場合は、航空自衛隊管轄の陸上に配備された射程20から30キロのPA C-3のレイセオン社製のパトリオットミサイルが迎撃することになっている。 過去のPAC- 3の迎撃実験では迎撃率は8割強となっている。 つまり、SM-3で打ち漏らしてもPAC-3 で迎撃できれば、理論上は98%(=1-〔1-0.9〕×〔1-0.8〕)の確率で迎撃できる計 算となる。 最新のブロック2AのPAC-3の数回の実験では、100%の迎撃確率を達成し ているが、実験回数が少なすぎるので、8割の精度で考えた方が無難である。 ただ、PAC- 3は日本の17か所に射程直径50キロで34基しか装備されておらず、1基あたり16発のP AC-3が発射できるので、計算上は600発近いPAC-3のミサイルが必要となる。 ところ が重要性は高いが緊急性が低いため、1発8億円もするので実際は150発程度しか装備されていないらしい。 射程直径100キロの新しいPAC-3MSEに置き換えていく予定であるが、それでも現時点 では、日本全体をカバーできる状態にはなっていない

SM-3の迎撃ミサイルは、最大射程2千キロ・最大射高1千キロの迎撃性能があるブロック 2Aで1発あたり40億円、最大射程1200キロのブロック1Bで20億円であり、すでに1 50発余りが8隻のイージス艦(こんごう型護衛艦4隻、あたご型護衛艦2 隻、まや型護衛艦2 隻)に装備され、その数を180発まで増やす予定となっている。 つまり1隻のイージス艦で も日本全体をカバーできるが、艦数は8隻あり、1隻あたり20発弱の迎撃率9割のSM-3が 核の弾道ミサイルから国内を守っていることになっている。 ちなみに高性能なSM-3ブロッ ク2Aは、レイセオンと三菱重工業の日米共同開発でのライセンス生産となっている。

結局、現在の日本を核の弾道ミサイルの脅威から守っている迎撃ミサイルは、150発のSM -3と150発のPAC-3しかなく、万一にも中露北からその数を超える核ミサイルの飽和攻撃 を受けた時は、相手の核ミサイルが無くなるまで、迎撃できずに日本国内が核爆弾の被害を受け 続けることになる。 1発40億円のSM-3や1発8億円のPAC-3のミサイルをケチったた めに迎撃ミサイル網を潜り抜けた中国の核ミサイルが次々と着弾、日本で数十兆円以上の核被害 を受けるという愚かで危険な状況が続いている。 当然ながら、安保3文書の成立後は、防衛予 算が増えるので、この迎撃ミサイルの数を一気に増やすとみられている。 特に精度の高い新型 のPAC-3MSEを日本全国津々浦々にもれなく配備することは、数年以内に早急に着手すべ き迎撃能力強化のためのプロジェクトになると予測している。

中国人民解放軍のロケット軍の日本に対するミサイルの脅威はどの程度か

中国のロケット軍は、習近平主席直轄の他の軍隊と独立した組織で総兵員数は10万人以上で、 核抑止、核反撃、通常ミサイルでの攻撃を任務として、その司令部は、北京市海淀区清河街道に 置かれている。 核弾頭か通常弾頭を発射できる中共ロケット軍のミサイル基地はわかっているだ けで8か所あり、日本と韓国に向けた攻撃ミサイルを配備する瀋陽(しんよう)基地、台湾向けの 皖南(かんなん)基地、東南アジア向けの雲南(うんなん)基地、アメリカ向けの豫西(よせい) 基地、東アジアの日米台向けの湘西(しょうせい)基地、インド向けの青海(せいかい)基地、 その他に晋北(しんぽく)基地と河北(かほく)基地の2基地が存在する。

正確な数字は公表されておらず、あくまで推測の数字となるが、短長距離ミサイルのSRBM (射程距離300から1500キロ)は1200発、ミサイル発射場所は300か所といわれて いる。 地上発射型の長距離巡航ミサイルのGLCM(射程距離1200から2500キロ)は 500発、発射場所は50か所。 同様に準中距離ミサイルのMRBM(射程距離1500から 3千キロ)は100発、発射場所は同数の100か所、中距離弾道ミサイルのIRBM(射程距 離5千から7千キロ)は25発、発射場所は同数の25か所、大陸間弾道ミサイルのICBM (射程距離1万キロを超え)は75発、発射場所は同数の75か所になると予測されている。 さらに2035年までに核弾頭のミサイル数を現在の500発から1500発まで増やす計画が あるともいわれている。

すべてラフな推計値となるが、中国国内に短中距離から長遠距離まで1900発、550か所 を超えるミサイル発射場所があるとみられている。 そのうち500発の核弾頭が搭載されたミ サイルが配備され、外見上は核弾頭か通常弾頭かの見分けがつかないため、日本に飛来する可能 性のあるミサイルの中で核弾頭が搭載されたミサイルの確率は約25%、4本に1本の割合で飛 来する。 例えば、東京から1200キロの距離にある吉林省の通化基地から発射された準中距 離ミサイルのMRBMの核ミサイルDF-21が東京に着弾するまでわずか9分と言われている。 イージス艦のSM-3と東京近郊のPAC-3で迎撃することになる。 数十のミサイルが同時に 東京へ飽和攻撃で発射された場合、迎撃できない核ミサイルが東京へ次々と着弾することになる。 この最悪の状況を防ぐために最初のミサイル発射を感知してから、それが通常弾頭か核弾頭かの 区別なく、日本から広範囲にわたり中国ロケット軍のミサイル基地を破壊する反撃をおこなう、 反撃能力の保有が、中国のさらなる飽和攻撃を防ぐために必要な対抗処置となっている。

中国のロケット軍は、台湾進攻を想定して、米国の空母打撃群や日本のイージス艦に対しても、 今のミサイル迎撃の技術では捕捉が難しい変則的な軌道をたどる極超音速ミサイルを開発、配備 する計画があるといわれている。 全ての中国の弾道ミサイルに変則軌道の機能を装備した場合、 SM-3とPAC-3の迎撃命中率が3~5割以下に激減する可能性も高くなっている。 変則軌 道への対策ソフトの変更や軌道を自由に変えられる小型の噴射装置を付加したSM-3やPAC- 3の改良開発も急がれている。 万一にも米国が変則軌道の極超音速ミサイルで空母打撃群が攻 撃を受けて壊滅した場合、報復としてB-1やB-2、原子力潜水艦での核も含む徹底した反撃オ ペレーションに着手すると考えられている。 その時点でロケット軍の8か所の基地やそれ以外 のミサイル発射基地は、全て核の飽和攻撃で消滅すると予測する専門家もいる。

2035年までの第一段階での現実的な多重迎撃の考え方はどうあるべきか

全ての弾道ミサイルが変則軌道をとるようになると従来のSM-3とPAC-3の二段階での迎 撃体制では迎撃できる確率が急減する。 仮に迎撃の命中率が33%へ低下したと仮定すると飛 来する弾道ミサイルの理論上の迎撃確率は55%(1-〔1-0.33〕の2乗)となる。 こ の命中率で迎撃確率を高めるため二段階から三段階への迎撃体制を組んだ場合、迎撃確率は7 0%(1-〔1-0.33〕の3乗)に上がる。 この方法で五段階の迎撃をおこなうと仮定し た場合の迎撃確率は約87%(1-〔1-0.33〕の5乗)となる。 つまり、3発のミサイ ルのうち1発を命中する確率だと5段階以上のミサイル迎撃体制が必要となる。 同様に3発の うち2発の命中率だと3段階の迎撃で96%の確率でミサイルの迎撃体制を組める計算となる。

そこで変則軌道の極超音速ミサイルの飽和攻撃での飛来を想定して、現在のSM-3とPAC- 3の二段階の迎撃体制から、少なくとも三段階、あるいはそれ以上の多段階の多重迎撃の体制を どこまで向こう1、2年の短期間で安価で迅速に対策がとれるかを検討する必要がでている。 一つ目の対策の切り口として、今ある陸上自衛隊の国産の優秀なミサイルを多重迎撃体制の中に 組み込んで、迎撃体制向けに改良して配備する考え方がある。 二つ目の対策の切り口は、海外 での実戦での使用実績が豊富で安価なミサイルを購入、配備するという考え方となる。 また、 国内で配備する場所も在日米軍基地や自衛隊基地に格納して、いざとなれば適切な場所に移動す る方法とイージス艦以外の既存の駆逐艦や巡洋艦に配備する方法、無人島に固定配備する方法な どが考えられる。

一つ目の対策としては、既に存在する国産の優秀なミサイルを変則軌道の弾道ミサイルの迎撃 用として精度を高め、改良して飽和攻撃にも耐えられる多重迎撃体制に組み込む考え方となる。 その候補として、陸上自衛隊が運用する純国産の最新の近距離と短距離、中距離の防空用地対空 ミサイルシステムを海上自衛隊のイージス艦のSM-3と航空自衛隊のPAC-3とで情報共有で きるようにした同時運用できる統合的な多重迎撃システムを構築することではないかと考える。 陸上自衛隊では、射程直径10キロの近距離の93式近距離地対空誘導弾「近SAM新」(東芝 など)、射程直径20キロの短距離の11式短距離地対空誘導弾「短SAM新」(東芝)と射程6 0キロを超える03式中距離地対空誘導弾の改良版の「中SAM改」(三菱電機、三菱重工業、 東芝)の3つの地対空誘導弾があり、いずれも性能は極めて優秀である。

中SAM改は、米国内の実験で巡航ミサイルを模したターゲット10発に全弾が命中する10 0%の迎撃率を誇る。 調達価格は、米国に配慮してPAC-3の二分の一程度に抑えられ、ミ サイルの調達数も推計で数百以内とみられている。 近SAMは、クローズトアロー、SAM- 3とも呼ばれ、国内でわずか113セットしか配備されていない。 射程直径が狭くなるほど配 備すべきミサイル数を急増させる必要があるが、今まで多重迎撃という統合的な迎撃ミサイルの システム構築の思考が欠落していたため、陸上自衛隊と海上自衛隊、航空自衛隊が縦割り組織の 弊害でバラバラに運用されてきたためと考えられている。 これらを統合して、短期間で調達す べきミサイル数を大量発注することで完璧な防衛体制を構築する発想が必要となっている。 例えば、射程直径千キロを超える海上自衛隊のイージス艦のSM-3、射程直径数百キロの陸 上自衛隊の中SAM-改をさらに改良開発した新型の「中SAM新」、射程直径50キロのPAC -3、射程直径20キロの新型の「短SAM新」、射程直径10キロの新型の「近SAM新」の5 段階の多重迎撃体制を組んで、日本国内の離島を含む全ての地域の防衛を網羅できる多重迎撃体 制を短期間で構築する考え方が必要となっている。 大都市圏は5重迎撃、地方都市圏は4重迎 撃、都市近郊の市町村は3重迎撃、山間部や離島は2重迎撃といった多重迎撃体制の構築が急が れている。 複雑な地形に対応した新しいタイプの国産の巡航型の迎撃ミサイルも必要となる可 能性があり、いずれも高速、高性能な極超音速の弾道ミサイルを打ち落とせる迎撃性能があれば、 戦闘機や無人機などありとあらゆる飛来物体の攻撃をかわせられると考えている。

二つ目の対策として、海外での実戦経験が豊富で安価なミサイルの購入、配備という考え方が あるが、その有力候補として考えられるのが、アイアンドームやウクライナで導入されたノルウ ェーのNASAMS、独のIRIS-T防空システムなどである。 今後、短期間でもっとも配 備数を増やさないといけない迎撃ミサイル群が、近SAM新と短SAM新の射程直径20キロ以 内の迎撃ミサイルとなる。 国内メーカーも参画できる国営兵器工場などで数千以上の大量生産 をおこなうとしても、ミサイル性能の改良開発をおこない、新たに工場をつくることを考えると 少なくとも3年から5年の配置準備期間が必要となる。 それまでの緊急調達的な発想で数百レ ベルの規模で、将来は国産への切り替えを念頭に置きながら、海外からの調達を検討せざるを得 ないと考える。 置き換えた後の海外の防空ミサイルは、おそらく再輸出が可能と考えられるの で、東南アジアやインドなどへ格安で有償供与する可能性もでてくる。

飽和反撃のベースにあるテニアン破壊シミュレーションとはどんな考え方なのか

第二次世界大戦末期の日本への原爆投下直前の状況を振り返ると広島や長崎向けの原子爆弾を 搭載したB29が、旧ドイツ領のマリアナ諸島テニアン島の飛行場から飛び立ち、帰還している。 つまり、もしも当時にタイムスリップができ、原子爆弾を搭載したB29の爆撃機が発進できな いようにテニアン島の飛行場を急襲して、B29の爆撃機も含め、通常兵器で飛行場を徹底的に 破壊することができたなら、原子爆弾の投下を阻止することができたと考え、それを現在の状況 に応用して、核攻撃を未然に防ぐ考え方を「テニアン破壊シミュレーション」と呼んでいる。

核保有国と非核保有国との戦いにおいて、非核保有国が通常兵器で戦う場合に常に念頭に置い ておくべき考え方がこの「テニアン破壊シミュレーション」となる。 ただ、破壊工作の対象目 標がロシアや中国のような核大国になると核ミサイルの発射ができる移動式の大型車両や爆撃機 が駐留する飛行場、格納庫、核ミサイル専用のミサイルサイロ、原子力潜水艦など数百か所以上 におよび、短中距離の小型核爆弾のミサイルともなると特殊な戦闘機や戦艦など数千か所におよ ぶ可能性もでてくる。 一度に一斉破壊する飽和反撃以外は核の脅威から自国を守ることは難し くなる。 つまり、一斉同時破壊の飽和反撃でなければ、その破壊をまぬがれた核弾頭が搭載さ れたミサイルが次々と報復攻撃で発射され、いくら優れた多重迎撃の体制があると仮定しても、 核攻撃による都市破壊の危険性をゼロにすることはできないと考える。 一斉同時破壊の飽和反 撃のオペレーションを実行できた後は、当面はその国の核攻撃の脅威、リスクを大きく低減でき、 長期に平和な状態を保つことが可能となるので、その成果は非常に大きいといえる。

飽和反撃と核保有による抑止についてどのような防衛体制を構築すべきか

日本は多重迎撃体制による中国からの核攻撃に対する「盾」と多重迎撃では抑止できない強大 な中国の核ミサイルの飽和攻撃を阻止するために米軍と密接に連携し一斉同時核ミサイル破壊と いう飽和反撃の「矛」の機能を保有することで矛盾の無い防衛体制を築こうとしており、それが 中国との武力衝突を回避する有力な方法であると考えているのではないかと推察している。 そ のために一斉核破壊の飽和反撃を想定して、反撃ミサイルとして2027年までに最大500発 のトマホークの導入を決めたのであり、在日米軍と連携し数千発規模のスタンドオフミサイルの 強力な飽和反撃の体制を確立できるまで、少なくとも数年以上の期間がかかるとみられている。

その数年以上の準備期間において、核保有国との武力衝突を防ぐためのもう一つの重要な考え 方が、期間限定の核保有、具体的には核弾頭を搭載したミサイル保有による抑止となる。 それ は、米ソ冷戦時代、互いの核兵器の報復合戦から双方に大きな破滅をまねくことを十分に認識、 牽制し合って、2国間で核兵器を使用しなくなる「相互確証破壊」という考え方に基づいている。 ただ、日本が核を保有することで日米中の間で「相互確証破壊」が成立するかどうかについては 疑問視する考え方も一部にある。 9割を超える核ミサイルの迎撃率の多重迎撃体制の構築が見 込まれる日本のような国が、日米同盟による米軍との密接な連携により、強大な飽和反撃の能力 を保持した場合、ミサイル迎撃の防御能力が疑問視される中国のような国との間で「相互確証破 壊」が成立するかどうかについて意見がわかれるところである。 むしろ米軍と密接に連携した 通常兵器での核ミサイル拠点への飽和反撃の「矛」の能力だけで、十分に当初の目的は達成でき るのではないかという考え方もあり、今後、軍事専門家の間で議論が継続されるとみている。

日本は今まで核兵器を持たず、作らず、持ち込ませずの非核三原則の国会決議を堅持してきた が、仮に「持ち込ませず」の原則を撤廃して、「持たず」、「作らず」の非核二原則にした場合、 その時点でインド太平洋軍とその傘下にある在日米軍が国内に核兵器を持ち込んだとしても、そ れを政府としてとがめず、むしろ日米同盟のパートナーである米軍が核兵器を保持していること を公表することで高い抑止力効果を期待できるのではないかとみている。 米軍が自分たちの保 持する核兵器を使用できるかどうかは未知数だが、保持しているという情報そのものが中国の台湾 進攻への強い抑止力になると考えられる。 その場合に横田基地など国内に常時配備している ミサイルには一切触れない方が無難であり、佐世保港に一時的に寄港する原子力潜水艦など短 期間、日本に滞在する米軍について言及すべきではないかとみている。

以上のような「多重迎撃」と「飽和反撃」のミサイル機能を有する体制を構築して、なるべく 人間同士が戦わなくてすむように兵器の無人化やAI化、兵力のロボット化、省人化、多能化を 強力に推進しながら、一方で最新の無人化、省人化の兵器装備への開発投資の充実をはかり、国 営工場による強固な国産体制を構築することで、日本は21世紀型の完璧な防衛体制PMDSを 構築できるのではないかと考える。 以上の分析と抑止力向上の考え方が、2023年以降の富 国強兵の平和な日本を実現する考え方の一つになれば幸いである。

※上記文章、PDFファイル、入手、ご希望の方はこちらをクリックしてください!

ページトップへ戻る