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岸田首相の増税懸念と政治スキャンダルで自滅していく自民党

2023年8月15日

社会資本研究所

南 洋史郎

円安効果でGDPは上昇しているがその朗報を打ち消す岸田首相の増税懸念

8月15日のGDP速報で4月から6月の3ヶ月間のGDPの成長率が名目で2.9%(年率12%)、インフレで割り引いた実質で1.5%(年率6%)という数字を記録した。 この年率で成長したとすると名目ベースでGDPは、2022年の563兆円から2023年には591兆円まで増える予測となっている。 その内訳をみると民間住宅が1.6%(年率6.5%)、企業設備が0.8%(年率3.2%)、公共投資が2%(年率8.3%)も伸びている。さらに円安により輸出が4%(年率17%)増え、輸入が7.4%(年率▲26.5%)も減っている。 つまり、円安効果で輸出需要が伸び、企業による生産工場等の投資需要が増え、エネルギーや輸入材料の国内調達へのシフトによる輸入需要の減少が顕著となっている。

ところが家計消費が名目で▲0.1%(年率▲0.7%)、実質で▲0.5%(年率▲2.2%)も減っており、GDP上昇は岸田首相の功績ではなく、円安という外的要因による輸出産業などへの設備投資や金利が上がる前の住宅投資が伸びたことが主要因とみている。 国内需要がマイナスに減ったということは、むしろ国民の可処分所得に余裕がなくなり、消費が抑制されたためと考えている。

こんな時は、国民の可処分所得を増やすための所得減税が必要だが、何を勘違いしたのか、岸田政権になって、上がり続ける物価への対策は無く、高くなった光熱費やガソリン代を下げる減税処置や助成対策も見られず、 その結果、可処分所得は減り続け、生活が苦しくなっているのが国民の実感である。これでは家計消費が増えることを期待するのは難しい。岸田首相は、国民から求められている減税政策を打ち出せず、むしろ財務官僚や自民税調の意見に聞く耳を発揮し、 所得控除の廃止など実質的な増税となる数々の施策を検討する本末転倒な経済音痴ぶりを発揮して、それに対する国民感情が悪化し続けているのである。

国民生活の苦しさを理解できない自民党議員の政治スキャンダルには呆れる

円安による物価高で生活が苦しく国民がカリカリしている中、火に油を注ぐような自民党議員のSNS投稿に非難が殺到した。 7月24日から三泊五日で女性局メンバー38人がフランスのパリへ視察旅行に行ったが、その団長である松川るい議員がエッフェル塔前で優雅に写真を撮り、頓珍漢なコメントとともにSNSへ投稿、大炎上したのである。 しかも自分の次女を旅行に連れていき、元外務省キャリアの人脈を活かし日本大使館に子供を一時預けするなど公私混同が目にあまる行動も判明、関係者の顰蹙(ひんしゅく)をまねいている。 この費用、総額5億円とも言われ、各議員の自己負担はわずかで、残り大部分を自民党本部が支出しているが、政党助成金など元々は国民の税金で党費を支給している中でその非常識な金の使い方に非難が殺到している。

さらに8月4日になって、秋本真利議員が日本風力開発株式会社の社長より3千万円の収賄を受けたとして、東京地検特捜部の家宅捜査を受け、政務官を辞任、翌日、自民党を離党した。既に日本風力開発の社長は贈収賄を認めており、秋本議員の起訴は避けられないと言われている。 秋本議員は、自民党の現職の大臣と親交があり、特捜部は今回の摘発でさらに自民党の再エネ利権に絡む政治家の摘発も視野に入れていると噂されている。秋本議員の私生活もいろいろ問題があり、自民党の内部の利権構造に大きな捜査のメスが入ることになった。

また、文春砲による内閣府の木原官房副長官に関するスキャンダルも、ネット中心にメディアで盛り上がっている。 その内容は過激なものが多く、詳細は割愛するが、一番の問題は殺人容疑で警視庁捜査一課を中心に30人以上の刑事が、 家宅捜査に乗り出そうとしたところ、2018年10月以降、家宅捜査が無くなり、急に捜査を縮小することになり、それに対する政府関与の疑念が巻き起こっている。 警察組織のトップは、警察庁長官であるが、その上は内閣府の国家公安委員長であり、2018年9月まで小此木八郎委員長が担当、10月から山本順三委員長が引き継いでいる。 現在の警察庁長官は、警察の判断では、これ以上の捜査は不要という見解であり、今後は、木原官房副長官の個人的なスキャンダルだけの問題となりそうである。ネット論調は、ここまで世間で騒がれ問題が大きくなった以上、官房副長官の辞任は避けられないという見方となっている。

岸田首相の増税懸念と数々の政治スキャンダルで自滅していく自民党

時事通信が8月初旬に実施した世論調査によれば、内閣支持率は26.6%まで下落し、ついに内閣存続の危険水域である20%台に達した。 自民党の支持率も21.1%まで減少、その合計は47.7%となり、青木の法則と言われる政権が維持できないとされる50%の危険ラインを割り込んでいる。 その他の世論調査でもさらに厳しい結果となる可能性が高く、数字からすでに10月以降の早い時期に衆議院の解散、総選挙をおこなっても、政権維持は難しいと予測されている。 従って、岸田政権は来年9月の総裁選までは総選挙はおこなわないという見方が強くなってきている。

岸田政権は、一昨年10月に就任以来、実にスキャンダルの多い政権であった。昨年7月の安倍首相暗殺後の統一教会の問題では、4閣僚が次々と辞任することになり、今年の5月下旬にはご子息の宴会写真の問題が起こり、 6月に強引なLGBT法案可決が物議を醸しだし保守の岩盤支持層の離反をまねいた。さらに腹心の部下である木原誠二官房副長官のスキャンダルが文春砲で取り上げられて、辞任せざるを得ないほどの大きな問題となってきている。 7月は、松川るい議員のSNS炎上問題、8月は、秋本議員の贈収賄の問題といった数々の政治スキャンダルに翻弄されてきた2年足らずではなかったかと思う。

岸田政権や自民党の支持率はこれからも落ち込み続けていく見通しである。自民党の内部で政権交代を主張する古参の有力議員があらわれなければ、このままズルズルと政権は続いていき、 折角、円安効果で日本経済が上向いて上昇していこうとする中、万一でも、増税と緊縮の財政路線政策へ間違って舵取りをおこなった場合、日本経済が再び大きく失速する可能性が高いとみている。 それを防ぐ方法は、思い切った減税による国民の可処分所得の向上と積極財政による公共投資の促進によるGDPの拡大という減税と積極財政がセットになったGDP成長路線政策しか国民から信頼を再び取り戻す有効な対策はないとみている。

すでに強引なLGBT法案可決で、保守の岩盤支持層の多くが、自由民主党とは、保守ではなく、「自由のリベラルな民主党」という認識に様変わりしている。 そうしたアンチ自民党の意識に切り替わった有権者は、地方選など今後あらゆる選挙において、維新や国民民主、参政党、その他の保守系新党へ投票先を転換する可能性が極めて高い。 台湾での麻生副総裁の戦う覚悟発言は、ネットメディアの保守系の識者から大好評であったが、そのような自民党議員はごく一部であり、大多数の自民党の議員は、必死で頑張っている国民のために身を粉にして働いているとは全く思えないのである。

自民党が猛省して、これから命懸けで国民のための政治体制へ転換できなければ、ひたすら自滅の道を歩み続けると予想している。

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