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米国の大統領選の変化を先取りできる政治が求められる

2023年8月14日

社会資本研究所

南 洋史郎

米下院で弾劾の恐れのあるバイデン大統領とオバマのスキャンダルで揺れる民主党

米国では、民主党のバイデン大統領とオバマ元大統領の政治スキャンダルが、ユーチューブ等のSNSの報道番組や記事でクローズアップされている。 バイデン大統領は、息子のハンター・バイデン氏と一緒にウクライナや中国、ロシアから賄賂を受け取り、政治的な便宜を図った贈収賄(ぞうしゅうわい)の罪で連邦捜査局FBIの捜査対象になってきた。ハンター氏が別件の脱税と銃の違法所持という軽い罪を認め司法取引に応じることで、 それ以外の重罪となる贈収賄の問題は不問となる予定であった。ところが、7月26日のデラウェア州の連邦裁判所でもう一度、審議し直すこととなり、今後、司法取引が成立しなければ、大統領も巻き込んだ贈収賄に関する裁判が継続されることになった。

さらに米国議会の下院では、7月25日に多数派を占める共和党のマッカーシー下院議長が、この贈収賄の問題に対するバイデン大統領への弾劾訴追の可能性を示唆している。 すでに下院では、この問題の調査委員会が設置され、金銭の授受が絡む不正行為にバイデン大統領とその家族が関与した可能性を調査している。政府側は、陰謀論と非難して調査への協力を一切拒否しているが、 7月31日、米下院の監視・説明責任委員会の聴取で、ハンター氏と一緒に働いていたウクライナのエネルギー会社ブリスマの元取締役デボン・アーチャー氏がバイデン大統領やその夫人も贈収賄に深く関与したと証言している。 今後のデラウェア州の連邦裁判所での審議状況にもよるが、下院でバイデン大統領の弾劾審議がはじまり、決議される可能性もでてきている。

一方、オバマ元大統領は、7月24日にマサチューセッツ州の広大な私邸の中の湖で、専属調理人のキャンベル氏がボートから落ち溺死した事故で注目を浴びている。 水泳ができるキャンベル氏が湖岸から30メートル離れた2.4メートルの深さの湖底に沈んでいたのである。 通報もあったが、溺死してから12時間も経過している不自然さから単なる事故ではなく、元大統領も関与した殺人事件ではないかとも噂されている。オバマ元大統領への疑惑は、過去にもいろいろ噂されてきた。オバマゲートというオバマ政権時代のトランプ元大統領への盗聴と監視、 さらにそれが判明するとFBIやCIAと一緒になってトランプ大統領の腹心の部下であったマイケル・フリン氏へロシアとの違法取引の嫌疑をでっちあげ罪をかぶせようとしたのである。いろいろ証拠もそろっていたが、司法省や検察が陰謀論として片付け、不問にしている。

ディープステートと関係の深い民主党の中で異彩を放つケネディ人気の高まり

ディープステート、影の政府と呼ばれる陰謀論的な組織を構成すると言われるCIAやFBI、司法省などの連邦政府機関やウォールストリートに代表される金融業界、軍需産業やその産業と深い関係にある新保守主義のネオコンと呼ばれる政治家集団は、 米国の政治経済に絶大なる影響力をもってきた。特に民主党政権は、長年、このディープステートと揶揄されるCIAやFBI、司法省の幹部たちや軍需産業に利権をもつネオコンの政治家集団と二人三脚で政治をおこなってきたと言われている。 一説にフランクリン・ルーズベルト大統領やトルーマン大統領の時代から密接な関係が築かれてきたらしい。唯一の例外として、1961年就任のジョン・F・ケネディ大統領は、こうした政官財の闇(やみ)勢力と一線を画する独自の政治を追求して圧倒的な民衆の支持を受けてきた。 しかし、1963年11月22日にダラスにて暗殺された。その後、立候補した実弟のロバート・F・ケネディ氏も1968年6月に大統領選の遊説中に暗殺されて黒幕にCIAの工作関与が疑われている。

来年の民主党の大統領選挙には、このケネディ家から、暗殺されたロバート・F・ケネディ氏の息子のRFケネディ・ジュニア氏(以下「ケネディ氏」という)(69歳)が立候補している。 大手のテレビ局や新聞は、極左の変人のレッテルをはり、その存在を無視し続け、立候補を表明しているバイデン大統領の支持率が何倍も高いという怪しげな調査結果まで公表し、とるに足らない泡沫候補的な扱いにしている。 ところが、最近、そのケネディ氏の実際の人気が非常に高いことが判明、バイデン氏と肩を並べるどころか、2024年の民主党の大統領候補に指名される可能性が強くなってきている。 ユーチューブで放映されるインタビュー番組のアクセス数が十数万回から百万回超えで好意的なコメントが多く、米国人のケネディ人気の高さをうかがわせる。 バイデンと比べると一回り若く、体力もあり、政治的な主張もわかりやすい。すでにFOXの保守系TV番組は、頻繁にバイデンの駄目ぶりをコミック風に笑いのネタにし続けている。

歯に衣(ころも)を着せぬケネディ氏の率直な発言も有権者を喜ばせている。当選したら、大手メディアが勝手に情報を検閲する行為を禁止し、国民が検閲なしにあらゆる情報を知ることができるようにすると発言した時は、 討論会の聴衆から大歓声が挙がっている。客観的にみて、失言失策が多く、痴呆の疑いがあり、贈収賄の暗い過去までもつ80歳を超える超高齢のバイデン大統領と比較できないほど優れた政治的なカリスマ性ももっている。 ただ、マイナス点もいくつかある。30年ほど前に難病の局所性ジストニアの痙攣(けいれん)性発声障害をわずらい、ガラガラ声で聞き取りにくいところだ。本人から以前はもっと重症であったが、半年以上前に京都(京大付属病院?) で治療を受けて聞き取りやすくなったので心配はないというコメントをされていた。確かに数年前の動画の声と比べると格段に良くなっている。また、叔父のケネディ大統領の暗殺にCIAが絡んでいると断言し、 トランプ氏と同様にディープステートや戦争好きなネオコンを退治し、ウクライナ戦争は即刻終わらせるべきだと主張している。ただ、ワクチンはユダヤ人や中国人以外の白人や黒人を狙った可能性があるという民主党らしくない人種偏見的なタブーな持論を述べて、 大統領候補としての言動に不安を感じさせる部分も多い。討論会の質疑応答で的外れと感じるコメントも時々散見され、今後の選挙戦では、右腕となる優れた選挙、政策アドバイザーも必要ではないかと思われる。

トランプ候補への度重なる起訴が逆に共和党の大統領指名を確かなものにする

共和党のトランプ元大統領は、2024年の大統領選挙で共和党の大統領指名を受けるつもりであるが、それに対して4月にニューヨーク州の大陪審は、元ポルノ女優に口止め料を支払った罪で4月に逮捕し罪が軽微という理由で拘留せずに直ぐに釈放している。 6月にはフロリダ州の連邦地裁が大統領時代に持ち出された機密文書の記録の改ざんの罪の起訴状を公開した。8月1日には、首都ワシントンの連邦大陪審が、2021年1月6日に起こった米国議会議事堂乱入事件について国を欺いた罪で起訴したが、8月3日に出廷したトランプ氏は無罪を主張している。 さらに14日にジョージア州の大陪審は、2020年の大統領選挙で南部ジョージア州の票集計に介入した罪でトランプ前大統領や元側近ら19人を起訴した。トランプ氏が選挙管理を行う州務長官に結果改ざんを求めた電話記録があるとも主張している。この音声の一部は当時、ネットで公表されたが、 起訴の証拠にならないという意見もある。大規模不正が可能な郵便投票の再集計結果が信頼できず、再々集計を要請してそれを州が拒否している。この時点で起訴に必要な「納得できる理由(Probable Cause)」が見つからないという法解釈もできるらしい。

ディープステートの本丸と言われる司法省の特別検察局は、選挙活動を始めたトランプ氏の支持率を下げるために起訴、有罪のための様々な司法妨害を強化しているともいわれる。 しかし、どれも有力な証拠がなく、有罪に持ち込める材料は出ないとみられている。特に議会乱入事件は、当時のペロシ下院議長のもとで強引に弾劾裁判がおこなわれ、 異例の反対尋問がないまま下院を通過させ、上院で否決されたものである。立法府で完全否定されたものを国民の多くから信用されていない司法省で有罪にすることは不可能ではないかという意見もある。 それどころか、この司法省のなり振り構わない起訴による妨害的な行為は、米国民から強い怒りを買い、共和党支持者におけるトランプ支持が6月に4割強から6割へ急上昇、二番手のフロリダ州知事のデサンティス候補との差を3倍以上に広げている。 さらに8月の2件の起訴でトランプの支持率は7割程度にまで上昇すると予測されており、来年春の共和党の大統領指名が有力視されている。

唯々諾々とバイデン大統領に従う岸田首相に新大統領への政治対応が期待できるか

米国の大統領選挙の趨勢から、現段階では民主党はケネディ氏、共和党はトランプ氏が選出される可能性が高いと見られている。 さらに皮肉なことに司法省の妨害工作がさらにエスカレートすればトランプ氏勝利、暗殺未遂のようなCIA妨害工作と疑われる事件が起こればケネディ氏勝利というコメディタッチの不真面目な予測を信じそうになるほど今の民主党のバイデン政権は不人気である。 主に高金利政策による経済の低迷と治安の悪化、大統領の汚職疑惑に対する不満が大きく、7月調査では、支持率40%と低迷している。

また、2024年の大統領選挙では、下院で共和党が多数派となったため、2020年に問題が大きかった郵便投票制度を見直し、規制を強化、従来のような投票所での本人確認の投票を中心にすると見られている。 この時点でトランプ氏が大統領へ返り咲く可能性はさらに高まると考えられている。なぜなら、いまだに米国の共和党を応援する有権者の多くが、2020年の選挙には許しがたい不正があり、バイデン氏はその不正選挙で誕生したと考えられているからである。

さらに2021年1月の就任から2年半が経過したバイデン大統領に対する評価も手厳しい。明らかに拙速(せっそく)なアフガン撤退劇やウクライナへの米国の不関与の公表、それが結果的にロシアの侵略を促したと考えられている。 ネオコン介入が疑われるウクライナへの巨額な武器供与、大量の不法移民による国内混乱、高インフレと急激な金利上昇といった数々の問題は、トランプ政権が続いていたら起こっていないと考える米国人が多い。いまや共和党支持者にとって、 バイデン政権は疫病神や貧乏神のような存在になっているのではないだろうか。

8月18日に岸田首相は、その米国のバイデン大統領と会うために保養地のメリーランド州のキャンプ・デービッドへ出かけ、韓国の尹大統領と一緒に日米韓によるわずか4時間程度の首脳会議のために渡米する。 17日往路と19日復路を考えるとわずか数時間の会議のために往復3日間の出張を強いられる。よほど大事な会議なのであろう。議題は公表されていないが、 北朝鮮とロシアの連携強化による北朝鮮の原子力潜水艦や核兵器の開発に関する安全保障策、朝鮮有事における日本の自衛隊の役割、拉致問題への対応など具体的な事案が話し合われるとみている。 LGBT法案などバイデン政権の要請に唯々諾々(いいだくだく)と言いなりになってきた今までの状況から察すると今回の日米韓首脳会議でも、米国主導で朝鮮半島有事における日本の関与について具体的に議論される可能性が高い。

中国による台湾有事や北朝鮮による朝鮮半島有事に対する日本の軍事支援に関する基本方針も米国主導で決められるのであろう。 米国という宗主国に隷属する属国のような歪(いびつ)な屈辱的な取り決めだけは回避して欲しいと願うしかない。米国の新大統領がトランプやケネディ、 その他であっても、バイデン大統領以上に強(したた)かで、東アジアの安全保障に対する日本の自衛隊による具体的な軍事関与を要求する可能性が極めて高い。 日本側も従来のような受身の曖昧な態度に終始することは許されず、憲法9条改正は言うまでもなく、核抑止も含めて日本による東アジア地域の共同防衛構想も主張できるぐらいのリーダーシップが求められている。 その時の日本の首相が誰になるかはわからないが、今までの岸田首相のような隷属的な対応だと日本の国益を大きく損(そこ)ねる判断がなされる懸念も払しょくできない。

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