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提言6=国富省(国富庁)の創設

国や自治体の財政の仕組みを資本財政へ転換すると調達された潤沢な資金を使って、国富である社会資本を充実させる様々な公共、公益事業を拡充する国富強化政策が必要になります。その国富強化政策の核になる省庁が、国富省、あるいは規模の小さいレベルでスタートするなら国富庁です。自治体では国富推進局、社会資本推進局といった部局であり、国と連携しながら、各地域の社会資本の整備を進め、社会インフラを拡充し、国力を高める活動を強化します。

消費税10%不況が深刻な場合、国レベルで大規模に公共、公益事業を推進、大掛かりな国家プロジェクトも開発する必要があり、既存の省庁を解体し、国富省として経済を活性化しないといけません。消費税導入を主導した財務省に不況の責任をとってもらい、財務省を解体し、理財局を中心とした国富省と国税庁を中心とした歳入省に分割、歳入省には社会保険庁も組み入れ、日本の財政収入を一手に管理してもらえば、効率的な行政運営ができるようになります。新しい国家目標として所得倍増計画ならぬ「国富倍増計画」を掲げ、日本の国力である社会資本を拡充する中核の省庁が国富省(国富庁)となります。

国富省ができれば、従来の省庁の組織の垣根を越え、横断的にとりまとめるさまざまなビッグな国家プロジェクトが次々と組成され、面白い仕事が次々と企画提案され、職員がワクワクするような仕事に従事できるようになります。

まず二千兆円以上の膨大な富裕層や高齢者に眠る国民資産を担保に国家証券機構で一千兆円規模の債務の証券化がおこなわれます。 つまり莫大な資金が国民の懐から国庫にシフトされ、国に巨額の予算資金が入ってきます。実質的に予算無制限に近い形で今まで予算制約で抑制されていた様々なプロジェクトが息を吹き返し、現場を知らない政治家のパフォーマンスショーにつき合わされ、国富向上のために必要な投資なのに理由もなく事業仕分けで仕事を取り上げられ、することがなく腐りきっていた職員にも元気がでてきます。

ただ、予算無制限なんて言い出すと無駄遣いをするのではないかと思われますが、国富プロジュクトの出口戦略は、社会資本市場であり、公益経営に対するガラス張りで厳しい出資者に監視される公的な株式市場での公開が最終の目標になるので無駄使いは許されません。

国家プロジェクトは、10年を超える超長期の技術開発を核として夢の装置、夢の乗り物、夢の医療、夢のシステムなどといった世の中に今まで存在しない血わき肉踊るようなわくわくするものが中心になります。例えば、火星探索プロジェクトでは、実際に火星まで人が行き戻ってくるような壮大なプロジェクトに予算がつきます。1つのプロジェクトが数兆円規模になっても、そのプロジェクトで日本の技術力が向上し、未来に大きな産業が創出され、日本の国力や日本人の富が倍増すると理解できれば「GO」がかかります。

今まで相手にされなかった空想科学小説のような技術開発プロジェクトにもフィージビリティ・スタディ(実現可能性調査)段階で予算がつきます。例えば、国防分野では夢の防衛技術である数万度で溶解する巨大レーザー兵器や一瞬にしてミサイルや潜水艦、戦闘機などの電子回路を破壊し無力化する高出力電磁パルス兵器、遠隔操作のロボット兵器などに巨額の予算がつきます。若い人が興奮するガンダムのような巨大な人型遠隔操作ロボットの開発も可能になります。

技術開発には、日本の大手企業の参画が欠かせないので、毎年数兆円規模の発注予算が用意され、大学の技術系の学生が大量に就職するので、再び大学の工学部や理学部に人気がでてきます。2020年は東京オリンピックが開催されますが、スポーツ分野では、なかなか予算が認可されなかったプロジェクトに予算がつき、急に活気が出てきます。 人間工学を駆使して、人類の記録の限界に挑むオリンピック金メダル記録開発プロジェクトなどアマチュアのプロ化を促す動きも顕著になります。

造船、港湾物流システムの分野では、次世代の電気推進船、スーパーエコシップや時速50キロ(約25ノット)以上の高速船、次世代コンテナ船と港湾システムなどの開発に国家予算がつきます。 時速50キロ以上の低燃費の大型高速船が開発されるとサンフランシスコと東京の太平洋航路が4~5日となり、ハワイ経由の豪華客船による割安な太平洋クルーズも商業ベースでペイラインに乗り、新しい観光産業が興ります。 自走式のロボット・コンテナが開発されると従来のような大掛かりな港湾施設は不要になるので、地方でも船舶貨物輸送が活発になり、物流コストが激減します。

農業分野では、年に一度の農作物の収穫、収入しか期待できない米だけの一毛作は影を潜め、品種改良や天然肥料での土壌開発が進み、二毛作、三毛作は当たり前、野菜工場のレタスのように10毛作から12毛作で毎月コンスタントに収穫、収入が得られる農業ビジネスが主流になってきます。農作物の遺伝子解析研究に国家予算がつくので、人工で遺伝子組み換えをせず、予算と時間のかかる自然の品種交配の中で新しい品種の農作物が開発され、多毛作での農業収入の向上を目指すことができるようになります。

自動耕作ロボットの開発に国家予算がつくので、朝早くから夜遅くまで働く農業のイメージは一新され、苗植えから収穫まで天候に左右されず、ロボットが働く先端産業になります。海洋資源開発分野では、人間の代わりに深海を潜って探索、試掘、掘削する潜水ロボットの技術開発が国家予算で進められ、メタンハイドレートの採掘も積極的に推進されます。

国民が夢を見て明るくなれる国家プロジェクトを推進する理由は、単純に国富倍増という目標の達成になります。 国富を云々する最大のメリットは、従来のフロー発想からストック発想で長期にわたって国に価値ある資産として残るプロジェクトが中心となり、様々な事業が収益還元を前提に企画されることです。結果として、共同開発で受託を受ける民間企業も莫大な予算を背景に長期にわたって多くの人と金を投入する必要がでてくるので、新卒採用の活発化など急に雇用環境が改善されるようになります。

防災、減災の公共工事は、既に国土強靭化の予算がついて、積極的に社会資本への投資が行われる計画になっていますが、従来のような国土交通省だけの発想で公共投資を推進するのではなく、国富省が各省庁を横断的に取りまとめ、有機的なネットワークを構築しながら複合的に地域の防災、減災プロジェクトを推進する必要がでてきます。

例えば、東日本大震災で東北の漁業を中心として復興する町では、港に近い職住接近を街づくりの基本コンセプトに選択するところがでてきます。再び大津波が襲ってくるのは怖いが、その時に遠方の高台に逃げず、生活している場所そのものを頑丈な高層の建物の上階に住む方式にして、そこで大津波をかわす高層天空生活での街づくりが進められます。その場合、単なる箱作り発想の公共事業から医療や教育、介護、警察、消防までも含む総合的な人工都市開発が必要となります。各分野の許認可権をもつ省庁をまたぐプロジェクトを推進するために、国富省のようなコーディネーターが必要になります。

国富省は世の中を信用創造の世界へ変えるための中核の省庁となり、様々な組織横断的な国家プロジェクトを推進することで周囲から感謝される存在になります。各省庁から選抜された職員が、国富省の中で一緒に様々な新しい仕事への挑戦を始めます。 それがよい意味で各省庁の刺激となって、世のため人のために何か新しい公益サービスを考え出して頑張ろうと言う雰囲気をつくります。この空気を醸成することがもっとも重要です。

こうした空気が広がると株式市場も自然と活気づきます。法人企業の株式価値や不動産価値を高めるためにどうすれば良いかという前向きな議論が国富省内で取り交わされるようになり、上場企業の株式価値や土地価格の理論価値を算出するための計算式が開発され、その値段になるまで国富省内の国富ファンドが資金を投入するようになります。

すると民間企業にとっては、その理論値は神様の数式であり、それ以上値下がらないことを意味するので、その数式で記載されている評価項目を一所懸命に良くしようと頑張ります。それが選定外になったその他の株式や不動産を安心して買おうと言う雰囲気になり、結果的にじわりじわりと株式や不動産の値段が上昇を始めます。

この動きは中央官庁の動きだけでは終わりません。 地方自治体も全く同じように国富推進局を創設して、様々な地域の社会資産の価値向上を目指すようになります。資金調達手段も国富省と同じで、各自治体が出資証券を発行し、返済原資が要らないので予算に余裕がでてきます。 各自治体の予算に余裕ができると国富倍増となる地域のシンボル的な立派な庁舎や美術館、博物館などの文化施設の建設ラッシュが起こり、地域の文化財や新たな名物施設が地域観光を誘発します。陳列物は、地域にちなんだものが必要になるので、従来、主に民間の寺や神社で所有、保管されてきた日本の重要文化財にも国家予算や自治体予算がついて、長期貸与や高額購入で新しく出来た美術館や博物館で常時陳列できるようになります。

地域の小中学校の生徒や老人会などに定期的に見学させるコースをつくり、説明員が懇切丁寧に郷土の特色や面白い体験コースなどを創出すれば、年間の来場者を採算ラインに乗せることは可能であり、日本人の文化力を高め、心豊かな国民を育成して、人材面での国富力を高めることにつながります。

国富を高めるためには、日本そのものをより安全で安心できる国にしないといけません。自衛隊の防衛機能を高めることは国富の強化になりますが、さらに国民レベルでも広く防衛を意識した活動が必要になります。外国人の凶悪犯罪が目立ってきていますが、近隣諸国との外交的な摩擦が深刻化すると日本の治安そのものを脅かすテロ活動も危惧されます。

そこで一昔前に活躍した官主導の隣保組織である隣組のような治安目的の隣近所が数十軒単位で自治組織を組成する運動を広げる必要があります。昔は官主導でしたが、民主国家の今の日本で隣組的な自治組織を強制することはできません。そこで市町村レベルで運動を推進して、強制でなく、隣近所自らの発意で緊密な人的交流や情報連携を促して、テロのような凶悪犯罪を未然に防ぎ、日本全体の防衛力を高める防犯、安全強化を兼ねた防衛ネットワーク組織を都市部にも構築する必要があります。国富省が全国の自治体、公安、警察、自衛隊などと連携をとって、こうした隣近所の世話役的な人たちの隣組活動に市町村を通して一定の予算をつけることで、近所の自治活動が活発になり、それが人と人との交流や絆(きずな)を深めることにもつながります。

日本の一部の地方では、昔の隣組のような自治組織が今でも残っており、冠婚葬祭や適齢期の若者のお見合い紹介など隣近所の人的な交流が緊密に行われています。 国富省が中核になって、日本で自発的な隣組的な自治防衛のネットワークが確立すると日本の安全性がさらに高まり、国力を高めることができるようになります。

以上の国富強化政策の推進による経済拡大と国力増強の推進事例を図表で整理しました。国富強化政策こそ日本の経済再生を促す重要な成長戦略になります。 〔図表〕国富省(国富庁)を核とする国富強化政策の推進事例  17   

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