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寓話で日本経済の問題を考える(その2)

次に政治を任された弟の国王は、じっと兄の失敗を観察してきました。兄は自分と違って勉強ができ、優秀な大学も卒業し秀才でした。ただ、自分の損得を先に考える利己的な性格が災いし政治では国民を苦しめ続けました。その無能な裸の王様のあわれな姿に心を痛めてきました。 国王には不向きと早くからわかっていましたが、自分から辞めると言わない限り辞めさせることはできません。何をしてもうまく行かない中、重病を患い退任しました。 ついに弟国王が、どん底の日本を救うために登場します。 弟国王は180度発想を転換して、全く新しい国の運営方法を考案します。 まず、自分の配下にある中央銀行に命じ、莫大な国富、財宝を担保に紙幣を大増刷、日本国証券を発行して、それを中央銀行に購入させ、巨額の財政赤字の国債を完済しました。これで毎年巨額な返済を強いられた財政負担から解放されました。 次にこれ以上財政収支の赤字が増えないように一工夫しました。 行政官の人数や給与を大幅に削減するリストラや事業仕分けといったケチな話ではありません。不景気な時代に民間企業の受け入れが難しい行政官を大量に失業させるリストラ政策は、反感を買うだけでうまくいかないことは兄国王の姿をみて十分わかっていました。 すなわち、財政赤字を黒字化するには、国庫収入を一気に増やすか仕組みを変えて支出を一気に減らすか2つの方法しかないことを熟知していたのです。 そこで、国の主導で税収以外の新たな収入を増やし、行政の仕組みを変え新たに経費を減らす方法を編み出しました。 まず、事業の将来性はあるが、民間企業には無理で国が手がけるしかない巨大プロジェクトの開発に先ほどの日本国証券で調達した莫大な資金を投入しました。 自然エネルギー送電システム開発、ロボット兵器開発、メタンハイドレート開発など様々な未来プロジェクトが組成される中、行政官や企業に勤める人たちにやる気が起こって、元気が出てきました。 従来と違うことは、これら新しい巨大プロジェクトを推進する独立した行政機関に、自主性を保つことができるよう資金調達から開発後の事業化まですべて独自でできる環境を用意したことです。 資金調達では、新しく公益資本市場を創設、そこで中央銀行を通じて潤沢な資金が得られるようにしました。 その際、その公益事業の成果が徹底的に調査チェックされ、非効率な組織運営をしていたら資金が止まって、事業を撤退せざるを得ないようにしました。 するとどうでしょう。 毎年予算獲得の陳情に来ていた人たちが全く来なくなり、税収や国債収入がなくても自分たちで事業を継続、発展できる機関が急増し財政支出が激減しました。しかも、国は公益的な各機関の資本を保有しているので、成功した機関から毎年配当金を受けとり、新たな収入を増やすことができます。 次に日本国を大きく10のブロックの州にわけ、税収からその使い方まで全てを各州の州知事に権限委譲しました。 関東州、中京州、関西州には国の機関、首都機能を分散、それ以外の州に国の支援機関との連携をはかってもらい、他州に比べ著しく劣っている行政機能を補完、補充させました。 こうした支援サービスの拡充で、州毎で国民生活の不公平感が大きくでない工夫をとりました。 各州に国政の大部分の運営を任せると国の仕事は、防衛、外交、連邦財政、連邦政策といった限られた部分に集中すればよく、政権トップにかなりの政策自由度が生まれます。 さらに高齢者対策、すなわち年金対策にも力をいれました。 高齢者に生涯現役を目指してもらい、働ける環境を整備し75歳や80歳になっても働く意思さえあれば活躍できる国主導の職場環境の創設に力を入れました。 特に教育サービス機関の充実には力をいれ、高齢者が培った技能や知恵を若い人たちが簡単に学べる職業訓練学校を全国に配備していきました。施設を新しくつくらなくても、既存の廃校校舎や公民館をリフォームすることで学校は短期間で増やすことができました。 また、収入のある高齢者には、年金を削減、働けば年金生活より年収は増えるが、もらえる年金総額は抑制されるシステムを考案、導入しました。 すると驚いたことに高齢でも週2日から3日以上働いて社会と接点を持つ人たちが急増、働くと心身ともに元気になり、年金や健康保険、介護給付の負担が激減しました。 一方、職にあぶれていた若者たちも高齢者職人の知恵やノウハウを学ぶ中で、様々な技術が伝承され、日本のものづくりの伝統が強化されました。 他にも税収以外で財政収支を改善する様々な方法をとることで、財政黒字を実現、毎年減税を推進し無税国家を目指す未来が見えるようになりました。 すると日本人に元気、活気がみなぎり、国に活力が戻ってきました。 国に活力が戻ると自分の将来に夢を持つ人たちが急増、結婚する人たちが増え、人口も増えてきました。いつしか、国民は弟国王を敬愛と親しみを込め「減税大神王」と呼びました。 悪徳行政官の推奨する増税をしないで、勇気をもって日本国証券の発行を推進して巨額の資金を生み出し、財政を黒字化した弟国王の手腕を高く評価しました。 以上の寓話は、日本の将来を占う上で重要な意味を含んでいます。 それは不景気な中、国は金持ちなのに増税すれば、財政収支が改善するどころか、中長期的には確実に赤字幅が広がり、経済が疲弊し衰退するということです。国は企業と異なります。政府は国民が困窮した時にはセーフティネットで救済する義務があります。国民生活が苦しい時に増税しセーフティネットも崩壊すれば、一時的に財政収入が増えても、それが増え続けることはありません。むしろ貧富の差が拡大し、ますます人心が荒廃し、市場は縮小します。 結局税収は大幅に減っていき、財政収支はさらに悪化します。

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