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SNS政党政治への変革が起こり政策を競う時代が到来する

2023年9月8日

社会資本研究所

南 洋史郎

テレビや新聞のマスメディアの政党政治への影響力を凌駕し弱めるSNSの台頭

いま政治の世界は、インターネットを活用したSNS政党政治への変革が静かに進行している。 SNSとはソーシャル・ネットワーキング・サービス(Social Networking Service)の略称で、 その代表的なものは、日本では5千万人ユーザー(以下推計値)がいるエックス(旧ツイッター) が有名である。7千万人ユーザーのユーチューブや1千万人ユーザー、百万人以上の有料会員の ニコニコといった動画配信サイトも政治に強い影響力を持つ。今までのマスコミ、産業的メディ アに対して、新しいネットによる公共的メディアをソーシャル・メディアと呼び、SNSをその 一部と定義する考え方もあったが、最近は多くのソーシャル・メディアをSNSと呼んでいる。 特に若い世代は、スマホやタブレットでSNSを駆使して情報を収集、LINEでコミュニケー ションをとり、テレビを視聴せず、パソコンを持たない人が増え始めている。

SNS政党政治とは、こうしたエックスやユーチューブ、ニコニコなどの国民に広く普及した SNS機能をフル活用して、党員集めから、党運営費を賄うための資金集め、立候補する政治家 の選定から選挙活動の応援、さらに議員選出後の政策主張から日頃の政党活動まで政治全般につ いてSNS機能を中心に活躍する政党を意味する。従来のような街宣車による選挙運動よりは、 主な政党活動がSNS中心となる。有権者が保守政党を探す時にネットを検索すれば、容易にそ の政党のホームページへアクセスでき、政党推薦の立候補者のプロフィールから秀逸の政策主張 まで、有権者が投票すべきかどうかを決める重要な決め手情報が提供され、さらに深掘りが必要 となれば、SNSを通じて気軽に政党が提供する勉強会、研修会などに参画できるのである。何 より重要なことは、SNSでの政党の政策の主張そのものであり、そのポータルサイトに掲載さ れる立候補者は、政党の考え方、主張を政治にうまく反映できる人物であることが裏付けられる のである。逆に言えば、特定の人気のSNS政党に推薦された候補者は、その政党のお墨付きを もらって、有権者が安心して投票できるクオリティの高い候補者であるとも言える。

以前よりSNSが選挙、政策と言った政党政治に影響を及ぼす兆候はあったが、今ほどSNS が政党政治に強く、深く影響を及ぼすことはなかった。その影響力は、大手テレビ局や新聞社を 凌駕し始めている。従来のマスコミの有権者への影響力が弱まる中、政党もこのSNSでいかに 評価されるのかが、選挙の当落を決め、政策を決定する重要な要素になってきている。テレビと いう放送メディアと比較した場合のSNSの特徴は、放送のような自主規制の検閲が少なく、常 にホットなリアルな情報を入手できるリアルタイムの即時性である。さらに正義感から来る鋭く 真実を追求するジャーナリズムの原点とも言える大衆目線の報道姿勢もSNSの真骨頂となって いる。一度配信された動画を後で検索しアーカイブで何度も繰り返し視聴できる時間的な制約の ないフリーアクセスの利便性も大事な要素となる。

人気のSNS政党に優秀な志を持った政治家が集まり既存政党は急速に衰退する

リアルタイム、ジャーナリズム、フリーアクセスのSNS3機能を有権者が活用し政党、立候 補者を選択する時代へ政治が大きく変化している。実はテレビ局が衰退、消滅をまぬがれるため にはSNS3機能を有する独自の動画配信サイトの構築が必要となっている。テレビとネットの 両方のダブル宣伝効果が得られると規制が厳しすぎ、不満が高まっているユーチューブ利用者を かなり取り込むことができるようになると予測している。つまり、放送業界がテレビネット時代 の新たな戦略を推進できれば、広告宣伝の市場も放送系の動画配信サイトが上位を占めるように なるのであろう。テレビネット戦略が、放送業界の生き残りには必要不可欠なのである。

さて、SNS政党に話を戻すと有権者が魅力に感じる政策を主張できる数十万から百万を超え るアクセス数をキープできる人気の政党が存在すれば、その政党ポータルサイトに掲載してもら うだけで、政治家としての力量が認められたことを意味する。有権者も安心してその政治家に投 票できるので当選確率も高くなる。SNS政党政治が隆盛になると今まで既存政党を支持できず、 選挙を棄権し投票して来なかった無党派層の若い有権者が投票所へ足を運ぶようになる。保守系 のSNS政党が選挙活動の中心になると平成から令和にかけて投票率が5割前後と低迷する時代 が続いたが、7割前後の投票率の昭和の時代に戻り、投票率が2割アップすることで、政治の世 界も今までの既存政党から新しいSNS政党へ新陳代謝を促すのであろう。

これから国政選挙、地方選挙ごとにSNSが中心になると既得権益に胡坐(あぐら)をかき、 二世、三世の世襲議員が多い自民党のような政党は、真っ先に衰退する運命となる。LGBT法 案のトランスジェンダーのように保守を自認していた自民党議員が、当選後にいつの間にか利権 に目覚め「今だけ金だけ自分だけ」の保守とは到底言えないリベラルを自認する議員へ変身して も、心ある保守系の有権者は泣き寝入りをせざるを得なかった。野党にも頼れる保守政党が無い 中、投票を棄権するのが唯一の反発手段と考える有権者も多かった。しかし、信頼できる保守系 のSNS政党が次々と登場するとその政党公認の議員へ安心して投票できるようになり、選挙の たびに魅力的な候補者が増えれば、票が分散、僅差で勝ち抜くSNS政党の議員も増えていくと 予想している。つまり、既存政党がどんなにSNSで活躍したくても、人気が無ければ誰もクリ ックをしないので、アクセス数は少ないままであり、人気のSNS政党には勝てないのである。

このまま自民党への信頼が揺らぎ続け、衆議院の解散があった場合、自民党と公明党が過半数 を超えることができなければ、維新や国民民主など保守系を自認する野党や場合によっては、参 政党のようなSNS政党との連立政権の時代も到来するかも知れない。この連立政権により自民 党が今まで放置し続けた憲法9条の改憲やミサイル防衛網の拡充、外資による土地や株式の所有 規制、移民受入れ法案の見直し、GDP成長を促すための積極財政への転換、国民の可処分所得 向上のための減税政策などの積み残し政策が次々と具現化されることを期待したい。このプロセ スを経て、国民の安心で安全な生活実現のための保守系国政政党として評価され始めるとSNS 政党への見方も大きく変化するとみている。逆に自民党や公明党、立憲民主党などの既存政党の 投票率が減少し続ける傾向が顕著となり、地方区や比例区でSNS人気の高い政治家、政党が 次々と集票、当選する時代がやってくるのであろう。

保守系SNS政党で国政政党は参政党だけだが、将来は百田新党が大化けするかも

現在、SNSを駆使した保守系の政党はいくつか存在する。保守のSNS政党の代表格は参政 党である。昨年7月の参議院選挙で国政政党になったが、国会議員は一人だけであるが、今年4 月の地方選挙で地方議員を百名も輩出し、来年以降の国政選挙で数名以上の国会議員の当選が予 想されている。最近、党首交代が起こり、松田先生が代表からおり、カリスマ的魅力をもつ事務 局長で参議院議員の神谷氏が代表も兼務、権力を一か所に集中させ、国政政党としてさらに飛躍 できる体制の強化に着手している。党員も10万人になると様々な意見をもち、稀に組織破壊的 なメンタルの方も混じることもあるので、強力に一つの方向へ引っ張っていくためには即断即決 のワンマン体制が必要不可欠となる。時に憎まれ役も引き受けざるを得ないこともあるが、詳細 はわからないが、やむを得ない事情もあったのであろう。

新党くにもりは、チャンネル桜という老舗(しにせ)の保守系の動画配信サイトの支援を受け ながら地道に活動をされている。残念ながらアクセス数は低く、保守系のSNS政党として広く 認知されているとは言い難い。他に日本改革党や日本第一党など小さなSNS政党はあるが、そ の存在すら知らない人が大半である。リベラル系のSNS政党で国政政党として有名な代表格は れいわ新選組である。元俳優で参議院議員の山本太郎氏が党首として活躍、令和元年の結党以降、 わずか5年も経ずに衆議院議員3名、参議院議員5名の国会議員8名、地方議員54名の規模に まで党を拡大している。反グローバリズム、日本を守る、脱原発、消費税廃止を標榜し、日本回 帰の社会変化の中で、左派色が強く、参政党とは対極をなしている。

最近では、ベストセラー作家の百田尚樹先生が創設した百田新党(仮称)が保守系SNS政党 として注目されている。ジャーナリストの有本香先生と一緒に登録者数20万、アクセス数常時 20万から40万をほこる「あさ8」という人気の保守系のネット番組を運営されている。ライ ブ動画配信もおこなっているが、LGBT法案成立における自民党の強引なやり方に反発、奮起 して、政党立ち上げを表明、結党宣言は10月17日となっている。幅広い人脈を活かし、従来 にない新しい政治活動が期待されている。現段階で詳細は公表されていない。ただ、SNS政党 として、国政政党にまで飛躍させるためには、実現可能性の高い優れた政策が必要となる。さら に経験が豊富な元議員や現職の議員の加入も必要になるであろう。

秀逸の保守政策と有能な候補者、魅力的な「策」と「人」から構成される政党であれば、次の 国政選挙や地方選挙で善戦できると予想している。立候補者の中には、既存政党に残っても落選 する確率が高く、選挙費用を自腹で賄(まかな)っても、人気が高い百田新党のようなSNS政 党へ加入を希望するケースも考えられる。今まで短期間で成長、発展した参政党やれいわ新選組 の特徴をみると来るものは拒まず、思いが強ければ過去は問わずといった政党へ受け入れる温か い包容力や寛容力、垣根の低さも政策同様に重要な要素となっている。百田新党が保守系SNS 政党としてどのような新機軸を打ち出せるかが注目されている。参政党を高校野球、れいわ新選 組を社会人野球と形容すれば、百田新党はプロ野球のような政党になる気がするという声も出て いる。もしプロ野球のようなSNS政党になれば、これは既存政党にとってかなりの脅威であり、 投票率2割アップの波に乗って大化けすれば、突然、与党へ大変身する可能性も否定できない。

SNSでの岸田首相と自由民主党の不人気ぶりが大幅な支持率低下と連動する

れいわ新選組、参政党、百田新党という有望なSNS政党のこれからの活躍を期待する中で、 SNS上では不人気な岸田首相と自由民主党について語ることは気が引ける。SNS上の最近の コメントを読むと20歳から30歳台の若い世代からの岸田首相への厳しい意見が相次いでおり、 その中でも早く辞めて欲しいと政権交代を望む声が増えている。要は呆れるほど不人気であり、 何を発言しても批判の対象となっているのである。世論調査のグリーンシップによれば、直近8 月の内閣支持率23%、不支持率69%の数字は、首相の不人気ぶりを裏付けている。

9月の内閣改造への期待感も全く無く、国民から厳しい批判を受け、支持率がどんなに低くな っても、鵺(ぬえ)のように10月以降も政権を維持し続けるのであろう。その面では米国のバ イデン政権と似ており、日米首脳会談で兄弟のように仲の良い二人の姿を拝見すると類は友を呼 ぶで、日米関係は安泰と勘違いするかも知れない。ところがその米国では、来年の大統領選挙を 前に大変なことが起こっている。バイデン政権になってから、米国へ流入する不法移民が急増、 カリフォルニア州では950ドル以下の窃盗を減免する法律が施行され、治安が急速に悪化して いる。大麻の合法化が進み、医療用と嗜好用の大麻使用が可能な州は、カリフォルニアやニュー ヨーク、イリノイなど18州に及ぶ。その影響で大都市の治安も悪化、ホームレスも増えており、 インフレと高金利、景気減速で倒産企業もじわじわと増え始めている。

ウクライナ戦争も日本では、欧米の主要メディアの情報からウクライナが領土奪還のため戦い を有利に展開しているという報道が中心となっている。ところが米国では、共和党のトランプ元 大統領を応援するタッカー・カールソンという司会者が、退役軍人とのインタビューでロシアが 意外と善戦し、ウクライナの死傷者が40万人にのぼり、もはや戦争の継続が難しいという話を 紹介、ロシア有利、早期停戦という世論を盛り上げようとしている。流石にこの話は情報ソース が不確かなので信じがたいが、万一にも事実に近い情報なら、バイデン政権が窮地に陥る可能性 が高い。同様に台湾有事の危機が迫っているが、いざという時にバイデン政権が台湾を裏切り、 助けないかも知れないという不安は払拭(ふっしょく)できていない。岸田首相も有事には日米 同盟の米国の動きに翻弄(ほんろう)されて優柔不断な行動をとり、それが逆に中国共産党によ る戦争誘発をまねく懸念もでている。このような不安や懸念をぬぐい切れないのは、悪評が飛び 交うSNSの影響で岸田首相や自民党を信用できない人たちが増えているためと分析している。

一般に経済が低迷、不景気になると内閣支持率は低下する。ところが日本経済がまあまあ順調 なのに支持率低下ということは、岸田首相の不人気ぶりを物語っている。実際、株価をみると3 万3千円前後で推移し、円安効果が大きい自動車や電機、精密機械、機械の業界は元気が良い。 一方、今まで輸入比率が高かった農作物、水産物、石炭、石油、天然ガス、アパレル、繊維製品、 化学品、パソコン、スマホなどは生き残りをかけて、国内調達へのシフトや安価な新しい海外の 生産調達先の開拓、開発を進めている。中国の政情不安に右往左往して悩んできた企業が、脱中 国のお陰で本来の事業に専念できるメリットが大きいこともわかってきた。そうした企業の中に は、中国はもう真っ平ごめんと密かに中国と関わらないという経営方針をうちだす企業も増えて いる。つまり、親中の経団連と真逆の脱中国の方針を推進する民間企業が急増しているのである。

今後の政局動向として解散総選挙を後回しにするほどSNS政党には有利になる

岸田政権や自民党への支持率の低さから、今年後半から来年前半まで解散総選挙は起こらない という見方が主流となっている。逆に支持率が上向くなど新たな展開がでてくれば、立憲民主党 や維新などの野党は選挙態勢が整っておらず油断しており、参政党やれいわ新選組といった新興 のSNS政党も国政選挙にうって出るほど有力な候補者擁立が進んでいないという憶測もある。 内閣支持率が低く、まさか解散総選挙なんて起こらないというムードの時が、絶好の解散総選挙 のタイミングという見方もある。
支持率が低く、SNSなどでバッシングを受けても、いざ選挙になると自民一強は変わらず、 要は選挙に勝てるかどうかは、解散の仕方でいくらでも勝ち抜けるという考え方もある。その場 合、解散総選挙で国民へ是非を問うための「大義」と「内閣改造」の良し悪しが勝利の鍵になる とみられている。過去も自民党は、郵政民営化や消費税延期など国民支持を受けやすい「大義」 と国民受けする魅力的な人材が要職に就く「内閣改造」で解散総選挙を勝ち抜いてきた。岸田首 相もSNS上の悪評や支持率低下の逆境をバネにこの「まさか」のタイミングと保守層に強烈に アピールする「大義」、例えば「9条改憲」で解散総選挙をおこなえば、大勝利は無いが、少な くとも過半数を維持し、政権安定を狙えるかも知れないという裏読みもできる。その時のネーミ ングは「逆張り改憲選挙」といったものになるのかも知れない。
新興のSNS政党がいくら世論誘導を企(たくら)んでも、政権与党として数々の実績を築き 上げてきた自民党は依然として強大であり、政権交代と言った話はまだまだ夢のまた夢のお伽話 (おとぎばなし)である。しかし、社会的な潮流は、SNSによる政党政治が主流になる時代が 静かに確実に到来している。それがある日突然、閾値(いきち)を超え、怒涛(どとう)のよう な投票率の急上昇をまねき、既存政党から新興のSNS政党への新陳代謝を促すような流れにな れば、れいわ新選組や参政党、さらに百田新党といった有力なSNS政党が国政へ大量に議員を 送り込むようになるのであろう。その大変革が近いか遠いかは、今後の岸田政権の政治の舵取り の良し悪しにかかっている。その意味で9月の内閣改造は、その行く末を占う大事な試金石にな るような気がする。

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