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提言1=政策グランドデザインの構想

消費税が10%になって、5%から8%で3%増税、8%から10%で2%増税となり、そうした許容範囲を超える5%増税が、消費抑制、投資抑制につながり、勝ち組企業や富裕層に利益、資金が偏り、それが滞留して過剰貯蓄が起こり、逆に負け組企業や貧困層が増大して、過少消費や過少投資の問題を発生させてきました。
さらに急激な消費税増税が国内市場や産業全体が疲弊させ、所得税や法人税が減少し、財政赤字が幾何級数的に増大し続ける結果にもなります。こうした消費税増税による消費抑制を起因とするデフレ不況深刻化のメカニズムは、下記の図表1で示されるように一度マイナスに機能し始めるとどんどん不況が増殖する恐ろしさを内在しています。

図表1:消費税増税によるデフレ不況深刻化のメカニズム

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このメカニズムで、消費税8%でデフレ不況が深刻になれば、新自由主義経済でなく、消費や投資の有効需要を刺激するケインズ派経済の政策しか効果はありません。アベノミクスで主張されている第三の矢の成長戦略はうまく機能しないのです。
逆説的に考えると、不況が増殖しないケインズ派経済の政策を次々と講じれば、消費税8%大不況は阻止できるのです。
全ては消費税8%による消費需要の減退が原因であり、消費者が消費税8%になっても影響を受けず、力強く購買し続ける政策を推進できれば、消費税8%大不況は自然と回避され、経済が再び力強く再生、復活していきます。
消費需要の減退をまねく一番大きな理由が、政府の巨額の財政赤字であり、消費税の増税後もそれが増え続けている点です。赤字国債の資金の多くが勝ち組の企業や特定の個人に偏在し過剰な貯蓄となって、その資金が広く実体経済で循環せず、それが消費者の不安心理を駆り立て、貯蓄を増やしてさらに消費や投資を減退させているのです。
全ての問題の根っこにある巨額の財政赤字を増税に頼らない方法で解消できる有効な政策を推進すれば、社会の不安心理が解消され、それが貯蓄より消費や投資という流れをつくり、過剰貯蓄で溜まりに溜まった資金が実体経済へ還流し始めます。

図表2:消費税10%大不況を回避するための政策メカニズム

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その有効な政策の柱とは、図表2に示されるような財政健全化政策、国富強化政策、経済再生・消費促進策となります。 アベノミクスの3本の矢である「大胆な金融政策」、「機動的な財政政策」、「民間投資を喚起する成長戦略」と重なる部分があります。大きな違いは、国民の不安心理を解消する財政健全化のための『国家証券機構』」と民間の個人や企業へ融資や出資を促し、消費や投資の有効需要を刺激する『金融保証機構』、公共セクターの事業活動を活発にして公共の資本化を促す『社会資本市場』」の3つの公的な機関を新たに創設する点です。 この3つの新たな社会制度が、財政赤字を解消し、消費や投資を力強く促進するドライビング・フォース(起爆剤)になります。
そして一番大事なことは、この3つの国家繁栄の起爆剤になる機関を生み出すために新法を制定し、日銀法や財政法の改正をおこなうことです。法律が制定、改正され、この3機関が本格的に稼動し始めるとその後に国富省という国の社会資本力を増強させる推進機関が必要になります。
そもそも消費税をなぜ導入したかと言えば、将来の社会保障費の増大が危惧される中、所得税や法人税の税収を補填して国の財政赤字を少しでも減らすのが目的だったのです。
ところが1章や2章で詳しく説明したように1989年に消費税を導入した後、税収は減り続け、所得税や法人税が激減、逆に財政赤字が急増する歪な状態が続いています。
財政健全化を目指すのであれば、消費税の増税ではなく、逆に消費税を減額して、消費を刺激し、投資を促進して国内経済の拡大政策をとる必要があるのです。
ところが政治家がそうした国内の消費や投資を促進しようとすると有力政治家に付き添ってその動きをつねに監視している財務省の息のかかった官僚が、日本はすでに1000兆円を越える財政赤字、借金があり、何らかの方法で税収を増やさないと公共投資をおこなう余裕がないと耳元でささやいて消費税増税へ洗脳していきます。
それなら、消費税の増税以外で財政赤字1000兆円を解決する財政健全化の有力な方法を明確にすれば、国民の不安心理を取り除き、将来を展望でき、日本経済は悪魔の呪縛から解き放たれたように再び力強く拡大していきます。悪魔の呪縛とは、国、政府の公益セクターを企業経営と同じ発想でとらえ、財政赤字は良くない、財政黒字にしないと駄目、そのために政府は予算を削減して、小さな政府を志向すべきという新自由主義経済に基づく財政均衡論が正しいと信じることを意味します。
デフレ不況でも、国債を借金と間違って定義して、新規の国債発行を極力せず、税収の範囲内で財政を均衡に保つべきであるという考え方になります。国民生活より国の健全な財政を優先するという本末転倒の理屈で政治がおこなわれ、その結果、積極的に投資すべき社会資本にお金がまわらず、国内経済がどんどんやせ細って国力が弱くなっていきます。
例えば、欧州経済が深刻なのは、ユーロという通貨システムでなく、ユーロ各国の財政政策が悪魔の呪縛である新自由主義経済を信奉するドイツの財政均衡論の影響を受け、ケインズ派経済の消費や投資を促す公共投資が積極的に行われないことに起因しているのです。

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