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日本は中国共産党一党独裁の怖さを認識し事業撤退を推進せよ

2023年12月7日

社会資本研究所

南 洋史郎

日米欧の民主主義社会で共産主義社会の中国が資本主義経済で活躍する大きな矛盾

15年以上前に米国に住む知人より面白いエピソードを聞いたことがある。 当時、中国共産 党幹部の子弟が大量に米国の有名大学に留学、 人脈を広げるためパーティーがおこなわれていた。 そこに招かれた日本人の知人が、中国語を知らないふりをして、 中国人のエリートの学生同士の会話を拝聴したという。 「我々中国人は、一人一人は優秀なドラゴンなのに集団になるとうまくいかない。 ところが、日本人は、一人一人は豚のように従順でおとなしいのに、集団になると突然ドラゴンに変身し活躍するので驚きだ」という内容の会話だったらしい。 おそらく、共産党幹部の親からそのような話を聞いていたのであろう。

豚のような日本人や日本企業、実に言い得て妙な表現である。 当時、中国では安価で優秀な 労働者を雇えて儲かるという話を聞いて、 大量の日本企業が中国へ進出していった。 中国共産 党の幹部の目から見れば、どんなに一所懸命に頑張っても、結局は一党独裁の共産党の所有物と なって思い通りに操られる存在であり、最後に丸々と太った豚になって、ドラゴンである共産党 が支配する中国の胃袋の中におさまる。 そんなことも理解できず、馬鹿な連中だなと思ったに違いない。 その養豚経済と昇竜政治の中国共産党にどっぷりと身も心も捧(ささ)げてきた日本人や日本企業の末路は悲惨である。

今の中国で独裁的な共産主義体制を続けていけば、早晩、民主主義社会で資本主義経済の繁栄 を目指す基軸通貨圏との軋轢(あつれき)が増して人民元安となり、通貨への信認が急速に低下、デフォルト、 財政破綻のリスクが高まることが危惧されている。 さらに国家資本主義、社会主義的な政治経済の仕組みの中では、 市場の需要に対応したきめの細かな供給体制を構築する ことが難しく、過当競争、過剰生産、過剰在庫、大量失業のマイナスの経済連鎖の輪、 ループからはなかなか逃げ出せない。 そのため、様々な産業を短期間で創造しては、量産効果でバブル を生みだし、やがて崩壊、 その後に大量の不良債権の山を築き上げ経済破綻となる可能性が高くなる。

さらに今の中国の政治の仕組みを分析した時に過去の共産主義体制の政治プロセスにみられた 「一党独裁、個人独裁、個人崇拝」へ変化する流れを確実に歩んでおり、経済破綻に留(とど)まらず、社会崩壊までまねくことが懸念されている。 ただ、ソ連のスターリン、中国の毛沢 東、北朝鮮の金日成といった個人崇拝の政治領域にまで到達した場合、国全体が宗教化した状態となり、 一般の民衆の精神、心まで支配できるようになる。 ちょうど中世のキリスト教国のように21世紀の今の社会経済の仕組み、常識は通用しないが、 精神的な満足を追求する共産思想 の宗教化された国家体制だけが長く続くことも想定される。
果たして中国共産党の習近平独裁 政権が、個人崇拝の領域にまで到達して、これから長期にわたり中国で実権を維持して、 独自の政治経済体制を歩み続けることができるかを分析してみた。

中国共産党の習近平による独裁政治の体制は継続されて今後もさらに強化される

図表にて習近平独裁の政治体制と中国共産党の今後の動向に関するマトリックス分析をおこなった。 縦軸に中国共産党が独裁体制を続ける場合と集団体制へ転換する場合、横軸に保守的 な国家主義を志向する場合とリベラルな国際協調を志向する場合で 今後中国がどのような政治体 制を推進するかを考察してみた。 まず、習近平の独裁政治体制の維持のために「集団政治体制」を志向する中国共産党の共青団(共産主義青年団)や太子党などのエリート出身者の登用を極力排除し、 党内クーデターが起こる可能性を未然に防いできた。 また、側近で疑わしい幹部を次々と粛清しており、 その弾圧強 化により政権転覆のリスクを軽減させている。 その粛清プロセスは、ロシアのプーチンのやり方に似通っており、 国防省や外相、軍幹部など側近を次々と排除している。

また、今の独裁体制が続く限り、鄧小平や江沢民の時代のように日米欧との国際的な協調を重視した「改革開放体制」の政治へ戻る可能性は低いとみている。 むしろ習近平はそうした派閥 で力のある政治家を次々と失脚に追い込んできた。 一方で日米欧と対極をなす社会主義的、全 体主義的な国家との国際協調には熱心であり、 ロシアやイラン、北朝鮮、その他の独裁政治を是 認するアジアやアフリカ、中東諸国と同盟関係を強化する方向へ外交の舵を切っている。

また、国際ルールを守る日米欧には追随せず、中国へ進出した先進企業へ独自の技術ノウハウの開示を半ば強制し、それらを中国企業へ移転させ、 その後は圧倒的な安さを武器にその分野の 産業市場を席巻する政策も推進してきた。 今もシャープを買収した台湾企業の鴻海(ホンハイ)を通じ、 虎の子のコピー複合機の技術を中国へ移転しようとしている。 過去も顔認証や新 幹線、半導体、液晶など様々な日本の先進技術が中国企業に吸い取られ、 その後に低価格品が市 場を席捲(せっけん)、大事な商権を次々と奪ってきた。 これを嘆いた専門家が、 中国は技術ノウハウをどん欲に吸い取るドラキュラのような国だと憤慨していた。 国際ルール無視の恐ろしい国家であり、 すでに米国は軍事技術への転用が危惧される半導体などの先進技術に厳しい規 制をかけている。 日本も中国への技術ノウハウ移転には厳しくなるべきであるが、 親中の売国的な今の自民政権では、スパイ法ですら制定できておらず、今後も大事な技術ノウハウが盗まれ 続けると予想している。

習近平独裁や共産党一党独裁に反発し、民主的な選挙のもとで複数の社会主義的な政党を選 択、集団指導の新たな中国の政治体制を志向する 「民主政治体制」を指向する反体制グループも 存在する。 こうした反体制の集団への締め付けや取り締まりを強化するため、 欧米でスカイネットの通称で揶揄される「天網」(テンモウ)という監視カメラとAI搭載のコンピュータ・ネットワークが連動した監視システムが 都市部を中心に隅々まで普及している。 国外逃亡によ る海外での反体制活動も抑制するため、渡航制限を加えて阻止し、渡航後も海外の主要都市で 「海外警察」と言われる中国当局による海外の中国人への違法な取締りの強化がおこなわれている。 従って中国が共産主義以外の「民主政治体制」になることは考えにくい。 以上より共産主義の民衆化の「集団指導体制」、共産主義の国際化の「改革開放体制」のいずれの方向にも進まず、 ましてや民主主義への転換につながる「民主政治体制」は監視システムで 弾圧しており、今後も習近平による「独裁政治体制」 は続いていくとみている。

習近平の共同富裕による企業の共産化が進展すると外資系企業の撤退が加速する

習近平の独裁政権は、日米欧の中国経済に対する懸念には一切耳を貸さず、ひたすら社会主義的な経済改革を静かに進めている。 具体的には、共同富裕の思想によりアリババやテンセント、ファーウェイなど名だたる大企業の経営者たちがその独裁体制に従属し、 共産党による経営 介入、体制管理を受け入れてきたのである。 家電分野でも、日米欧で多国籍企業として活躍する家電トップのハイアールですら CEOのトップが中国共産党の中央委員会候補委員に就任している。

今や中国を代表するあらゆる大企業へ中国共産党が経営に深く関与し、到底、資本主義と言え ない共産党による独自の経営のスタイルが先進国の市場を 席巻し始めている。 つまり、大手、中小にかかわらず、いかなる中国企業でも、すでに中国共産党の支配下にあると いっても過言ではない状況が生まれているのである。 企業は株主や従業員、消費者や地域のためにあるという 資本主義の社会通念とは異なり、 全ての企業は、中国共産党のため、民衆のために存在し、皆と経営資源を共有しながら、 事業活動をすべきという考え方へ転換する必要がでている。 まさに 人民の人民による人民のための会社経営が理想となっているが、 果たしてそのような考え方の会 社が持続的に繁栄して生き残ることができるのかは疑問である。

常識で考えれば、共産党の役人関与による経営となれば、中国の企業の国際競争力は下がり、 国内市場の売れ行きが低迷、 外資系の企業が真っ先に逃げ出すこととなる。 実際、バブル崩壊 後のデフレ経済の中で、中国国内の消費市場は冷え切ったままであり、 社会主義的な改革を進め る中国企業から外資が次々と撤退を検討し始めている。 細かな需要予測をせずに大量生産してきた電気自動車も大量の在庫を 抱え始めており、バブル崩壊が懸念されている。 ロシアは、昨 年2月のウクライナへの武力侵攻以降、 日米欧との経済取引がほぼ止まったままであり、中国も 習近平の共同富裕による企業経営の共産主義化という壮大な社会実験が始まってから、 日米欧の 有名企業の撤退が相次いでおり、その動きは今後ますます加速するであろう。

台湾有事への懸念が日米企業の中国撤退を加速させ日本人や米国人が逃げ出す

帝国データバンクの調査では、概数になるが2022年6月時点で中国に進出している日系企 業は1万3千社、 そのうち製造業が5千社、卸売業が4千社、全体の5割の6千社が上海市に集中、過去10年で2千社近い企業が撤退した。 特に上海の日系企業を直撃した ゼロコロナ政策の影響は大きく、これが日本企業の中国撤退を加速させる契機になっている。 2023年以降も撤退企業は増加して、 数年以内に企業撤退が本格化、数千社前後にまで激減すると予測している。 万一にも台湾有事が起こり、中国と日米の部分的な武力衝突にまで発展すれば、 即座に日米欧による経済制裁、金融制裁が発動される。 その時点で、中国の国内全域が厳しい物資統制 による戦時体制に突入、 大混乱となる可能性が極めて高い。 つまり台湾有事では、中国国内の 日米欧の企業活動は止まり、ロシアのように貿易、金融取引が完全遮断されることになろう。

日本では安全保障上の中国リスクが深刻になっているが、現地にいると日本と変わらない普通の生活ができるので、 カントリーリスクに鈍感になりがちである。 ところが日本人がスパイ容 疑で過去17名も不可解な有罪判決を受け、 現在も服役中の人が5名もおり、中国に在留する日 本人の間で中国の生活リスクが認識されるようになってきた。 そうした影響からか、 ピーク時 に13万人を超える中国の在留邦人は減り続け、2023年に10万人を切るレベルにまで減っ てきている。 米国人の拘束者数は2百名を超えると言われ、 中国国内の米国の多国籍企業は2 千社弱で、製造業は70万人近い現地雇用を生み出しているが、 昨年、米国の企業トップが相次 いで生産拠点を他国へ移管する計画を公表、 今後、中国撤退が本格化すると予測されている。 つまり、すでに大方の日米の大手企業は、中国国内での事業拡張を断念、 身の安全を最優先に中 国からの事業撤退の決断をしているのである。

万一にも台湾有事が起これば、当然ながら、現地の日本人が大量に拘束される可能性が高い。 その時は日本政府に救済できる手段が限られるので、 日本本社から中国へ日本人を赴任させた企業が全責任を負わざるを得なくなる。 日本国内では、中国ビジネスの危険性を知りながら、 中国へ赴任させた親会社の責任を追及する声も高まり、マスコミから企業の経営責任を追及するバッシング報道もより厳しいものとなろう。 すでに中国に 駐在する日本人を日本へ召還させる企業も増えており、年末年始に帰国後、中国へ戻らない動きが顕著となろう。 当局への配 慮から中国での外資系企業の アンケートでは、本音を聞くことは難しい。 地政学リスクが高まる中、日米欧の外資企業の調査で、今後も事業を維持、拡大するという意見が主流を占めること が多いが、それをそのまま鵜呑みにするマスメディアは少ない。 中国当局から撤退時に不必要 な干渉を受けないように静かに中国事業を縮小し続け、 事業をたたむ会社も急増するであろう。

日本は中国共産党一党独裁の怖さを認識し事業撤退を推進せよ

中国共産党の習近平独裁体制は盤石(ばんじゃく)であり、今後、資本主義とは完全矛盾した 社会経済体制が強化される中で、 様々な経営上のリスクが顕在化していくであろう。 不思議な ことにこの大きな社会変化を中国で長く暮らしてきた人ほど認識できず、 今まで通り穏便に問題なく仕事ができ、暮らせると考えがちである。 海外で暮らし始めるとどうしてもその国に愛着 が生まれ、 その国の人たちのために頑張ろうと考えがちである。 特に日本人はそうした善良な メンタリティをもちたがる稀有(けう)な民族である。 人や会社を豚にたとえ、飼育し食べる 養豚システムのような社会経済の仕組みを考える国では、 そのような善良なメンタリティをもった人たちが、その国のために事業を営み、生活を続けることは難しい。

中国共産党の一党独裁体制のもとでは、仮にそれが個人独裁の政権ではなく、民衆化された共産思想の集団指導体制の共産政権でも、 全ての土地や資本などの国富を一部の少数の共産党とそ の幹部のみが支配するのである。 ある意味で利権政治の中でも、 究極の利権政治を合法的に推 進する国家であるともいえる。 それは財政破綻や経済破綻をものともせず、国家、国民全体を宗教的な共産思想で 支配する社会であり、外資系の企業経営者や外国人には到底、理解できない矛盾だらけの社会経済の仕組みなのである。 この中国共産党の一党独裁の怖さを知れば、 その国から逃げるという決断は当然の帰結であり、一刻も早く事業をたたんで日本へ無事に帰国できることを祈りたい。 分析に時間はかかったが、 すべての資金や技術ノウハウを貪欲に飲み込み 続ける恐ろしい国、それが共産党に支配された今の中国であると言わざるを得ないのである。 その状況が少しでも良くなることを祈りたいが、習近平独裁政権では残念ながら好転させること は難しいとみている。

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