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消費税の増税不況で金融機関の優勝劣敗が明確となり預金倒産が起こる可能性が高まる

過剰貯蓄、融資激減による資金循環の悪影響とどう戦うべきか

消費税を導入した財務省中心に消費税のメリット、消費市場には影響は少ないという論法を展開、特に社会保障が増えるから消費税を増やすという話になっています。消費税だけをとらえたら国民全員が反対ですが、社会保障に使うなら財政赤字という借金も多いので、優しい日本人の多くが消費税やむなしという意見になります。ところが、消費税が閾値の5%を越えて8%、10%と増税されていくと消費は落ち込み、投資は減退し、所得税や法人税がさらに減損するので、財政赤字は増加し続けます。逆に消費税を再び5%へ戻すか、全廃して余剰消費、余裕消費、贅沢消費が生まれたら、経済が成長、発展して景気はみるみる良くなります。

実は財務省含め政財界の幹部は、消費税が消費を減退、デフレを助長させる本源的な要因であることを的確に認識しています。ところが政官業の「消費税利権(デフレ利権)」と呼ばれる利権構造があり、大企業、特に勝ち組の大企業の経営者にとっては、消費税で国内の経済が停滞した状態が、事業拡大や収益向上といった面で一番好都合なのです。
政治家も好景気より若干経済が停滞している方が、財政出動しやすく既得権益の人たちによる票の獲得が容易になって当選しやすくなります。財務省も消費税増税は確実に税収の増加が読め、采配権限が強化されるので、三者の利益が一致する形で消費税を容認、推進してきた背景があります。

さらに都市銀行から地方銀行、信用金庫、生命保険などほぼすべての金融機関は、消費税の増税によるデフレの深刻化、預金増による安全確実な国債での運用により、一定水準の利益を確保してきました。中小企業や零細企業に貸し出しをおこなわず、預貸率が年々下がって、信用金庫で50%を切る金融機関もある中、運用金利、すなわち預金金利の原資を稼ぐのは至難の業です。ところが、リスクの高い中小、零細企業に無理に貸し出しをしなくても、管理監督している財務省の音頭で国債をたくさん買い込み、それを運用すれば、確実に利益を上げることができます。

どんな経営者も難しい中小企業への融資より、楽で確実に利益が上がる国債運用の方を選択します。10年物国債で1%弱ですが、それでも10兆円の国債を買えば、数百億円以上の金利収入が毎年得られて、金融機関として収益の多くを確保できます。預金金利は1万の2から5の0.1%にも満たない超低利なので、ほぼ全額に近い金利収入が利益になります。国債運用が100兆円になれば、金利収入だけで数千億となります。

国から金融機関への金利支払の額、実に年間10兆円、これが国債費として毎年、金融機関へ支払われるのです。防衛費、教育費の二倍の巨額の金利なので、防衛・教育の倍支払いで日本の金融機関は潤っているのです。これ全て税金であり、言い換えれば、日本の金融機関は税金で補填を受け経営を持続できているといえます。

この状況で景気が急速に好転して、運用金利が上昇すれば、国債費が上昇するので、政府が困ります。また、金融機関も株式や外国の債券で運用して一時的に高収益が得られても、リスクも高いので、欧州の経済危機や中国の経済崩壊など不安要因が大きい中、再びリーマンショックのような問題が起こることを懸念します。かくして消費税によるデフレ不況は適度に心地よい状態を保っており、むしろ、日本銀行がどんどん国債を購入し始めたら、リスク0の安全な国債の運用市場が細るので、まずは消費税を引き上げてデフレを持続させ、金利が低い状態を維持するのが政府、財務省や金融機関にとって都合の良い真実になります。金融利権以外に円安輸出利権、介護利権、人材ビジネス利権、激安流通利権、貧困対策利権などデフレ不況で事業規模が大きくなり、許認可権の裁量幅の広がりで監督官庁の予算が拡大、不況で活動の規模が大きくなる業界や企業が、消費税による不況の継続を歓迎します。

こうして金融機関は、消費税が8%、さらに10%になれば、財政赤字がさらに増加、預金は増え続け、巨額の国債を買い込んで運用していきます。従って、消費税増税は大歓迎であり、困って倒産する企業は若干増えるが、過去、20数年間のデフレ不況で、企業の体力も強くなっており、日本経済は安泰で大丈夫と言い聞かせ、もっと国債で運用し利益を上げることを考えます。

ところが今回の閾値5%を越えた消費税増税は、じわりじわりと日本経済を蝕んでいき、想定を超えて倒産、消滅する企業が増えていきます。預貸率の大きい金融機関は、不良債権が一気に増え、倒産の危機に直面、逆に預貸率の小さい金融機関は、預金が移転、殺到するので預貸率が損益分岐点を越えてさらに小さくなり、わずかな預金の金利すら支払えない状態になります。こうして金融機関の優勝劣敗が明確になり、預金が急激に増える勝ち組の銀行や信用金庫では、金利をさらに下げ、手数料がとれる時間外を増やして、今の順調な国債運用による安全確実な経営を維持しようと努力します。

日本銀行は信用不安を防ぐため、不良債権が膨らんだ破綻しかけの銀行へ日銀特融をおこなうと同時に国債への信認を維持するため、国債買い上げの量を増やします。すると金融機関の中に、信用不安で急激に増加する預金に対応した国債を購入できず、一時的に国債金利と預金金利が逆ザヤになって経営がおかしくなる金融機関がでてきます。これが人類の歴史で経験したことの無い「預金倒産」であり、逆ザヤ状態を継続せざるを得なくなり、銀行経営が突然おかしくなることが現実化します。

預金は、銀行にとっては負債なので、金利はどんなに低くても必ず確保しないといけません。銀行の預金金利は0やマイナスにする訳にいかないので、想定外の膨大な預金が1、2ヶ月の短期間で殺到すると従来約束していたわずかな金利すら支払えない状態が一時的でも発生します。そのわずかな逆ザヤの信用不安が、連鎖的に市場の不安心理を駆り立て、銀行間の資金融通に支障を生じさせ、銀行の連鎖倒産を引き起こすことになるのです。

そんな馬鹿なことは現実に起こらないと思われるかも知れません。ところが預金倒産は現実に起こる可能性の高い深刻な問題であり、倒産すると預金保険では1000万円以上は保証しないので、複数の銀行に預金分散していない多くの貯蓄をもっている富裕層や高齢者が困る状態になります。 例えば、10兆円の預金に対して年間20億円の預金金利を支払っている地方銀行があるとします。ある時、その預金が突然3倍の30兆円になって、年間60億円の預金金利を支払う必要がでてくると仮定します。従来なら国債を購入してその運用で逆ザヤになることはありません。ところが、預金が急増する金融機関が増え、国債の人気が高まり、運用金利が急激に下がり、これ以上国債購入による運用ができない状態がでてきた時点で地方銀行や信用金庫のような経営体力の弱いところはひとたまりも無く破綻します。
これが預金倒産です。ただ、預金倒産しても、大量の預金は残ったままなので清算しても戻ってくると思いがちですが、一度倒産すると銀行が保有する資産価値は激減します。
例えば、融資している中小企業の中には、銀行からの貸し出しがストップして連鎖倒産するところもでてきます。結局、1000万円以上預けていたお金の多くは戻ってこず、それがさらに銀行や信用金庫への不信感をあおって、社会の信用不安を増大させます。

預金倒産は、数行(庫)レベルで発生する場合、銀行や信用金庫が利用する金融市場や機関(信金中央金庫等)から一時的に資金調達をすれば起こりません。ところが数十行(庫)以上で一気に過剰な預金流入があり互いに疑心暗鬼になって資金を融通できなくなった時点で預金倒産が起こる危険性が高まります。当然ながら、日銀特融で破綻を避ける金融オペレーションがおこなわれますが、過剰な預金の流入で破綻するという従来では考えられない事態に社会不安が増幅されることになります。

                                   以 上

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