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経済混乱の原因と解決策

経済混乱の原因として、「富の集中」、「政策の融合」、「グローバリゼーション」の3つが上げられます。 「富の集中」により偏在した資金は、米国で言えば1%の富裕層が富の多数を占め、残り99%の国民が富の恩恵にあずかれないという不公平な富の配分から生み出されます。日本では、70%以上の金融資産が60歳以上の高齢者に偏在しています。その偏在した膨大な資金が銀行を通じて融資や投資などで事業へ還流されず、預貯金で滞留されると資金不足から経済が停滞します。

日本のデフレ不況はまさに国が過去一千兆円以上財政赤字を繰り返して資金を投入したのに国民の多くがそれをせっせと貯蓄してお金を使わず、溜まりに溜まった過剰な貯蓄の資金が銀行融資や投資で日本経済の裾野までうまく還流されなかったことが原因です。

次に「政策の融合」で重要な点は、金融政策と財政政策、経済政策を融合した総合的な政策を実行することが必要となっていますが、そのような理想論通りにいかず、互いにちぐはぐな政策が繰り返されることで、世界的な経済の混乱が深刻化しています。

例えば、欧州のギリシャ問題は、基軸通貨のユーロの信認を保つためにECB(欧州中央銀行)がギリシャ国債を買い支えるという「金融政策」と衰退してボロボロになったギリシャ経済を立て直すための「財政政策」が分離している悲劇から生じたものです。 結局、ギリシャ政府がユーロから課せられた厳しい緊縮的な「財政政策」を受け入れたことで収束しましたが、その財政政策は、経済活性化のために積極的な財政支出が必須という「経済政策」とも融合せず、むしろ経済の足を引っ張る「増税路線」をギリシャが推進しなければいけないという矛盾した財政再建の道を歩むことで、ギリシャどころか欧州全体が多大な経済停滞という不安要因をかかえることになっています。

日本でも、金融政策を遂行する日本銀行が、財政政策を担う政府、財務省から完全に分離独立して独自性を保ったことが日本経済の悲劇のはじまりと言われています。

さらに日本の財政政策は、経済政策とは全く無縁な世界であり、経済を理解できない政治家や官僚でも政策の立案、遂行が可能となっています。例えば、3月11日の震災復興のためには、間髪いれず日本銀行が復興国債を直接買い入れることで資金手当てができ、被災者も救済されたと思いますが、なんと経済政策からみれば非常識極まりない増税をしないと復興国債を発行できないという本末転倒な財務省主導の論理がまかり通り、今日の増税論議にまできています。

一番良い解決策は、財政法、日銀法を見直して日本銀行を国有化し、日銀総裁の政策遂行能力に疑問があるなら更迭できる人事権を政府が保有、国の資金調達手段を原則「NO」から原則「YES」にすることです。ところが、G20で国内議論なしに唐突に悪魔の税金である消費税10%にする公約をする首相が不退転の決意で増税を主張するようでは、日本経済の先行きは真っ暗です。

最後の「グローバリゼーション」は、金融の世界で最初に起こりました。すでに金融市場は24時間、世界中の市場で取引が続けられており、天文学的な数字の「投機資金」が世界の成長国へ自由に流れていくことでBRICSに代表される発展途上国が先進国の仲間入りを目指していくことができました。

ところが、2008年9月のリーマンショックのような金融恐慌が起こるとその莫大な金融市場の資金が連鎖的に信用不安で収縮するため、欧州や米国で極端な資金不足が発生、金融市場がうまく機能しない破滅的な問題が起こりました。結局、米国の中央銀行(FRB)が積極的に莫大なドル紙幣を発行し金融のひずみを修復することで事なきを得ましたが、その後遺症で欧州経済は不況に突入して、世界的な経済不安が続いています。

そして、もっとも重要な動きは、リベラルな民主党に経済復興を託した米国や日本で、その効果が無い稚拙な経済政策への疑問から、2010年以降において、先進諸国でナショナリズムの動きが顕著になっていることです。米国では「ティーパーティー」など保守的な政治活動が活発化しています。日本でも、「チャンネル桜」という保守系のネット番組が比較的高い視聴率を保持し、一定の影響力を強めており、その保守的な動きに賛同する人たちも増加しています。
今や米国でも日本でもリベラルなイメージの民主党に対して国民は冷めた目でしか政治を見なくなり、静かな保守、ナショナリズムの新たな潮流が起こっています。

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